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ゴールデンウィーク お泊まり編

7日目 今も過去も愛せるように⑧

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携帯を開くとその中には様々なゲームのアプリ、そしてカメラやSNSがしっかりとフォルダ分けされて名前がつけられている。とても丁寧に整理されているその画面からは愛美さんの人柄が容易に想像ができた。
また、この画面を見ていくうちに、心の内側にいつも感じるあの懐かしさがふつふつと湧き上がってくる。

これが…愛美さんの…

画面をスクロールしていると、写真ホルダーとメモが同じところにフォルダ分けされている。
そのフォルダのタイトルは
「思い出とメッセージ」
しかも、わかりやすいように、そのページにはそのフォルダしか用意されていない。
また、数多くあったアプリやフォルダがないことで画面の背景に設定されていた写真が鮮明に見える。
その写真は様々な写真を切り取りくっつけてある小さなアルバムのような写真だった。
ほとんどは愛美さんと冬華さん2人の写真。2人とも笑顔だったり、各々のなんともないただの日常の写真だったりと、とても微笑ましいものばかりである。

「…素敵ですね」
「…全部懐かしい写真…私よ写真に入っている写真も数枚入ってるけどね。でも、しらない写真もあったし…泣きたくないから、たまにしか見返さないようにしてるけど何回みてもいい写真だと私も思う…。」
ボスッ
横に座った冬華さんが横から画面を見る。
冬華さんの表情を見ると
涙というより、思い出に浸るような
落ち着いた表情をしていた。

「あれ…でも…これって誰だろう…愛美さんの彼氏さん??」

背景の写真には所々に男の子の写真が混ざっている。
眼鏡をかけた全体的に髪の長い大人しめの男の子が弱々しくピースをしている写真がとても多い。
映りが良いものもあり、桜の木の下でおもむろに振り向いた彼の姿を映した1枚はとても美しい。
でも…何故こんな写真が…冬華さんの話だとそんな男の子を匂わせる話って…

「あ…それ…」

春樹くんだよ?

……………
…………
………
……
…え?
…え!?
僕!?!?

「え!?!?!?僕!?」
「うん。今はこの時と比べたら相当垢抜けてるし、かっこよくなたと思うけど…この時も可愛いから全然いいと思うんだけどねぇ…。」
「いやいや!違う違う!なんだ僕がこの写真に埋め込まれてるの!?」
「え…だって…愛美と最終的に仲良かったの私と春樹くんだったから…。」

「「…山崎…春樹…??…あ、愛美と話してた男の子か」」

冬華さんの話を思い出す。
…よく思い出せば…この男の子の正体簡単にわかったじゃん…なんで気づかなかったんだろう。

見た目が違うからじゃん。
めっちゃ違うからじゃん!!!
そんなの気づくはずないじゃん!!!

「僕…昔こんな見た目だったんだ…」
「卒業アルバムの時はほとんど今くらい垢抜けたもんね…そりゃ気づかないよ…」
「…僕、頑張ったんだ」
「頑張ったんじゃないかな…どんどん変わっていった思い出あるもん。」

過去の自分が何を思ってここまで変わったのだろうか。
また思い出したい記憶のひとつが増えてしまう。

「てか!写真も重要だけど!…メモ、メモ読まないの?」
「あ、そうですね!え…でも…冬華さんしか読んじゃダメなやつあるって言ってたじゃないですか…それって読んでいいんですか…?」
「…ダメ、それだけは読まないようにして欲しいの。」

ダメなのか…
多分愛美さんの心境が1番わかりやすく書かれているのが冬華さんへのメッセージなんだろうけど、それ分からないのはちょっと残念…

「…そんな可愛い顔してもダメ」
「え、僕可愛い顔してました?」
「どんな顔しても可愛いの…だから、残念そうな顔されたら見せたくなっちゃうでしょ!ダメだけど…」

🥺
僕は目をウルウルと涙具ませ、物欲しそうな表情で冬華さんを見つめる。
冬華さんは僕の表情を見ると同時に
うっ…
と、顔を抑えうずくまってしまう。

「ちょと!?大丈夫ですか!?」
「…ずるい…ずるい…ずるい…ずるい…………」
「……………冗談ですよ…多分、愛美さんも冬華さん以外に読まれたくないって思ってるはずですし」

うずくまる奥からボソボソと声が聞こえる。
…このまま押せばいけるとは思うど、悪ふざけは早めにやめとこう。

「…それじゃ…開いてみます。」
隣にあるアルバムも気になるが、僕はその好奇心を抑え、メモのアプリをタップする。

メモ欄の数は想像以上に多くの数があり、普段の生活でも使われていたのか、生姜焼きの作り方の手順や、友達のおすすめしてくれたコスメのブランド、気になるイベントの日程など…様々な種類のメモが残されていた。
しかし、その中に自然に紛れ込んでいる
「最後のメッセージ」
「いじめについて」
「ふーちゃんへ」
と、普段生活している日常では使われるはずのない言葉が混じっており、スクロールする指が止まる。
その文字を見た瞬間
さっきまで少しだけ明るくなった雰囲気は崩れて消えてしまったのを感じた。
冬華さんもいつの間にか起き上がっており、寂しそうな表情を浮かべ始める。

…よし、読むか。
僕はまず「最後のメッセージ」をタップし、愛美さんのそのままの言葉を読み進めた。
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