神様自学

天ノ谷 霙

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8月11日 餡蜜屋

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細い道を歩くと、レトロな色合いの店が並ぶ中、緑と白ののれんに「餡蜜屋」の文字が踊っている店が見えてきた。
「あ、あそこだよ」
「おー!早く行こう!」
爽が指さした店を見て、紗奈は目を輝かせた。店の中に入ると、お昼時だからか少し混んでいたが、席がたくさんあるおかげで私達もすぐに座ることができた。ソファと椅子が向かい合った席だった。
「俺たちが椅子の方座るから、女子はソファ使いなよ」
「え、悪いよ」
「大丈夫だよ。ほら、座って座って」
竜夜くんと小野くんに促されて、私達はソファに座る。ふかふかなのに少し抵抗があるソファだった。
メニュー表を開くと、少し和風寄りなメニューが写真や説明とともに目に飛び込んできた。そのどれもが美味しそうで、味を想像するだけで楽しかった。
「私、和風ハンバーグっていうのを食べてみようかな」
「あ、俺もそれ食べたい」
「アタシは焼き魚定食かな」
「私はこのまぐろの漬け丼!」
「俺は蕎麦そばかな」
それぞれ好きなメニューを頼んで、来るまでの間、デザートを選ぶ。
「抹茶白玉餡蜜…美味しそう…」
「わらび餅もあるんだな」
善哉ぜんざいって、お正月にしか食べないイメージ…」
「あー、分かる」
「たまには和風なものも良いね」
そんな風に話していると、店の奥から料理が出てきた。目の前に和風ハンバーグが来て、驚いた。じゅわじゅわとまだ中に余熱が残っているのか音を立て、肉汁が少し溢れていた。
「「「いただきまーす」」」
皆で声を合わせて挨拶をする。まるで子供に戻ったみたい、と昔を思い出しながら、ハンバーグを口の中に放り込む。熱さを忘れるくらいじゅわっと肉汁が溢れ出す。具材1つ1つの味が私の舌を刺激して、幸せな気持ちになる。
「美味しい!」
「だな!」
「海斗、俺にも一口」
「良いよ。ほら」
「あー」
「は?」
小野くんが自分のハンバーグを竜夜くんの方に寄せると、竜夜くんは口を開けて待機していた。あーんして欲しいのかな。
「…ほらよ」
「んぐ」
小野くんがぶっきらぼうに竜夜くんの口の中にハンバーグを突っ込む。竜夜くんは熱そうな仕草をしていたが、咀嚼して飲み込むと、少年のように目をきらきらと輝かせた。
「うっま!何これ超美味い!」
「え、気になる。夕音ー、私にも一口~」
「良いよー。はい、あーん」
ふざけて小野くんと竜夜くんの真似をしてみたが、紗奈は全く動じずに嬉しそうに食べた。
「美味し~!」
「爽も食べる?」
「あ、じゃあ…」
「はい、あーん」
「あ、あー…?」
爽は少し照れくさそうにしていたが、咀嚼をすると、そんなこと忘れたかのように口を押さえて頬を緩ませていた。
「アタシのも、良いよ」
爽の定食も少しもらい、得した気分になった。
「じゃあ次はデザートだね!」
食べ終わった瞬間、紗奈が嬉しそうにそう言った。
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