神様自学

天ノ谷 霙

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3月2日 口論再び

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お菓子戦争で大いに盛り上がった後、テスト返却もそこそこにすぐに放課後になった。羅樹は今日用事があるとのことで、凄く渋られたが先に帰らせることにした。私のクラスではお菓子パーティの続きが多少行われていたため、それに参加したいと譲らなかったせいである。朝、少しだけしんみりした気分で登校して来たこともあり、卒業までの日数を数えて感傷的になってしまったのだ。残り1年となった高校生活を、少しでも楽しみたい。思い出を作りたい。そんな気分だった。
そうして残っていたところ、テスト採点や受験の準備で忙しいから早く帰れ、と青海川先生に注意されてしまった。まだ決着は付いてないと騒ぎ始めた紗奈と竜夜くんは、先生の命をうけた小野くんに喧嘩両成敗されていた。こういう時によく先生に使われる霙や、小野くんと同じく学級委員の由芽は演劇部の講演が近いこともあり、例外的に体育館で部活をしている。
私は霙の忘れ物を届けに行っていた関係上、その解散シーンはほとんど見ることなく終わってしまった。眞里阿から連絡を受けて、お菓子戦争もといお菓子パーティの閉幕を知ったのだ。慌てて教室に戻ろうとドアに手を掛けたところで、中から口論のような声が聞こえて来ることに気付いた。今日はよく言い争いしている場面に出会すなぁ、と思いながら伺っていると、それはお菓子戦争とは全く別の、むしろ口論とも呼べない一方的な怒声であることに気付いた。いけないとは思いつつもガラスから中を覗くと、見えたのは赤紫色の髪を毛先で縛った小柄な女の子だ。顔は見えないが、恐らく爽だろう。怒り声もよく聞くと彼女のものだとわかる。その怒号を一身に引き受けているのは、北原くん。眼鏡の反射で表情は読み取れないが、言われるがままになっている。反論しているのかは、ドア越しじゃ読み取れない。
どうすべきか、とりあえずほとぼりが冷めるまで何処か散歩でもしていようかとドアから体を離した瞬間、爽が北原くんに掴みかかった。襟に手を伸ばし、瞬間的に勢いよく引き寄せる。そこそこ背の高い北原くんは、小柄な爽にとってはかなりの身長差。その身長差を埋めるように引かれたことで北原くんのバランスが崩れる。そしてそのまま、掴みかかったままで、2人の顔が重なった。
私の位置からでは、決定的瞬間は見えなかった。けれど、恐らく。何故そうなったのかはわからないけれど、どうしてもそうにしか見えなかった。

キス、した───?

引き寄せた分だけ突き飛ばして、爽は机の上に置いていたバッグをひったくるように掴むと、ドアを勢いよく開けて走り去っていった。
一瞬見えた横顔には、涙が浮かんでいた。
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