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レンジャー名物ヘビの丸焼きです!
しおりを挟む日もすっかりと落ち、静寂で満たされた夜空は星が生きているかのように光を放つ。
古代に栄えた文明、その名残りである【古城ルナゲート】の膝下。
街1つが軽く入りそうな湖のほとりで、わたしたちは夜を越すため夜営していた。
推奨レベル55以上のダンジョンということもあり、一晩休んでから挑戦しようという話になったのだ。
「さあ出来たわよ! 王国陸軍特製"ヘビの丸焼き"! 山中行軍の味をご賞味あれ!」
焚き火の前、わたしは捕まえたヘビを晩ごはん用に調理していた。
調理といっても火でよく焼くだけだけど、当初はためらっていたイチガヤが今では夢中でがっついている。
「ヘビなんて生まれて初めて食ったけど、鶏肉みたいな味で結構うまいな! 正直食わず嫌いしてた」
「フッフッフ、山中とかじゃ貴重な栄養源だし、ここみたいに生息数の多い地域なら食べ放題よ」
レンジャー課程で得たサバイバル知識を活かし、2人の冒険者にヘビをご馳走する。
「フィオも食ってみろよ、マジでうまいからよ」
見れば、フィオーレはまだ少しヘビという食材に抵抗を感じているようだった。
進んで蛇を食べる者はかなり少ないので、まあ無理もないか。
「フィオーレ大丈夫? 無理なら別に食べなくても――――」
「よっ、余裕に決まってるじゃない! ヘビくらい食せないと冒険者なんかやってられないわ! 真ん中からかぶりついてやるんだから!!」
イチガヤへの対抗意識だろうか、塩を降ったフィオーレは有言実行。丸焼きのヘビをワイルドに噛み千切った。
「はむっ! あむっ......ッ!? ――――美味しい!」
喫茶店で纏っていたようなたおやかさを捨てた彼女は、ヘビの味を気に入ったようで、あっという間に完食してしまう。
「ふぅ......、ごちそうさまでした」
「いざ好みとなると速えなお前......、太るぞ?」
「はぁ? あんたってホントにデリカシーがないわね。これでも女の子なんだけど」
「リザードマンを吹っ飛ばすヤツが女の子たあ笑える! ちゃんと女の子扱いされたきゃもう少しおしとやかに――――って悪い悪い! 鞘で叩くな鞘で!」
この2人は仲が良いのか悪いのかわからない、話題を変えるべく、わたしは闇夜に溶ける巨大な古城を指さした。
「そういえばあの【古城ルナゲート】、中で出現するモンスターの系統はわかってるの?」
「ん? ああ、前に入ったパーティーいわくアンデッド系モンスターが多いんだとよ。さながらお化け屋敷だな」
鞘で叩かれた部分を抑えながら、イチガヤが感慨なく言う。
「お化けか~、クロエとか案外苦手そう」
「クロエって喫茶店にいた黒髪の娘《こ》よね? お化け苦手なんだ」
「確証は無いんだけどね......、なんとなく苦手そうだなーって」
クロエって性格はマイペースな元気っ娘だけど、ホラーとかはどうなんだろう。
案外フォルティシア中佐とかもそういうの苦手そう。
「なるほどねー、じゃあ髪の色と合わせてイチガヤと似てるんじゃない?」
「どういう意味だコラ、俺は別にお化けとかは怖がってねーよ。それよりヘビじゃイマイチ足んなくてよ~、なんかないかな?」
お腹空いたアピールをするイチガヤに、わたしはいくつかのとっておきを背嚢《はいのう》から出す。
「ねえティナ、それって?」
「戦闘糧食、レーションって呼ばれてる王国軍の支給品よ、定期的に支給される物で、一般には非売の軍用非常食なの」
「非売なのに良いのか?」
「売っちゃったら軍規に反するけど、譲るだけなら問題ないらしいわ」
興味津々のイチガヤが覗き込む。
「これが軍の糧食ってやつか......美味いのか?」
「ドライフルーツだから、結構美味しいわよ。栄養もあってどこでも食べられるし、わたしたち軍はすごく重宝してる」
説明を聞いたイチガヤが早速1つ口の中へほうり込んだ。
酸味と甘味が舌の上で弾けるそれに舌鼓を打ったイチガヤは、納得したように頷くと剣に松明をつがえて立ち上がった。
「おっ、イチガヤが先に見回り行ってくれるの?」
ここは街じゃない、どこで魔物が襲ってくるかわからないので、野宿する際は交代で見回るのが常識だ。
「こんなの渡された時点で察しくらいつくだろ、これつまみながらゆっくり見回って来るよ」
久しく悪戯っ子にも似た笑みを浮かべてしまった。
焚き火の傍で座るわたしとフィオーレを背に、イチガヤは湖の岸に沿って暗闇へと消えていった。
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