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才能difference(違い、差) 蓮乃
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俺はこれといった、飛び抜けた才能はない。勉強は劣っている方だし、運動神経は良い方だが、編茶乃に比べると僅かだが俺の方が劣っている。
「運動神経抜群だね!」とか、「運動出来るのって凄いなぁ…」とか感嘆の声をあげる人はいた。けれどその誰もが俺と編茶乃を比べた。
別に俺はそれが嫌なわけではなかった。幼少期から聞かされてきた”編茶乃が上”という現実に、俺は素直に従っていた。そもそも俺は編茶乃が嫌いじゃない。お菓子とか食べられるとむかつくけど、いなくなれば良いのにというほどの強い憎しみや、感情を持ったことがなかった。しかも俺は、元々そういう感情が乏しい。俺は、他人への興味が、ほとんどない人間なのだ。それは自覚している。どうすれば愛される?どうすれば編茶乃より優位に立てる?そんなこと、興味がない。
俺は、そんなことよりも心奪われることがあった。
編茶乃の目、だった。人によっては俺を近親相姦だと思う奴もいるかもしれない。けれど、俺はそういうのではなくて、純粋に目に興味があった。
小さい頃から明るくて、人気もあった。年相応の顔つきをしているくせに、妙に大人びた言葉を使って礼儀を正して。母親にもそこが気に入られて、たくさんの教育を受けた。きらきらと好奇心に輝く目が、段々と光をなくして真っ暗になっていた。そんな双子の姉を心配しない奴なんているだろうか。俺にはいい気味だ、なんて思えなくて。怖くて、今にも何処かへフラフラと消えてなくなってしまいそうで恐ろしい。そんな姉をずっと近くで見てきたんだ。だから、だから…、いなくならないでくれ。消えそうにならないでくれ。頼むから。
それから、姉が家から逃げたのは数日後のことだった。
明日が発表会であることは、家族の誰もが知っていた。家族、か。編茶乃にとって家族は誰だったんだろう。こんな苦しい環境で育てば、意識しなくとも家族との縁を切りたくなるだろう。編茶乃は、母親からのプレッシャーに押し潰されそうになっていた。吐きそうな程、毎日嗚咽を漏らしていた。そんな相手のことを家族と思えるだろうか。嫌で嫌でしょうがない相手を、血が繋がっていると認められるだろうか。俺は編茶乃の立場になったとき、多分出来ない。家族というものは、憎くて仕方ない標的という評価に変わる。俺は、耐えられない。もっと早く逃げるか、犯罪に手を染めるかしていると思う。そんな俺と違って、長く耐えて逃げた。辛抱強く耐えた。かっこよかった。けれど、身体中が冷えきった。
…やめろ。
俺から編茶乃を奪わないでくれ。編茶乃から、自由を奪わないでくれ。
頼むから…母さんっ…!!
出て行ったドアを呆然と見つめながら立ちすくんでいた俺は、ぼぅ…っとした頭でやっと気持ちと今起こった出来事の整理をした。遠くで、母さんの声が聞こえた。狂ったような叫び声。編茶乃への怒りを露わにした怒号。許せないという真っ黒い声。
俺は、初めて感情に任せて行動した。
「うっさいな!!あいつを縛り付けていたのは母さんだ…あんたには、あいつに許してもらう、という選択肢しかねぇんだ!わかんないならそこで一生キレてろ。俺は編茶乃を選ぶ」
ドアを勢いよく閉めて、編茶乃を探しに走り出した。微かに、母親の懺悔の声が聞こえた気がした。
「運動神経抜群だね!」とか、「運動出来るのって凄いなぁ…」とか感嘆の声をあげる人はいた。けれどその誰もが俺と編茶乃を比べた。
別に俺はそれが嫌なわけではなかった。幼少期から聞かされてきた”編茶乃が上”という現実に、俺は素直に従っていた。そもそも俺は編茶乃が嫌いじゃない。お菓子とか食べられるとむかつくけど、いなくなれば良いのにというほどの強い憎しみや、感情を持ったことがなかった。しかも俺は、元々そういう感情が乏しい。俺は、他人への興味が、ほとんどない人間なのだ。それは自覚している。どうすれば愛される?どうすれば編茶乃より優位に立てる?そんなこと、興味がない。
俺は、そんなことよりも心奪われることがあった。
編茶乃の目、だった。人によっては俺を近親相姦だと思う奴もいるかもしれない。けれど、俺はそういうのではなくて、純粋に目に興味があった。
小さい頃から明るくて、人気もあった。年相応の顔つきをしているくせに、妙に大人びた言葉を使って礼儀を正して。母親にもそこが気に入られて、たくさんの教育を受けた。きらきらと好奇心に輝く目が、段々と光をなくして真っ暗になっていた。そんな双子の姉を心配しない奴なんているだろうか。俺にはいい気味だ、なんて思えなくて。怖くて、今にも何処かへフラフラと消えてなくなってしまいそうで恐ろしい。そんな姉をずっと近くで見てきたんだ。だから、だから…、いなくならないでくれ。消えそうにならないでくれ。頼むから。
それから、姉が家から逃げたのは数日後のことだった。
明日が発表会であることは、家族の誰もが知っていた。家族、か。編茶乃にとって家族は誰だったんだろう。こんな苦しい環境で育てば、意識しなくとも家族との縁を切りたくなるだろう。編茶乃は、母親からのプレッシャーに押し潰されそうになっていた。吐きそうな程、毎日嗚咽を漏らしていた。そんな相手のことを家族と思えるだろうか。嫌で嫌でしょうがない相手を、血が繋がっていると認められるだろうか。俺は編茶乃の立場になったとき、多分出来ない。家族というものは、憎くて仕方ない標的という評価に変わる。俺は、耐えられない。もっと早く逃げるか、犯罪に手を染めるかしていると思う。そんな俺と違って、長く耐えて逃げた。辛抱強く耐えた。かっこよかった。けれど、身体中が冷えきった。
…やめろ。
俺から編茶乃を奪わないでくれ。編茶乃から、自由を奪わないでくれ。
頼むから…母さんっ…!!
出て行ったドアを呆然と見つめながら立ちすくんでいた俺は、ぼぅ…っとした頭でやっと気持ちと今起こった出来事の整理をした。遠くで、母さんの声が聞こえた。狂ったような叫び声。編茶乃への怒りを露わにした怒号。許せないという真っ黒い声。
俺は、初めて感情に任せて行動した。
「うっさいな!!あいつを縛り付けていたのは母さんだ…あんたには、あいつに許してもらう、という選択肢しかねぇんだ!わかんないならそこで一生キレてろ。俺は編茶乃を選ぶ」
ドアを勢いよく閉めて、編茶乃を探しに走り出した。微かに、母親の懺悔の声が聞こえた気がした。
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