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遠くへ行きたい…

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ただただ、歩きたい時がある。
僕の居場所を探して、
ただただ、歩きたい時がある。


「もーいーかい?」

「まーだだよ」

「……もーいーかい?!」

「……」


何も持たずに
自分の家を出て、
同級生が遊んでいるのを
横目にしながら歩く。


夕方、そろそろ寒くなってきた。
それでも、住宅の並ぶ
硬いアスファルトを歩き、
辿りつく所は、いつも川。


川の近くの雑草の生えた所に
体育座りになって、オレンジ色の景色と
冷たい風を感じながら、
ボーっと過ごす。


ただ、時々
この水で3分間、息を止めたら
死ねるのだろうか…。


…いや、きっと苦しい…。
なんて考える。


家から飛び降りたら、
死ねるのだろうか。


きっと、死ねずに生きた時が地獄だ…。


死ぬ手段を考えるのは止まらない。
止まってくれない。
だけど、怖いから実行しない。


「こんにちは」

「…こんにちは」

「最近、お天気がいいわね」

「うん…」


どこか知らないおばちゃんに
話しかけられるが、
僕は上手く答えられない。

学校でも、家でもそうだ。
すぐに上手く話せなくて、
その度にみんなの顔を曇らせてしまう。

こんな僕だから、
暗い僕だから、
ネガティブで周りを明るく出来ない僕だから、
周りを楽しくさせられない僕だから…



僕は、死んだ方がいいに決まってる。


「大丈夫?」

「うん…」


だからと言って、
死ねない僕は…




…生きてる価値なんて、どこにもない…。




「顔色悪いよ?お家帰れる?」

「大丈夫…だから…」


死ななくちゃ…。
僕は死ななくちゃ…。


その瞬間、僕は涙が止まらなくなってきた…。
惨めだ…。
泣くなんて、惨めだ。
喉がつまる…。


「あらあら、どうしたの?」


おばちゃんに顔を見られたくなくて、
体育座りで、顔をうずめた。


「どーしたの?」

「……大丈夫だから」


学校でも家でも必要とされない…。
暗い奴だと、遠巻きにされるだけ…。
でも…こんな僕でも…必要とされたかった…。


「無理せんで、今はいくらでも泣いてていいから、
おばちゃん後からお話聞くから、ね?」


そう言って、おばちゃんは
僕の背中をさすってくれた…。


温かい言葉と手が、
冷めきった僕の心を温めてくれた…。


その言葉に甘えて泣き続けた。

そして、泣きながら僕の言った言葉が、




「おばちゃん、僕…死にたい…」




自分はなんてネガティブな人間なんだろう…。
自分が嫌になる…。
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