魔法王国軍の日常 〜上級冒険者に追放された少女は、レベル0から本気で生き抜いてやると決意したようです〜

たにどおり

文字の大きさ
39 / 47

VSイチガヤ レイタ

しおりを挟む
 
「ルールは単純。どちらかが降伏した時点で勝負は決着とする!」

 ギルド前の通りで、わたしはフェニクシアの青年剣士と対峙していた。
 今思えばかなり短絡的な返答だったが、これも研修の内と考えよう。

 鋭く尖った剣先を互いに向け合った。

「そういえばあなた......名前は?」
「言ってなかったか? 本名はイチガヤ レイタ。訳あってこの国に来たんだが、今はフェニクシアで冒険者をしてる」

 変わった名前だ、やはりこの国の人間ではないらしい。
 彼のスキルや魔法はまだわからない、でもそれは相手も同じだ。
 この際遠慮などはかなぐり捨てる――――!!

 剥き出しの刃を輝かせ、地を蹴った。
 レベルが60を超えた今、わたしは砲弾のような速度で肉薄。一気に接近した。

「速えっ!!?」
「だああああッ!!!」

 連撃を叩き込んだ。
 イチガヤは即座に防戦へ移行したのか、その両手剣でことごとくを防ぐ。
 さすがはフェニクシアの上級冒険者だ、でも――――

「剣がダメなら......! これでブチ抜くッ!!」
「うぐぉっ!?」

 連撃で空いた隙間へ蹴りを打ち込む。
 軽く吹っ飛んだイチガヤは体勢を立て直すと、同時に剣も構え直した。

「すげえな......、あのイチガヤが押されてるぞ!」

 戦闘を見学するギルドメンバーの1人が声を上げた。

「そういえばあの金髪、こないだの新聞で見たぞ!」
「俺も見た! あいつ、一面に載ってたアクエリアスの英雄じゃねえか!?」

 ここにきての身バレ。
 恥ずかしいけど、今は注意を逸らすべきじゃない。
 並みの人間なら肋骨を粉砕するはずの蹴りだったが、彼には微塵も効いた気がしなかったから。

「都市を救った英雄か......、結構やるじゃねーか王国軍! なら――――俺も本気出さなきゃ釣り合わねえよなあッ!!!」

 きた! 両手剣が一気に魔光を放ったということは、おそらく攻撃魔法!
 ここからだ、全神経を集中させろ。

「教えてやるよ騎士さんッ!! 上位剣士職《セイバーロード》の力を、トップギルドの実力をなぁッ!!」

 真横に一閃、飛び出した斬撃魔法が超高速で飛翔した。

「『イージス・ブレイク』!!!」

 同じ上位剣士職のベルクートとは比べ物にならない一撃だ。
 練り上げられたステータスの暴力と言っていい攻撃魔法へ、わたしは石畳を踏みつけ、叩き切るように剣を振り下ろした。

「はあああぁぁぁぁぁッッ!!」

 相殺の衝撃で道路が砕け、なんとか防ぎ切ったわたしは数メートルほど後退。
 しかし、そこで砂埃を破ったイチガヤが視界を埋めてきたのだ。

 ――――互いに剣先を瞬かせ、陽光の中で剣舞を繰り広げる。

「このコンボを防がれたのは初めてだ! 軍ってのもやるじゃねえか!!」
「こっちこそ! あの蹴りを受けてピンピンされるとは思ってなかったわ!!」

 アクエリアス事件前のわたしなら、おそらくこのイチガヤという冒険者に手も足も出なかっただろう。
 あらゆる上級冒険者と戦ったからこそ、こうして互角に持ち込めているのだ。

 斬撃をかわし、再び回し蹴りを放つ。

「剣技と体術か、いい組み合わせだが、もう見切った!!」

 脚を掴まれるが、地面へ叩き付けられる前に空いた左脚を突き刺すように振り上げ、すぐさま脱出。
 一旦距離を取って――――――――

「もらったッ!!」

 マズいことに空中のわたしへ、重い両手剣が振るわれた。
 とてもじゃないけどガードは間に合わない、ここで負けたらせっかくのチャンスが全て失われる! せっかく来れた憧れの場所。

 曲がりなりにも騎士として――――元冒険者として、ここでなんて負けられないッ!!!

「『レイドスパーク』ッッ!!」

 閃光が走る。
 わたしの放った上位電撃魔法《レイドスパーク》はイチガヤに直撃し、互いに吹っ飛んだ。

 黒煙が立ち込める。
 僅かに期待するが、くっきりと現れた人影はそんな淡い期待を一瞬で裏切った。

「ビックリしたぜ、まさか魔法を使ってくるとは想像してなかった。王国軍騎士を舐めてたよ」
「ハハッ......、そりゃどうも」

 さすがに手強いか、わたしがここからどうやって有利に持ち込むか思考していると、イチガヤは両手剣をアッサリ焦げた地面へ落とした。

「えっ?」
「――――"良い勝負だった、今回は"俺の負けだ。実はちょうど『パーティー』を組んでくれるヤツを探しててさ、俺と組んでくれないか? お前の実力ならあのクエストもいける筈だ」

 突然の戦闘終了とお誘いに、思考がこんがらがる。

「まさかイチガヤ......、その為にこんなティナを試すようなことしたの?」

 外野で観ていたフィオーレが、呆れた様子で詰め寄った。

「いやいや悪かったって! っつかなんならお前も来いよ、面白そうなクエスト見つけたんだ!!」
「まったく......、騒がした分はちゃんと奢ってもらうからね」
「そう来るか、まあ依頼こなせたら奢ってやるよ」

 こういうトップ冒険者というのは、きっとどこかがおかしいものなのかもしれないと、心の中のメモ帳に記入。
 こうしてわたし、イチガヤ、フィオーレの3人パーティーが電撃的に結成された。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

​『追放された底辺付与術師、実は【全自動化】のチートスキル持ちでした〜ブラックギルドを追い出されたので、辺境で商会を立ち上げたら勝手に世界規

NagiKurou
ファンタジー
​「お前のような、一日中デスクに座って何もしない無能はクビだ!」 国内最大のギルド『栄光の剣』で、底辺の付与術師として働いていたアルスは、ある日突然、強欲なギルドマスターから追放を言い渡される。 しかし、彼らは知らなかった。ギルドの武器の自動修復、物流の最適化、資金管理に至るまで、すべてアルスの固有スキル【全自動化(ワークフロー構築)】によって完璧にシステム化され、回っていたことを。 「俺がいなくなったら、あの自動化システム、全部止まるけど……まあいいか」 管理権限を解除し、辺境へと旅立ったアルス。彼は自身のスキルを使って、圧倒的な耐久力を誇る銀色の四輪型重装ゴーレムを作り出し、気ままな行商を始める。 一度構築すれば無限に富を生み出す「全自動」のチートスキルで、アルスの商会は瞬く間に世界規模へとスケールしていく! 一方、すべてを失ったギルドは、生産ラインが崩壊し、絶望のどん底へと突き落とされていくのだった……。

スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ
ファンタジー
「役立たず」の烙印を押され、パーティを追放されたアルフォンス。彼のスキルは戦闘に不向きな【土いじり】。失意の彼は都会を離れ、辺境の地で静かに農業を営むことを決意する。 しかし、彼が畑を耕すと、そこから不思議なダンジョンが生えてきた! ダンジョン内では、高級ポーションになる薬草や伝説の金属『オリハルコン』が野菜のように収穫できる。地味だと思われた【土いじり】は、実はこの『農園ダンジョン』を育てる唯一無二のチートスキルだったのだ。 噂を聞きつけ集まる仲間たち。エルフの美少女、ドワーフの天才鍛冶師……。気づけば彼の農園は豊かな村へ、そして難攻不落の要塞国家へと発展していく。 一方、彼を追放したパーティは没落の一途を辿り……。 これは、追放された男が最強の生産職として仲間と共に理想郷を築き上げる、農業スローライフ&建国ファンタジー!

この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。 全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった! ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。 一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。 落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

処理中です...