528 / 812
2月2日 噂
しおりを挟む
翌朝から、1つの噂で持ちきりだった。内容は明がとある男子と付き合い始めたというもの。朝登校して驚いた。明がクラスの女子に囲まれており、彼女達の顔は好奇心に火照っている。次々と紡がれる恋話に、明は戸惑った様子だった。その様子はクラス中から注目を集め、学年中に広がっている。明が恥ずかしがって話してくれないとの脚色を添えて。
「…どういうこと?」
「昨日、あかりんが告白されたの」
「わっ、深沙ちゃん」
いつの間にか隣にいた深沙ちゃんの話によると、昨日の放課後呼び出された明が告白されたらしい。そのくらい日常茶飯事だが、問題はその後だ。明の様子から察するに断った筈なのだが、告白した男子は諦め切れずに「了承された」と嘘を吹聴したらしい。外堀から埋めるつもりだったのか、ツッコミ待ちだったのかは分からないが、そのデマは瞬く間に拡散され学年中の噂となってしまった。その噂を信じた女の子達に朝から囲まれ、ずっと質問攻めにあっているらしい。
明は誰からの告白も受けなかった。あまり表情が変わらないせいかクールに見えるため、断り方もバッサリと切り捨てるようだと噂されていた。根は優しい子であるし、中学時代に告白を断り暴力を受けた過去を持つためそんな酷い断り方をしている筈ないのだが。噂というのは勝手である。
そんな彼女が、名も知らぬ関わりの浅い筈の男の子から告白を受け、そして了承した。
この話は、何も知らない部外者から見たらどのように映るだろうか。恋話に目の色を変える思春期の乙女達は、きっと面白おかしく脚色する。明はずっとその人を想っていて告白されるのを待っていたのだとか、実は告白したのは男子ではなく明の方だとか、さまざまな妄想が憶測として飛び交う。そしてその妄想を噂として受け取ってしまう他の学生達は、噂を疑うことなく色眼鏡で明を見てしまう。戸惑う姿も照れ隠しに見えることだろう。実はそんなことは全くなくただただ困惑しているだけだとしても、気付くことはない。
明は元々話すのが苦手なため、言葉を紡ぐのが遅い。その弱点も相まって、早口で捲し立てる乙女達に口を挟むことも出来ず困っているのだろう。朝から何度も口を開いては視線を彷徨わせている。助けに行きたいが割って入れる雰囲気ではない。深沙ちゃんも助けたいようだが、先頭切って明を質問攻めにしているのは学年でも有名な恋話好きである。彼女に話しかけたが最後、厄介なことになるのは間違いない。かく言う私も羅樹と帰るようになってから質問攻めを受けた。最初だけかと思えばその後も話す度に進展を聞いてくる。正直とても面倒な女の子である。深沙ちゃんは特定の誰かと噂になっている気配もないが、あの話し方や勢いが苦手なようで二の足を踏んでいる。
結局朝から休み時間の度に繰り返されるそれに、私を始めほとんどの人が対抗出来ず、その日は放課後を迎えることになった。
「…どういうこと?」
「昨日、あかりんが告白されたの」
「わっ、深沙ちゃん」
いつの間にか隣にいた深沙ちゃんの話によると、昨日の放課後呼び出された明が告白されたらしい。そのくらい日常茶飯事だが、問題はその後だ。明の様子から察するに断った筈なのだが、告白した男子は諦め切れずに「了承された」と嘘を吹聴したらしい。外堀から埋めるつもりだったのか、ツッコミ待ちだったのかは分からないが、そのデマは瞬く間に拡散され学年中の噂となってしまった。その噂を信じた女の子達に朝から囲まれ、ずっと質問攻めにあっているらしい。
明は誰からの告白も受けなかった。あまり表情が変わらないせいかクールに見えるため、断り方もバッサリと切り捨てるようだと噂されていた。根は優しい子であるし、中学時代に告白を断り暴力を受けた過去を持つためそんな酷い断り方をしている筈ないのだが。噂というのは勝手である。
そんな彼女が、名も知らぬ関わりの浅い筈の男の子から告白を受け、そして了承した。
この話は、何も知らない部外者から見たらどのように映るだろうか。恋話に目の色を変える思春期の乙女達は、きっと面白おかしく脚色する。明はずっとその人を想っていて告白されるのを待っていたのだとか、実は告白したのは男子ではなく明の方だとか、さまざまな妄想が憶測として飛び交う。そしてその妄想を噂として受け取ってしまう他の学生達は、噂を疑うことなく色眼鏡で明を見てしまう。戸惑う姿も照れ隠しに見えることだろう。実はそんなことは全くなくただただ困惑しているだけだとしても、気付くことはない。
明は元々話すのが苦手なため、言葉を紡ぐのが遅い。その弱点も相まって、早口で捲し立てる乙女達に口を挟むことも出来ず困っているのだろう。朝から何度も口を開いては視線を彷徨わせている。助けに行きたいが割って入れる雰囲気ではない。深沙ちゃんも助けたいようだが、先頭切って明を質問攻めにしているのは学年でも有名な恋話好きである。彼女に話しかけたが最後、厄介なことになるのは間違いない。かく言う私も羅樹と帰るようになってから質問攻めを受けた。最初だけかと思えばその後も話す度に進展を聞いてくる。正直とても面倒な女の子である。深沙ちゃんは特定の誰かと噂になっている気配もないが、あの話し方や勢いが苦手なようで二の足を踏んでいる。
結局朝から休み時間の度に繰り返されるそれに、私を始めほとんどの人が対抗出来ず、その日は放課後を迎えることになった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる