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第十二章《エデンの東》~東の果てで魔王と出会った者~

37 『サタン?!、それとも勘違い!?』(2)

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「いえ、我がキリスト教信者となれば、そしてその信仰をずっと保ち続ければその悪、その罪は許され――」そこでザビエルは一度大きく息を吸い――

「そう、その者達は救われます!」

(そしてそれは、お前、サタンが消え去る事を意味します)


「なるほど……、イエスへの信仰が人々を救うの、か……」

ザビエルの言葉を聞いた信長は、何故か声が震えている。


「はい」

(おっ、自らが消滅する運命を悟り、震えているのか?)


「であるか」そう言うと信長は、今度はザビエルの腕を素早く引っ張りあげると、「さっきは悪かったであるな」と、

立たせたザビエルの背中についた土埃つちぼこりをバンバンと叩いて払ってあげた。


「……。」いきなり態度が変わる信長に口をあんぐりしているザビエルに、

「実はお主に頼みたいことがあるのである」というその顔は――
今日ザビエルに見せたなかで一番真剣な顔であった。


「わ、私に頼みたいこと……ですか?」

(まさか、悪の霊力を高めるために、私の命をくれとでも言うのでは……)


「である、命を……」


「命を……」

(きたー!、ついにサタンがその残酷な正体を現す時が……)


「である、命を……救って欲しい者がいる、のである」


「命を……救って欲しい……者」

(……何を言っているんだこいつは!

人々の命を奪う事が目的のお前が、命を救って欲しいとは……

いや違う、救って欲しい命とは、魔王の劵族けんぞく、つまり配下の悪魔の命のことに違いない……

そしてそのために、私の命を奪いたいというのが、私の目の前に立つサタンの望み……)


「である、我が父親である、信秀の命を救って欲しい!!」


「えっ……」

(……。)




次回、父信秀の回復を願う信長に、ザビエルはある《秘跡》を授ける!
その秘跡とは……いったい?
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