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9月1日 図書室の奥
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「探してもらっちゃってごめんなさいね。ちょっと出て行けそうにない雰囲気だったから」
私がドアを開けると、窓際に立っている利羽ちゃんが振り返って言った。表情が、前髪に隠れて少し見えづらい。
「…ううん、大丈夫」
私は、無理やり口角を上げて笑顔を作る。利羽ちゃんに笑顔が伝染して欲しかったから。でも、利羽ちゃんは寂しそうな表情を浮かべるだけだった。
「…さっき、聞こえたんでしょうけど。クラスメイトの本音が。そこには、触れないでね」
「…何のこと?」
「…聞いてないなら良いわ。夕音ちゃんは優しいのね」
利羽ちゃんの、悟ったような諦めた口調。話す気はないらしい。利羽ちゃんは私から視線を外して、窓の外を見た。
「あれ、蒼くんが植えた花なんだよ。『環境美化委員だから』っていつも言ってるけど、あれは環境美化委員の仕事でも、何でもないんだよ」
私も窓に近寄って、下を覗く。綺麗な花が、5階からでも見える。
「綺麗だね」
「うん、綺麗」
静かな利羽ちゃんの声。それが私の耳に響くと同時に襲う強い頭痛。頭の中で脈打つような痛みがする。そして、何かが私をイライラさせる。何が?他人のことを考えずに、影口を叩いていたクラスメイトが?目の前で、諦めたふりをして、傷付いているのを隠している利羽ちゃんが?何にも出来ない自分が?
そのどれもが不正解で、正解だ。
そう私は思った。
いまだ鳴り止まない頭痛。頭を抱えたってどうしようもない。寝転がって痛いと叫んだって意味は無い。痛い。痛みだけが、私の中を走り続ける。
「…利羽ちゃんは、蒼くんが好きなの?」
あまりにも直球な質問に、思わず振り返った利羽ちゃんは、目を丸くする。
「…うーん、どうだろう。よく分からないのよね」
利羽ちゃんは、答えるときに私から目を逸らした。認めるのが怖いのか。分からないと言い訳をして逃げているのか。
私は衝動に駆られて窓を開ける。唐突な私の行動。利羽ちゃんは肩をびくっと震わせて、私の方を見つめる。急に入ってきた風に、紫の小さな花が踊る。普通だったらこの時季には咲かない花。
「…な…に」
「スターチス」
私は流れ込んで来る言葉を、自分では飾らずにそのまま呟く。
「花言葉は、途絶えぬ記憶。前話してくれたあの思い出、ずっと覚えてたんでしょう?利羽ちゃんの記憶は、ずっと途絶えてないんでしょう?」
利羽ちゃんの瞳に映る私の目が、赤色に揺らめいた。私から視線を外せなくなった利羽ちゃんの代わりに、私が逸らす。先ほどまで私達の周りを舞っていた花が、いつのまにか消えていた。
私がドアを開けると、窓際に立っている利羽ちゃんが振り返って言った。表情が、前髪に隠れて少し見えづらい。
「…ううん、大丈夫」
私は、無理やり口角を上げて笑顔を作る。利羽ちゃんに笑顔が伝染して欲しかったから。でも、利羽ちゃんは寂しそうな表情を浮かべるだけだった。
「…さっき、聞こえたんでしょうけど。クラスメイトの本音が。そこには、触れないでね」
「…何のこと?」
「…聞いてないなら良いわ。夕音ちゃんは優しいのね」
利羽ちゃんの、悟ったような諦めた口調。話す気はないらしい。利羽ちゃんは私から視線を外して、窓の外を見た。
「あれ、蒼くんが植えた花なんだよ。『環境美化委員だから』っていつも言ってるけど、あれは環境美化委員の仕事でも、何でもないんだよ」
私も窓に近寄って、下を覗く。綺麗な花が、5階からでも見える。
「綺麗だね」
「うん、綺麗」
静かな利羽ちゃんの声。それが私の耳に響くと同時に襲う強い頭痛。頭の中で脈打つような痛みがする。そして、何かが私をイライラさせる。何が?他人のことを考えずに、影口を叩いていたクラスメイトが?目の前で、諦めたふりをして、傷付いているのを隠している利羽ちゃんが?何にも出来ない自分が?
そのどれもが不正解で、正解だ。
そう私は思った。
いまだ鳴り止まない頭痛。頭を抱えたってどうしようもない。寝転がって痛いと叫んだって意味は無い。痛い。痛みだけが、私の中を走り続ける。
「…利羽ちゃんは、蒼くんが好きなの?」
あまりにも直球な質問に、思わず振り返った利羽ちゃんは、目を丸くする。
「…うーん、どうだろう。よく分からないのよね」
利羽ちゃんは、答えるときに私から目を逸らした。認めるのが怖いのか。分からないと言い訳をして逃げているのか。
私は衝動に駆られて窓を開ける。唐突な私の行動。利羽ちゃんは肩をびくっと震わせて、私の方を見つめる。急に入ってきた風に、紫の小さな花が踊る。普通だったらこの時季には咲かない花。
「…な…に」
「スターチス」
私は流れ込んで来る言葉を、自分では飾らずにそのまま呟く。
「花言葉は、途絶えぬ記憶。前話してくれたあの思い出、ずっと覚えてたんでしょう?利羽ちゃんの記憶は、ずっと途絶えてないんでしょう?」
利羽ちゃんの瞳に映る私の目が、赤色に揺らめいた。私から視線を外せなくなった利羽ちゃんの代わりに、私が逸らす。先ほどまで私達の周りを舞っていた花が、いつのまにか消えていた。
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