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思い出話 利羽
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入学式の日だった。珍しく桜が咲いている入学式。その日、私は高校生となる。
私は、体育館前に並べられたクラス表を見て、自分のクラスを確認した。受験番号で出ると聞いていたが、名前も掲示されていた。体育館に入って、席に着く。私の名字は「蝶野」なので、真ん中寄りの出席番号だった。
校長先生の長い話や、紹介等が終わり、教室に案内される。
私は、その時初めてクラスメイトを見渡した。そして、その中に見覚えのある顔があった。同じ中学の人では無い。それは、病弱だった私が入院していた時、仲良くなった男の子。
確か、あおくん。
急いで名前を確認した。そこには私の考えていた名前と同じ読みをする漢字が綴られていた。
林 蒼
私はこんな奇跡があるものなのか、と驚いた。そして同時に、蒼くんは私を覚えているだろうか、と考えた。私は鮮明に覚えている。なにせ、二週間ぶりに出た外で会った男の子だ。忘れるはずがない。
私と、普通に話してくれた初めての人だったから。
クラスでの話も終わり、何人かの女子と話す。初日に男子と話すと、嫉妬する女子も出てくるかもしれない、と思いその日は話さずに帰った。
数日後、クラスメイトのことを理解し、馴染み始めた頃に思い切って話しかけてみた。
「あ、あの…あぉ…林くん」
「はい、林です」
いきなり話しかけたから驚いたのだろう。少し瞬きをして返してくれた。私はそれすらも嬉しくて、思わず微笑む。そして、ゆっくりと本題を切り出した。
「私のこと、覚えていますか?」
「え」
戸惑い、考え込む蒼くん。覚えて、いないらしい。
「昔、病院で活発な女の子に会いませんでしたか?」
少し残念な気持ちを隠して、微笑みながらヒントを出す。蒼くんは「あっ」と声を出した。
「思い、出しました?」
「うん、病院服を着た女の子を。母に抱きしめられて、泣いていたのを覚えています」
「それが、私です。…蒼くん」
名前を呼んで、あの日に戻ったかのような感覚がした。私はそれがまた嬉しくて、にこにこと笑う。蒼くんはいきなりの名前呼びに驚いていたけれど、昔も呼ばれていたことを思い出したのか笑った。
「よく覚えていましたね」
「当たり前です。私を病人扱いしないで話してくれたのは、蒼くんが初めてでしたから」
私は、つい言ってしまう。なるべく病気のことは言わないでおこうと思ったのに。気を許してしまった。
それでも蒼くんは、深く追求しなかった。
「そうですか。それは光栄です」
その笑顔が、あの日の記憶と重なった。
私は、体育館前に並べられたクラス表を見て、自分のクラスを確認した。受験番号で出ると聞いていたが、名前も掲示されていた。体育館に入って、席に着く。私の名字は「蝶野」なので、真ん中寄りの出席番号だった。
校長先生の長い話や、紹介等が終わり、教室に案内される。
私は、その時初めてクラスメイトを見渡した。そして、その中に見覚えのある顔があった。同じ中学の人では無い。それは、病弱だった私が入院していた時、仲良くなった男の子。
確か、あおくん。
急いで名前を確認した。そこには私の考えていた名前と同じ読みをする漢字が綴られていた。
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私はこんな奇跡があるものなのか、と驚いた。そして同時に、蒼くんは私を覚えているだろうか、と考えた。私は鮮明に覚えている。なにせ、二週間ぶりに出た外で会った男の子だ。忘れるはずがない。
私と、普通に話してくれた初めての人だったから。
クラスでの話も終わり、何人かの女子と話す。初日に男子と話すと、嫉妬する女子も出てくるかもしれない、と思いその日は話さずに帰った。
数日後、クラスメイトのことを理解し、馴染み始めた頃に思い切って話しかけてみた。
「あ、あの…あぉ…林くん」
「はい、林です」
いきなり話しかけたから驚いたのだろう。少し瞬きをして返してくれた。私はそれすらも嬉しくて、思わず微笑む。そして、ゆっくりと本題を切り出した。
「私のこと、覚えていますか?」
「え」
戸惑い、考え込む蒼くん。覚えて、いないらしい。
「昔、病院で活発な女の子に会いませんでしたか?」
少し残念な気持ちを隠して、微笑みながらヒントを出す。蒼くんは「あっ」と声を出した。
「思い、出しました?」
「うん、病院服を着た女の子を。母に抱きしめられて、泣いていたのを覚えています」
「それが、私です。…蒼くん」
名前を呼んで、あの日に戻ったかのような感覚がした。私はそれがまた嬉しくて、にこにこと笑う。蒼くんはいきなりの名前呼びに驚いていたけれど、昔も呼ばれていたことを思い出したのか笑った。
「よく覚えていましたね」
「当たり前です。私を病人扱いしないで話してくれたのは、蒼くんが初めてでしたから」
私は、つい言ってしまう。なるべく病気のことは言わないでおこうと思ったのに。気を許してしまった。
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「そうですか。それは光栄です」
その笑顔が、あの日の記憶と重なった。
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