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3月24日 葛藤⇔本音
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子供のように言葉をぶつければ、羅樹は視線を彷徨わせた後で伺うようにこちらを見つめて来た。
「…言って、いいの?」
「いいよ。聞きに来たんだから」
羅樹の不安そうな問いかけを、間髪入れずに肯定する。
だって、最初から羅樹を不安にさせない為ならば、何も言わずに出て何食わぬ顔で戻って来れば良かったのだ。後でバレることすらも許さないように、丁寧に詳細に、私が神経を張り巡らせれば良かったのだ。
それをしなかったのは、それを羅樹が望んでいないと理解したからで。
だから羅樹も、私が1人で抱え込む羅樹を望んでいないことを、理解してほしい。
待たせるのも巻き込んでいるのも全部全部私だけど、それが私だと肯定してくれたのは羅樹なのだから。
「…っ」
羅樹の唇が震える。言いたくないと喉が詰まる。口を開いては閉じて、こちらを確認して。笑って誤魔化そうとしたけれど、私が表情を崩さなかったから。私が黙ってずっと見つめ続けることに気付いたのか、逸らすように視線を下に落とした後で、観念したように口を開いた。
「…本当は、行かないでほしい」
ぽつりと、羅樹の本音が漏れる。
「さっきも言った通り、夕音が危ない目に遭うのは怖いし、嫌だ」
でも、と羅樹が言葉を切る。
「全部解決して来る夕音も、見たい」
それは、意外な言葉で。羅樹は葛藤を閉じ込めたような自嘲の笑みでこちらに視線を投げた。
「勝手だよね。僕は夕音が危ない目に遭うのも怖い目に遭うのも嫌なのに、それを全部乗り越えて解決する夕音が好きなんだ。ヒーローみたいで、ずっと憧れてた。僕が言葉を飲み込む度に怒って、気持ちを引き出してくれる夕音が、ずっと大好きだった。だから今も夕音がそうしようとする度に止められない。止めたくない。だって好きなんだ。怪我するかもしれないのに、もしかしたら死んじゃうかもしれないのに、夕音ならそんなことないって勝手に思い込んでる。ごめん。ごめんね、夕音」
羅樹の言葉で紡がれた、私への本音。最近これに近しい言葉は伝えてくれていたけれど、それよりももっと勝手で、もっと利己的な本心。
確かに、ヒトならざるモノとのやり取りは命が関わることも多くて。怪我どころか死んでいたかもしれない場面は多々あったけれど。これからもそうあるとは限らないけれど、その姿に憧れた羅樹がそれを実感出来ないのも無理はないのかもしれない。
ヒーローは、それだけ傷付いても立ち上がる存在だから。
ふと羅樹の手に視線を向けると、酷く震えていた。
「…羅樹?」
「っ」
びくりと肩を震わせる。
「本当、なんだ。夕音に行ってほしくないけど、解決して笑ってほしいのも本当で。怖いのも本当で、夕音を失ったらどうしようってずっと怖くて。僕の知らない安全なところで笑ってくれてたらいいのにって、嘘、本当は僕の近くてずっと笑ってくれてたらいいのにって、思ってた」
羅樹の瞳から一雫、涙が零れ落ちた。
「…言って、いいの?」
「いいよ。聞きに来たんだから」
羅樹の不安そうな問いかけを、間髪入れずに肯定する。
だって、最初から羅樹を不安にさせない為ならば、何も言わずに出て何食わぬ顔で戻って来れば良かったのだ。後でバレることすらも許さないように、丁寧に詳細に、私が神経を張り巡らせれば良かったのだ。
それをしなかったのは、それを羅樹が望んでいないと理解したからで。
だから羅樹も、私が1人で抱え込む羅樹を望んでいないことを、理解してほしい。
待たせるのも巻き込んでいるのも全部全部私だけど、それが私だと肯定してくれたのは羅樹なのだから。
「…っ」
羅樹の唇が震える。言いたくないと喉が詰まる。口を開いては閉じて、こちらを確認して。笑って誤魔化そうとしたけれど、私が表情を崩さなかったから。私が黙ってずっと見つめ続けることに気付いたのか、逸らすように視線を下に落とした後で、観念したように口を開いた。
「…本当は、行かないでほしい」
ぽつりと、羅樹の本音が漏れる。
「さっきも言った通り、夕音が危ない目に遭うのは怖いし、嫌だ」
でも、と羅樹が言葉を切る。
「全部解決して来る夕音も、見たい」
それは、意外な言葉で。羅樹は葛藤を閉じ込めたような自嘲の笑みでこちらに視線を投げた。
「勝手だよね。僕は夕音が危ない目に遭うのも怖い目に遭うのも嫌なのに、それを全部乗り越えて解決する夕音が好きなんだ。ヒーローみたいで、ずっと憧れてた。僕が言葉を飲み込む度に怒って、気持ちを引き出してくれる夕音が、ずっと大好きだった。だから今も夕音がそうしようとする度に止められない。止めたくない。だって好きなんだ。怪我するかもしれないのに、もしかしたら死んじゃうかもしれないのに、夕音ならそんなことないって勝手に思い込んでる。ごめん。ごめんね、夕音」
羅樹の言葉で紡がれた、私への本音。最近これに近しい言葉は伝えてくれていたけれど、それよりももっと勝手で、もっと利己的な本心。
確かに、ヒトならざるモノとのやり取りは命が関わることも多くて。怪我どころか死んでいたかもしれない場面は多々あったけれど。これからもそうあるとは限らないけれど、その姿に憧れた羅樹がそれを実感出来ないのも無理はないのかもしれない。
ヒーローは、それだけ傷付いても立ち上がる存在だから。
ふと羅樹の手に視線を向けると、酷く震えていた。
「…羅樹?」
「っ」
びくりと肩を震わせる。
「本当、なんだ。夕音に行ってほしくないけど、解決して笑ってほしいのも本当で。怖いのも本当で、夕音を失ったらどうしようってずっと怖くて。僕の知らない安全なところで笑ってくれてたらいいのにって、嘘、本当は僕の近くてずっと笑ってくれてたらいいのにって、思ってた」
羅樹の瞳から一雫、涙が零れ落ちた。
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