突如として小説を書く

ハルタ季秋

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はじまり

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 突如とつじょとして小説を書きたくなった。理由はほぼ無い。

 今は鉛筆えんぴつとか万年筆まんねんひつがなくとも、ノートパソコンが1台あれば小説しょうせつを書くには事足りる様になって、本当ほんとうにありがたい。修正しゅうせいらくだ。後は、文章ぶんしょうつづる者の文章力とか、ボキャブラリーとか、エンタメに昇華しょうかできるセンスとか……人生でつちったものや脳ミソのでき次第しだいで人に読んでもらえるものになるか……なのだろうか。

 初めはあまり深く考えないで執筆しっぴつしていきたい。立ち止まる事は得策とくさくと思えない。
 
 ー まずは書く ー

 それが、この指にたまった内なる要求ようきゅう発散はっさんする事になるのだと信じて。

 とはいえ、何を書いたら良いのかさえ考えずに踏み出してしまった。圧倒的あっとうてき見切みきり発射だ。書いているうちに何か壮大そうだい物語ものがたり脳内のうないめぐるのかと思っていたが、そんなことはまったく無く。どうしようもない虚無感きょむかんと共に、頭の中の遠くの空で飛ぶトンビがピーヒョロー鳴く声が、絶望ぜつぼうたずえておそってくるのである。

 小説という文章だけで、他人の脳内に自分の脳内のイメージを伝達でんたつできる創作活動そうさくかつどうは、かくもこんなに苦しいことだとあらためて思い知らされた。開始500文字で早くも心が折れそうだ。ここは、早くも方向転換ほうこうてんかんが求められているのかもしれない。

 小説とか創作とは、現実に起きた事件などを小説にする場合以外は、「こんなこといいな、できたらいいな」を形にするのものかな、とも思う。
 
 ー 今、非常ひじょうはな相手あいてが欲しい ー

 そもそも登場人物が『私一人』の小説が面白いわけもなく(一人だけの登場人物で人類滅亡後じんるいめつぼうごの世界を描く面白い話も沢山ありそうだけども、私にはまだ書けなそう)、ここは身の回りの世話をしてくれる助手的な人物がいて欲しい。
 
 歳は26ぐらいだろうか。髪は肩の上ぐらいのセミショート、身長は160cmぐらいで切れ長の目。体格は太っているわけでもやせせているわけでもなくちょうどいい体格の女性で……
 
「こんにちは、先生」

 そう呼びかけるちょっとハスキーで落ち着いた響きの声の……。名前は……

琴子ことこ君」

 私は幾分いくぶん緊張きんちょうした面持おももちで声を出した。

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