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羅樹と虹様の決着
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羅樹が真っ直ぐに告げた言葉に、私は一瞬思考を巡らせる。
羅樹は最初から私を失うのを嫌がっていた。私が神の世界を選んで、2度と会えなくなることを怖がっていた。けれどこの世界で私が羅樹の隣にいないことは、気にしていなかった。その事実は羅樹に恋する者として複雑だが、羅樹は私の心が自分にあるか否かよりも、在・不在の方を気にしていた。そしてそれは、私が幸せならば側に居なくても構わないという方向にシフトしていた。ならばこの羅樹の言も納得がいくというものだ。けれど何故今それを、と戸惑ってしまう。
羅樹は私の手を握ったまま、少しだけ目を伏せた。
「もしかしたら今回、貴方の助けがなければ。夕音は稲荷様と仲直りすることが出来なかったかもしれないし、もう2度とこちらの世界のモノと話が出来なくなってたかもしれない。そうしたらきっと、夕音はいつも通りの笑顔の中に、ふとした瞬間寂しそうな表情をしたのかもしれない。そう、思ったんです」
「……あ」
「夕音が何も諦めず、何も取りこぼさず、今笑顔で居られるのは貴方のお陰です。だからお礼を言いたい。虹様、ありがとうございました」
羅樹の感謝に、虹様ははっと目を見開いて。ゆっくりと瞳を瞬かせ、潤んだそれを誤魔化すように下を向いた。開いた唇から零れた声は震えていたが、それでもしっかりと私達の耳に届いていた。
「こちらこそ、ありがとう。私の妹を助けてくれて。私の妹も、選んでくれて、ありがとう」
虹様の顔は見えなくなってしまったが、ぽつぽつと彼女の衣服に粒が染みを作っていた。
「…今回の貴方の助けには感謝しています。でも、だからと言って貴方が夕音の命を狙ったことを許したわけではありません」
羅樹はぎゅっと手に力を込めて、真剣な声音で言う。
「貴方の咎を、僕は一生許さない。貴方がそうした理由も実際の行いも見たわけではないから、貴方がどれだけ反省して改心したかなんて知らない。だから僕は責め続ける。貴方が夕音を奪おうとした事実その一点だけで、僕は貴方の罪を忘れない。それだけは、貴方も忘れないでください」
たった1人から向けられる怒りと悲しみ。それが神にとってどれだけのものになるのかは知らないが、正当にそれをぶつけるべき私は既に終わったものとされ、判断を下すであろう否守様からは贖いとして被害者との行動を求められた。許す・許さないの狭間にすらいられなかった虹様は、もしかしたらその言葉こそを待っていたのかもしれない。「許さない」と羅樹に言われた虹様は、安堵したように泣き笑いの表情を浮かべていた。
羅樹は最初から私を失うのを嫌がっていた。私が神の世界を選んで、2度と会えなくなることを怖がっていた。けれどこの世界で私が羅樹の隣にいないことは、気にしていなかった。その事実は羅樹に恋する者として複雑だが、羅樹は私の心が自分にあるか否かよりも、在・不在の方を気にしていた。そしてそれは、私が幸せならば側に居なくても構わないという方向にシフトしていた。ならばこの羅樹の言も納得がいくというものだ。けれど何故今それを、と戸惑ってしまう。
羅樹は私の手を握ったまま、少しだけ目を伏せた。
「もしかしたら今回、貴方の助けがなければ。夕音は稲荷様と仲直りすることが出来なかったかもしれないし、もう2度とこちらの世界のモノと話が出来なくなってたかもしれない。そうしたらきっと、夕音はいつも通りの笑顔の中に、ふとした瞬間寂しそうな表情をしたのかもしれない。そう、思ったんです」
「……あ」
「夕音が何も諦めず、何も取りこぼさず、今笑顔で居られるのは貴方のお陰です。だからお礼を言いたい。虹様、ありがとうございました」
羅樹の感謝に、虹様ははっと目を見開いて。ゆっくりと瞳を瞬かせ、潤んだそれを誤魔化すように下を向いた。開いた唇から零れた声は震えていたが、それでもしっかりと私達の耳に届いていた。
「こちらこそ、ありがとう。私の妹を助けてくれて。私の妹も、選んでくれて、ありがとう」
虹様の顔は見えなくなってしまったが、ぽつぽつと彼女の衣服に粒が染みを作っていた。
「…今回の貴方の助けには感謝しています。でも、だからと言って貴方が夕音の命を狙ったことを許したわけではありません」
羅樹はぎゅっと手に力を込めて、真剣な声音で言う。
「貴方の咎を、僕は一生許さない。貴方がそうした理由も実際の行いも見たわけではないから、貴方がどれだけ反省して改心したかなんて知らない。だから僕は責め続ける。貴方が夕音を奪おうとした事実その一点だけで、僕は貴方の罪を忘れない。それだけは、貴方も忘れないでください」
たった1人から向けられる怒りと悲しみ。それが神にとってどれだけのものになるのかは知らないが、正当にそれをぶつけるべき私は既に終わったものとされ、判断を下すであろう否守様からは贖いとして被害者との行動を求められた。許す・許さないの狭間にすらいられなかった虹様は、もしかしたらその言葉こそを待っていたのかもしれない。「許さない」と羅樹に言われた虹様は、安堵したように泣き笑いの表情を浮かべていた。
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