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蜂蜜sister 清歌
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小五の時の話。私は何も知らなかった頃。
いつも通り家に帰ってくると、境内に小さな男の子が座っていた。空を見上げるともう夕陽が傾き、地平線に沈みそうな時だった。
こんなところに男の子一人では帰り道に誘拐されるかも、と心配になり、ランドセルを自分の部屋に置き巫女服に着替えた。落ち葉を掃くフリをして男の子に近づく。
「こんにちは」
声がおかしくならないように落ち葉を掃きながら何度も練習した。そのおかげでいつも通りの声が出た。
「こ、こんにちは」
慌てたのか赤い目を丸くしてお辞儀をした。泣いていたみたいだ。何が起こったかなんて分からないけれど。
私は昔、お母さんに言われた言葉を思い出していた。
「今夜は上弦の月ね。これから、膨らんでいくけどまた元に戻るわ。人の心のように」
つい、呟いてしまったようだ。我にかえり男の子の方を向くと、目をぼんやりと開き微かに笑った。
それからもう一度お辞儀をして、裏口から出て行った。
残りの落ち葉を掃いていると、鳥居のある入り口からさっきの男の子が見えた。
「あら…?」
少し不思議に思ったけれど、暗い中少し見えた表情が晴れていたように思えた嬉しさにかき消されてしまった。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
それから何度も繰り返し会う内に、男の子の名前は「富」だということを知った。
私はそれが嬉しくて何度も話した。私の名前も教えた。
そしてある時。私が中二で富くんは小五だった。夕焼けに照らされた頬がうっすらと赤く見えた。出会った時に比べて随分と背も伸びてかっこよくなっていた。
いつからか、私も富くんに惹かれていったのだと思う。ずっと気付いていなかったけれど。
「せ、清歌さん」
「なぁに?」
名前を呼ばれるだけで嬉しくなる。姿を認識して笑いかけてくれるだけで幸せになる。その所為か、自然に笑顔になる。
「俺、清歌さんが好きです」
驚いた。告白されたことよりも、自分も同じ気持ちを持っていた、という事に。全然自分の事を考えないからか、嬉しくて泣きそうだった。
「俺と、付き合ってください」
繋がる言葉に心の奥がじわりと温かくなる。全身が陽だまりに包まれるように幸せになる包まれた。
「…はい」
返事は涙声で。恥ずかしかったけれど、富くんが好きだということが、富くんと同じ気持ちだということが嬉しくて何も思わなかった。
それから私は自分の事を少しずつ考えるようになった。富くんが好きな自分の事をもっと知りたいと思ったから。
私は、そこまで自分の事好きじゃなかったから。何も考えず、気付かず生きてきたから。私の事を「好きだ」と言う人がいるなんて考えなかった。
私が誰かを愛すことも考えなかった。
だから少しずつでも考えを変えていけたらと思ったのだ。
蜂蜜みたいに甘くて、痛い心に耳を傾けていきたいと思う。
その夜。
「みーちゃん、私富くんと付き合うことになったの!」
そう報告すると霙ちゃんはいきなりジュースを吹き出して、げほっげほっと咳き込んだ。
「え…富って、冬間?」
「うんっ、知ってるの?」
「知ってるも何も…隣の家だけど」
「え!?」
全然気付かなかった。だからあの時裏口から出たのに正門から見えたのね。
謎が解けた安堵感といきなり告げられた事実に腰が抜けそうになる。
隣の家かぁ。遠くなくて良かったなぁ。
なんて思ったのは誰にも言えない。
いつも通り家に帰ってくると、境内に小さな男の子が座っていた。空を見上げるともう夕陽が傾き、地平線に沈みそうな時だった。
こんなところに男の子一人では帰り道に誘拐されるかも、と心配になり、ランドセルを自分の部屋に置き巫女服に着替えた。落ち葉を掃くフリをして男の子に近づく。
「こんにちは」
声がおかしくならないように落ち葉を掃きながら何度も練習した。そのおかげでいつも通りの声が出た。
「こ、こんにちは」
慌てたのか赤い目を丸くしてお辞儀をした。泣いていたみたいだ。何が起こったかなんて分からないけれど。
私は昔、お母さんに言われた言葉を思い出していた。
「今夜は上弦の月ね。これから、膨らんでいくけどまた元に戻るわ。人の心のように」
つい、呟いてしまったようだ。我にかえり男の子の方を向くと、目をぼんやりと開き微かに笑った。
それからもう一度お辞儀をして、裏口から出て行った。
残りの落ち葉を掃いていると、鳥居のある入り口からさっきの男の子が見えた。
「あら…?」
少し不思議に思ったけれど、暗い中少し見えた表情が晴れていたように思えた嬉しさにかき消されてしまった。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
それから何度も繰り返し会う内に、男の子の名前は「富」だということを知った。
私はそれが嬉しくて何度も話した。私の名前も教えた。
そしてある時。私が中二で富くんは小五だった。夕焼けに照らされた頬がうっすらと赤く見えた。出会った時に比べて随分と背も伸びてかっこよくなっていた。
いつからか、私も富くんに惹かれていったのだと思う。ずっと気付いていなかったけれど。
「せ、清歌さん」
「なぁに?」
名前を呼ばれるだけで嬉しくなる。姿を認識して笑いかけてくれるだけで幸せになる。その所為か、自然に笑顔になる。
「俺、清歌さんが好きです」
驚いた。告白されたことよりも、自分も同じ気持ちを持っていた、という事に。全然自分の事を考えないからか、嬉しくて泣きそうだった。
「俺と、付き合ってください」
繋がる言葉に心の奥がじわりと温かくなる。全身が陽だまりに包まれるように幸せになる包まれた。
「…はい」
返事は涙声で。恥ずかしかったけれど、富くんが好きだということが、富くんと同じ気持ちだということが嬉しくて何も思わなかった。
それから私は自分の事を少しずつ考えるようになった。富くんが好きな自分の事をもっと知りたいと思ったから。
私は、そこまで自分の事好きじゃなかったから。何も考えず、気付かず生きてきたから。私の事を「好きだ」と言う人がいるなんて考えなかった。
私が誰かを愛すことも考えなかった。
だから少しずつでも考えを変えていけたらと思ったのだ。
蜂蜜みたいに甘くて、痛い心に耳を傾けていきたいと思う。
その夜。
「みーちゃん、私富くんと付き合うことになったの!」
そう報告すると霙ちゃんはいきなりジュースを吹き出して、げほっげほっと咳き込んだ。
「え…富って、冬間?」
「うんっ、知ってるの?」
「知ってるも何も…隣の家だけど」
「え!?」
全然気付かなかった。だからあの時裏口から出たのに正門から見えたのね。
謎が解けた安堵感といきなり告げられた事実に腰が抜けそうになる。
隣の家かぁ。遠くなくて良かったなぁ。
なんて思ったのは誰にも言えない。
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