神様自学

天ノ谷 霙

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1月19日 感傷的な罪悪感

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3年生の教室に、人っ子1人いなくなった頃。来年は私達の番だと、残り少なくなった高校生活に思いを馳せる。夕焼けに照らされた廊下で、部活に勤しむ生徒達を眺める。頼りにしていた先輩達がいなくなって、先輩として自覚を持ってもう何ヶ月も過ぎた。それでも校舎内には、自分達を迎えてくれる3年生がいて、だからこそ安心して各部活でのトラブルにも立ち向かえていた。そんな彼らが眩しくて、羨ましかった。
人気が少ないせいだろうか、1人で歩いているせいだろうか、何だか感傷的な気分になる。私ははぁっとため息を吐いて、教室へ入ろうとした時だった。
恐らく私に影響を及ぼしていた心の声が、響き渡るように聞こえてきた。

ごめん。自分勝手で、身勝手で。好きな人の1番辛い時から目を逸らした最低な奴で。過去に戻れるならやり直したい。自分から離れたくせに自然消滅だって言い聞かせて、好きな人を思いやることすら出来なかった自分を殴りたい。好きな人に寄り添おうとして、それを拒絶させるのが怖いと怯えていた、臆病で馬鹿な自分を引っ叩きに行きたい。そのせいで失ったのは大事な人との繋がりなんだ、と泣き叫びたい。許してなんて言える立場じゃないのは分かってる。それでも、想うことを消せなかった自分を、否定することは出来ない。好きという気持ちを止められなくて、本当にごめん。

冷たい、暗い雨。自分に自分で言い訳するような悲しい雨。声の主は藤上くんだった。心の中で呟かれた好きな人とは、十中八九千夏のことだろう。藤上くんは千夏と別れてから、別の女の子に告白したという噂を何度か聞いたことがある。ただその態度に真剣さが見て取れなかったと、相手の選び方も手伝って批判を浴びていた。彼氏持ちの霙や、仕事一筋の花火などに告白したというのだから当然だろう。しかもその態度も軽く、まともに相手されなかったという。その理由は恐らく、今心の中で素直に呟いていることだろう。本当に好きな人はずっと変わらない。けれど想うことが罪のように感じて、動けなくなっている。おちゃらけて自分の恋心を弄んで、無意識に傷付くことでしか罪の清算が出来ないと思い込んでいる。
それは、違う。
そんな後ろ向きなことばかりが恋ではない。恋の楽しさも、素敵なところも、全部全部伝えるのが恋使わたしの役目だ。
私の力に反応したのか、ふわりと花が舞う。白く小さな花が、甘く爽やかな香りを纏って風と踊る。
「ジャスミン、か」
私はガラッと扉を開ける。藤上くんは窓際の席で目を閉じて座っていた。
「ねぇ、それって本当に心から思ってるの?」
自然に出て来た言葉に従うように、まっすぐと藤上くんを見つめた。
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