神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
127 / 812

5月20日 種目決め

しおりを挟む
ガラッと、先生がドアを開ける音がした。制服の中に一人紛れる体育着。先生は怪訝そうな顔をして、三原さんに話しかけた。
「三原さん、制服は?」
しばらくの沈黙。三原さんはもう何も感じないかのように、あらかじめ考えていたのであろう言葉を吐いた。
「………忘れました」
「…またですか?何度目ですか?全くいつになったら直すのか…」
ため息をつく先生に、私は昨日の写真を思い出す。
なんで。どうして気付かないの、先生。忘れたんじゃない、破られたというのに。
さりげなく由芽を見ると、由芽はいけ、という合図を私に出した。心臓が、ドクンっとはねた。そして手と同時に反撃の狼煙を上げる。
「先生、それは違うんじゃないですか?」
静まり返る教室内。私はポケットに隠したボイスレコーダーをぎゅっと握った。表面上だけでも、叩き潰すようにいかなくては。
先生は困惑しながら、やはり怪訝そうな顔で私を見た。
「何です?稲森さん。忘れが多いから言ってるので……」
「三原さんは1度も忘れていませんよ」
遮るように言う。三原さんが怯えた目で私を見た。さっきまでの慣れたような言い訳を言っていた時とは違う。震えていた。
そりゃそうよ。あんなことに、慣れちゃいけない。
私は、本気で叩き潰しにいく。覚悟は出来ている。独りになんてならない。私には、由芽がいる。そして、羅樹もいるから。
「毎回毎回、制服切り裂いて嬉しそうに笑う。そんな事が平然と学校で起こっているのに先生は気付かない。」
「ちょっと何の話!?三原が忘れただけじゃない!授業進めなさいよ」
ガタン、と椅子を後ろに倒す音が聞こえた。それに混じる、優等生と言われ続ける彼女のヒステリックな声。私は不思議そうに首をかしげた。由芽が私の視界の端でにやりと笑った。
「え?どうしたの…さん、そんな焦って私の会話に入るって。ねぇ?」
彼女の息を飲む音。このクラス中が私と彼女のこの後の展開を待っている。私は一呼吸置いて、続ける。
「何で入って来たの?教えてよ、ねぇ?」
「え?どういう事?」
私と彼女の会話について行けない、何もわからない、気付かない先生の声。私は、由芽に言われた通りに、先生すらも罵倒した。
「そんな事にも気が付かないのですか?よく担任で恥ずかしくないですね」
先生の顔がかぁっと赤くなる。成績が下がるかも、と変に冷静な自分がいた。私は先生にも分かるように、はっきりと言った。
「要するに、貴方がいじめのリーダーよね?そんなに三原さんが運動得意なの嫌?他に自分に才能が無いから?」
図星だから、動揺する彼女。叫ぶように言った。
「しょ、証拠は何処にあるの?」
「…そうよ!…さんがやる筈無いわ!」
「…ふぅん、宗教みたいで怖いわね。でもさ、証拠出す前に自白した方が良いと思うよ?」
証拠の持ち主は容赦ないから、という言葉は飲み込んで、彼女をじっと見る。彼女は証拠なんてあるはずがない、とたかくくっているのだろうか。舐めないでもらいたい。入学して一週間で学校全員の名前を覚えた学校一の情報屋を。
私は、そっとボイスレコーダーを再生した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

讃美歌 ② 葛藤の章               「崩れゆく楼閣」~「膨れ上がる恐怖」

エフ=宝泉薫
青春
少女と少女、心と体、美と病。 通い合う想いと届かない祈りが織りなす終わりの見えない物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...