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2月2日 噂
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翌朝から、1つの噂で持ちきりだった。内容は明がとある男子と付き合い始めたというもの。朝登校して驚いた。明がクラスの女子に囲まれており、彼女達の顔は好奇心に火照っている。次々と紡がれる恋話に、明は戸惑った様子だった。その様子はクラス中から注目を集め、学年中に広がっている。明が恥ずかしがって話してくれないとの脚色を添えて。
「…どういうこと?」
「昨日、あかりんが告白されたの」
「わっ、深沙ちゃん」
いつの間にか隣にいた深沙ちゃんの話によると、昨日の放課後呼び出された明が告白されたらしい。そのくらい日常茶飯事だが、問題はその後だ。明の様子から察するに断った筈なのだが、告白した男子は諦め切れずに「了承された」と嘘を吹聴したらしい。外堀から埋めるつもりだったのか、ツッコミ待ちだったのかは分からないが、そのデマは瞬く間に拡散され学年中の噂となってしまった。その噂を信じた女の子達に朝から囲まれ、ずっと質問攻めにあっているらしい。
明は誰からの告白も受けなかった。あまり表情が変わらないせいかクールに見えるため、断り方もバッサリと切り捨てるようだと噂されていた。根は優しい子であるし、中学時代に告白を断り暴力を受けた過去を持つためそんな酷い断り方をしている筈ないのだが。噂というのは勝手である。
そんな彼女が、名も知らぬ関わりの浅い筈の男の子から告白を受け、そして了承した。
この話は、何も知らない部外者から見たらどのように映るだろうか。恋話に目の色を変える思春期の乙女達は、きっと面白おかしく脚色する。明はずっとその人を想っていて告白されるのを待っていたのだとか、実は告白したのは男子ではなく明の方だとか、さまざまな妄想が憶測として飛び交う。そしてその妄想を噂として受け取ってしまう他の学生達は、噂を疑うことなく色眼鏡で明を見てしまう。戸惑う姿も照れ隠しに見えることだろう。実はそんなことは全くなくただただ困惑しているだけだとしても、気付くことはない。
明は元々話すのが苦手なため、言葉を紡ぐのが遅い。その弱点も相まって、早口で捲し立てる乙女達に口を挟むことも出来ず困っているのだろう。朝から何度も口を開いては視線を彷徨わせている。助けに行きたいが割って入れる雰囲気ではない。深沙ちゃんも助けたいようだが、先頭切って明を質問攻めにしているのは学年でも有名な恋話好きである。彼女に話しかけたが最後、厄介なことになるのは間違いない。かく言う私も羅樹と帰るようになってから質問攻めを受けた。最初だけかと思えばその後も話す度に進展を聞いてくる。正直とても面倒な女の子である。深沙ちゃんは特定の誰かと噂になっている気配もないが、あの話し方や勢いが苦手なようで二の足を踏んでいる。
結局朝から休み時間の度に繰り返されるそれに、私を始めほとんどの人が対抗出来ず、その日は放課後を迎えることになった。
「…どういうこと?」
「昨日、あかりんが告白されたの」
「わっ、深沙ちゃん」
いつの間にか隣にいた深沙ちゃんの話によると、昨日の放課後呼び出された明が告白されたらしい。そのくらい日常茶飯事だが、問題はその後だ。明の様子から察するに断った筈なのだが、告白した男子は諦め切れずに「了承された」と嘘を吹聴したらしい。外堀から埋めるつもりだったのか、ツッコミ待ちだったのかは分からないが、そのデマは瞬く間に拡散され学年中の噂となってしまった。その噂を信じた女の子達に朝から囲まれ、ずっと質問攻めにあっているらしい。
明は誰からの告白も受けなかった。あまり表情が変わらないせいかクールに見えるため、断り方もバッサリと切り捨てるようだと噂されていた。根は優しい子であるし、中学時代に告白を断り暴力を受けた過去を持つためそんな酷い断り方をしている筈ないのだが。噂というのは勝手である。
そんな彼女が、名も知らぬ関わりの浅い筈の男の子から告白を受け、そして了承した。
この話は、何も知らない部外者から見たらどのように映るだろうか。恋話に目の色を変える思春期の乙女達は、きっと面白おかしく脚色する。明はずっとその人を想っていて告白されるのを待っていたのだとか、実は告白したのは男子ではなく明の方だとか、さまざまな妄想が憶測として飛び交う。そしてその妄想を噂として受け取ってしまう他の学生達は、噂を疑うことなく色眼鏡で明を見てしまう。戸惑う姿も照れ隠しに見えることだろう。実はそんなことは全くなくただただ困惑しているだけだとしても、気付くことはない。
明は元々話すのが苦手なため、言葉を紡ぐのが遅い。その弱点も相まって、早口で捲し立てる乙女達に口を挟むことも出来ず困っているのだろう。朝から何度も口を開いては視線を彷徨わせている。助けに行きたいが割って入れる雰囲気ではない。深沙ちゃんも助けたいようだが、先頭切って明を質問攻めにしているのは学年でも有名な恋話好きである。彼女に話しかけたが最後、厄介なことになるのは間違いない。かく言う私も羅樹と帰るようになってから質問攻めを受けた。最初だけかと思えばその後も話す度に進展を聞いてくる。正直とても面倒な女の子である。深沙ちゃんは特定の誰かと噂になっている気配もないが、あの話し方や勢いが苦手なようで二の足を踏んでいる。
結局朝から休み時間の度に繰り返されるそれに、私を始めほとんどの人が対抗出来ず、その日は放課後を迎えることになった。
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