神様自学

天ノ谷 霙

文字の大きさ
182 / 812

8月25日 教えてもらって

しおりを挟む
「…っと、衛兵はこんな感じかな?竜夜、わかった?」
いつも通りの声で、背中などをはたきながら立ち上がる霙。
「まぁまぁ…何かアドバイスとかあるか?」
「うーん、衛兵って呼ばれてるくらいだし、衣装は鎧とかそういう系だと思うんだよね。だから動きづらいし、最後の方は動きが遅くなったりすると思うよ」
「了解」
「さて、次は騎士こと夕音だね!竜夜は私の演技何回か見たことあるから台詞付きで見せたけど、夕音は説明しながらやるから、竜夜も実際に動いてみようか」
「マジか…了解」
「お願いします!」
私と竜夜くんで向かい合う。私の横に霙がついて、教えてくれる。
「騎士は衣装とか、軽いものが多いと思うんだよね。だから身軽に動き回っちゃって良いと思う。で、衛兵が敵視して襲いかかってくるから、最初は受けるだけかな」
「う、うん。竜夜くんの剣を受けてれば良い感じ?」
「そんな感じ。竜夜は鎧だし、途中で疲れてくると思うから、そこから反撃開始かな。騎士は、いかに身軽でかっこよく攻撃を決められるか、が鍵だね」
台本をぱらぱらとめくりながら、霙が先も考えて指示を出す。
「新聞じゃ柔らかくて、あんまり出来そうもないね。演劇部から模擬刀取ってくるよ。少し待ってて」
霙が教室を小走りで出ていく。私と竜夜くんだけが取り残されて、顔を見合わせる。
「衛兵と騎士の戦いって…大変だな…」
「うん、衣装の重さとかも意識して演技しないと不自然になっちゃうんだね…」
少し不安になって来た。けれど、けれどそれ以上に。
「でもさ、俺らみたいに演劇部に所属してない人達からすれば、演技なんて滅多に出来ない。けど、今はそれをやるチャンスなんだなって思うと…さ…?」
「うん、不安とかいっぱいあるけど、それ以上に…」
「「楽しい!」」
顔を見合わせて同じことを言ったので、自然と笑みが漏れる。
「霙とか、自分の演技は大丈夫なのかな?」
「あー、何日か前に、お前に1から教えるのは面倒だから、見て教えたことを思い出せって言われて演劇部見学させられたよ。なんか、素人からしたら、もう完成なんじゃないかっていうくらい迫力があって凄かった」
「そうなの?良いなぁ。やっぱり迫力とか、違うんだろうなぁ…」
「でも、指導してくれるのは演劇部のトップクラス2人だぜ?あいつらに任せっぱなしじゃ悪いって皆が思って、それぞれ努力すればきっと…俺たちらしい演劇が出来るよ」
「うん、そうだね。よし、頑張ろう!」
その時、ガラッと扉が開いた。西洋風の剣を2本、持って入ってくる。
「ただいまーっ」
「おかえり、ありがとう」
「おう、せんきゅ」
「いえいえ、じゃあ休憩してたのかな?じゃあ続き、やろっか!」
「「はーい」」
そして、その日は暗くなるまで霙が練習に付き合ってくれた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...