魔法王国軍の日常 〜上級冒険者に追放された少女は、レベル0から本気で生き抜いてやると決意したようです〜

たにどおり

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喧嘩を売る相手

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 ネロスフィアがアクエリアスの大部分を制圧して数日、館の屋上に置かれた対空魔導砲へもたれながら、わたしは水平線を眺めていた。

 キャットピープル特有のネコミミと尻尾、動きやすいという理由で好むホットパンツから伸びた脚を潮風が撫でる。

「もう少し......」

 アラル村の実家を飛び出してから、ずっと今日という日を待ち望んでいた。もう少しで悲願が叶う。
 遥か遠くに浮かぶ海賊船団を一瞥していると、人影が近づいてきた。

「ミーシャだっけ、こんなところにいたのかい」

 声を掛けてきたのは、わたしが開放した囚人の1人。

「何の用? "ヴィザードのシルカ"」
「相変わらず無愛想だねー、私はお願いに来たってのに」

 こいつ――――シルカの性格から考えて、どうせろくなことじゃないのだろう。
 でも、今は利害の一致する同志だ。聞くだけ聞いてみよう。

「あんたが戦った黒髪の騎士いるでしょ? 前に王都であいつに屈辱を舐めさせられててね。借りを返したいんだよ」
「――――無理な相談ね、彼女の身柄はもうリーダーに渡した。それにわたしたちの目的はもっと別でしょ。コロシアムはどうなの?」

 こいつは王都で騎士に敗北し、今まで捕まっていたらしい。
 その1人が、黒髪で魔法を無力化するスキルを持ったヤツらしいけど、正直今はどうでもいい。
 それより、まだ抵抗が続くコロシアムの方が気になった。

「チッ......、コロシアムではまだ軍が籠城してるよ。ホントにうっとうしい連中」
「例の物は手に入ったんでしょ?」
「例の? ......あぁ、優勝賞品だった『ルナクリスタル』ってやつ? リーダーが持ってたよ」

 わざわざコロシアム開催日に襲ったのも、その魔力の塊を手に入れるためだ。
 あと少しで家族を見捨てた自治政府、種族を迫害する人間、見境のない魔王軍に一泡吹かせられる。

「でもアリアのヤツが言った通り、大勢の魔導士を集めりゃ案外いけるもんだねー」
「なにが?」
「都市の占領だよ! もう日陰でコソコソせずともこれで自由にできるじゃないか! 気に入らないヤツは殺して好きなだけ酒を飲む、もう国なんて怖くないじゃない!!」

 呆れる......、アリアという人間も含めてここまでバカだとは。

「ヴィザードのシルカ、例えばの話。もし目の前で自分の内蔵を取られたらあなたはどうする?」
「はぁ? なにそれ、取り返すに決まってるわよ」
「わかってるじゃない、それと一緒よ」

 わたしは傍に置いていた剣を握る。

「なにそれ、意味わかんないんだけ――――――――」

 刹那、いくつもの轟音がアクエリアスを走った。
 見れば、先程まで浮いていた海賊船団が爆炎を上げて海の藻屑となり果てていた。

「なッ!?」

 突然の事態に、シルカは動揺を隠せないでいる。

「わたしたちは国家に喧嘩を売った、尻尾を踏まれ、内蔵を取られた獅子が怒り狂って牙を向くわ。覚悟を決めて」

 爆沈する海賊船団を踏み越え、現れたのは海上を埋め尽くさんばかりの"大艦隊"。
 先頭には戦艦らしきシルエットも見えることから、結託していた海賊は彼らにやられたんだろう。

「シルカ、あなたは広場で防衛にあたって。敵はすぐに来る」

 わたしの耳は人間より多くの音を拾う。
 それ故に気づけた、雲に紛れて接近する別の敵の存在を。
 遅れて気づいたネロスフィアの構成員が、大急ぎで隠していた対空魔導砲を引っ張り出す。

 《敵の空中飛行船団が上空に接近!! 対空砲火急げッ!!!》

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