神様自学

天ノ谷 霙

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2月1日 保護対象

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「…で、それからどうやって帰ったかよく覚えていない、と」
目の前の席に座った由芽が、呆れ半分のため息混じりで私の言葉を繰り返す。情報収集ついでに相談相手になってくれるのはありがたいが、隠したいことを誘導尋問で引き出してしまうのは卑怯だと思う。変な男達の話や羅樹の爆弾発言などは避けて話そうと思ったのに、気付いたら情報をすっぱ抜かれていた。由芽は相変わらず恐ろしい。引っ掛かる私も私なのだろうけど、由芽の場合は引っ掛からない人の方が珍しいので責任を転嫁しておく。
「ほとんどまっすぐ帰ったのはわかってるんだよ?ただどんな会話をしたか覚えてないだけで」
「そんなに後を引くもの?いや、夕音のとこは特殊なんだった」
「特殊って」
「十数年片思い拗らせてた相手に告白したら告白だと思われず、説明したところ利害の一致で付き合うことになった過程を、特殊と言わずして何と言うのよ」
返す言葉もないが、認めるのも癪で黙り込む。それを肯定と捉えたらしい由芽は苦笑いした後で、ポツリと呟いた。
「でも、意外。榊原ってもっと恋愛事に鈍いと思ってた」
由芽の言葉の意味がわからず、問い返す。由芽はあっけらかんと言った。
「だってちゃんと恋人らしいことしてるじゃない」
「こいっ…」
思わずつっかえてしまうが、由芽は構うことなく続けた。
「だってそうでしょ?手を繋いだり、褒めたり、魚に見惚れてる夕音を呼んでイルカショーまで連れて行ってくれたり」
言われてみれば確かにそう思う。私自身も恋人っぽいと思った行動がいくつかあるし、客観的に振り返ってみれば彼氏彼女でしかなかった。急に自覚したことで頬が熱を帯びる。
「何となく思ったことだけど、榊原って夕音をよく見ているというか何というか、"わかってる"よね」
「"わかってる"?」
「そう。えぇと、夕音のことを見守ってる感じがするというか何というか。変な言い方すると保護者みたいよね」
「保護者…」
「でも完全に保護対象として見てるわけでもなさそうなのよね。何て言えば良いのかな」
由芽はそう言って頭を抱えていたが、良い答えは思い浮かばなかったらしく急にスパッと話を変えた。
「そういえばバレンタインが近いけど、どうするの?」
「…あっ」
日付を見ると、もう2月と表示されている。材料や作るものを考えなければ間に合わないかもしれない。
「今年は幼馴染じゃなくて恋人に渡すんだから、ちゃんと素直になりなさいよ」
「…わかってるよ」
由芽の激励にぶっきらぼうに返す。チャイムが鳴ったので、由芽はひらひらと手を振って自分の席に戻った。
…バレンタイン、か。
少し気合を入れてみても良いかな、なんて思った。
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