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あきらめのいろ
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少女の魂は無事、新たな運命の元へと転生することになった。しかし生まれ持った魂の系譜というものは変えられるものではなく、彼女はまた金色の髪に朱色混じりの赤い瞳という、また他者と異なる姿で生まれ落ちた。前回の生と異なり、今回は周囲の人間が憐れみ大切に育ててくれたようだが、今度は事故死という結末を迎えた。ヒトの一生は短いと理解している稲荷様でも、前回の生よりも、魂を探し続けた年月よりも遥かに短い今回の生に言葉が出ないようであった。
「もう!?」
「…あぁ」
稲荷様は読様の元へ訪れ、ことの顛末を報告する。1人に肩入れするのは良くないと予め警告されていたが、忘れるにはあまりにも短かった。読様は頭を抱え、意気消沈している稲荷様に悩む。
「…あのね、前回のはかなり温情を掛けた特別処置だったのよ…?」
「分かっている。が、この、何か喉の奥に引っ掛かっているかのような感覚が気持ち悪くて、誰かに言いたかったんだ」
昏い瞳を無表情に固めながら、稲荷様は呟く。それがヒトだったらきっと「苦しい」とか「辛い」とかに言語化することが出来たのかもしれないが、ここはヒトの世ではない。もっと深い痛みなのかもしれないし、明日には忘れているような浅い感情なのかもしれない。わからないけれど、稲荷様が今、少女を想っていることだけは理解出来た。
「…何もなく転生させることは出来ないわ。審判の判断基準は私達には見られないものだから、前世より前の行いが反映されているのかもしれないもの。私が介入出来るのは、魂の管理と審判と転生の手続きの間にあるシステムの、隙間だけ。前回は上手くいったけど今回も行えるとは限らない。審判は厳格な奴だからね」
「あぁ。知ってる。だから、話だけしに来たんだ」
「~ッ!」
諦めの色を浮かべ、稲荷様は力無く笑う。瞬きよりも早く過ぎ去り終わってしまった人生に、嘆くことすら難しい。約50年、仕事の合間に魂を探しに来ていたと言うのがイレギュラーだったのだ。ずっと1つのことだけを考え続けることなんて出来ない。そして少し他のことに集中していたら、あっという間にヒトの人生なんてものは終わる。今回は10年程で思い出したのだから、きっと早い方だ。それでももう、少女はヒトの世にいない。
「…もう1度だけ、チャンスをあげるわ。探しなさい、稲荷。あの子を探し出して、もう1度私に交渉してみなさい」
読様は仁王立ちで稲荷様を指差し、はっきりと告げた。
「もう!?」
「…あぁ」
稲荷様は読様の元へ訪れ、ことの顛末を報告する。1人に肩入れするのは良くないと予め警告されていたが、忘れるにはあまりにも短かった。読様は頭を抱え、意気消沈している稲荷様に悩む。
「…あのね、前回のはかなり温情を掛けた特別処置だったのよ…?」
「分かっている。が、この、何か喉の奥に引っ掛かっているかのような感覚が気持ち悪くて、誰かに言いたかったんだ」
昏い瞳を無表情に固めながら、稲荷様は呟く。それがヒトだったらきっと「苦しい」とか「辛い」とかに言語化することが出来たのかもしれないが、ここはヒトの世ではない。もっと深い痛みなのかもしれないし、明日には忘れているような浅い感情なのかもしれない。わからないけれど、稲荷様が今、少女を想っていることだけは理解出来た。
「…何もなく転生させることは出来ないわ。審判の判断基準は私達には見られないものだから、前世より前の行いが反映されているのかもしれないもの。私が介入出来るのは、魂の管理と審判と転生の手続きの間にあるシステムの、隙間だけ。前回は上手くいったけど今回も行えるとは限らない。審判は厳格な奴だからね」
「あぁ。知ってる。だから、話だけしに来たんだ」
「~ッ!」
諦めの色を浮かべ、稲荷様は力無く笑う。瞬きよりも早く過ぎ去り終わってしまった人生に、嘆くことすら難しい。約50年、仕事の合間に魂を探しに来ていたと言うのがイレギュラーだったのだ。ずっと1つのことだけを考え続けることなんて出来ない。そして少し他のことに集中していたら、あっという間にヒトの人生なんてものは終わる。今回は10年程で思い出したのだから、きっと早い方だ。それでももう、少女はヒトの世にいない。
「…もう1度だけ、チャンスをあげるわ。探しなさい、稲荷。あの子を探し出して、もう1度私に交渉してみなさい」
読様は仁王立ちで稲荷様を指差し、はっきりと告げた。
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