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3.イルゼの婚約者

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 ジュディスが学園に入学して3ヶ月がたった。
 授業にもクラスメイトにも慣れて楽しく充実した学校生活を送っていた。

 特にアイリスとルーシーとは親友になって休日には街に遊びに行ったりお互いの家を行き来する仲になっていた。

 
 そんなジュディスがイルゼの婚約を知らされたのは夕食の席だった。
 お茶会に行った母親が噂話を聞いてきたのだ。

 「えぇ!イルゼ様が婚約したのですか?」

 「そうみたいよ。サマーズ夫人がそう言っていたわ。」

 「お相手はどなたなのですか?」

 「エドワード・ヘイズ侯爵令息だそうよ。」

 エドワード・ヘイズと聞いてジュディスはすぐに金色の髪に青い瞳の青年の顔が思い浮かんだ。
 
 エドワードはヘイズ侯爵家の次男でジュディスと同じ学校の3年生だ。
 成績優秀の上、校内の剣術大会で優勝するほどの体育会系だ。
 逞しい体に他の生徒より頭1つ分大きいのでイヤでも目立った。
 ジュディスの学年にもエドワードのファンの子達がいて剣術の練習場に見学に行ってはキャーキャー言っていた。

 「いつ決まったのですか?」
 
 「ごく最近だそうよ。
 エドワード様は侯爵家の令息とは言え次男で家を継げないでしょ。だからイルゼ様と結婚して婿養子になってルフェーブル伯爵家の当主になるそうよ。
 ヘイズ家としても願ってもない話だからトントン拍子で決まったんですって。」

 イルゼとエドワードの婚約を聞いてジュディスは頭を抱えた。

 (ジュディス様が婚約するなんて計算外だわ。
 どうしよう。私とアラン様の婚約破棄だけじゃすまなくなってしまったわ。)


 なんとかイルゼとエドワードの婚約をぶち壊す方法はないかと考えた。
 考えても良い案は浮かばないのでとりあえずエドワードの身辺を調べようと思った。
 もしもエドワードにも恋人がいたらなんとか説得して婚約破棄してもらえるかもしれないと思ったのだ。

 それからジュディスは毎日学校内でエドワードの後をつけた。
 しかしエドワードは足が早くていつもすぐに見失ってしまった。

 ある日いつものようにエドワードの後をつけているとエドワードが校舎裏のもう使われていない旧校舎に入っていくのが見えた。

 (こんな所に来るなんてきっと恋人とこっそり会うんだわ!)

 ジュディスも音を立てないように旧校舎に入った。

 慎重に歩を進める。暗くて周りがよく見えなかった。

 突然後ろに人の気配がしたと思ったらガッシリとした腕に羽交い締めにされて喉元にギラリと光る短剣が当てられた。

 「おい!最近俺をつけ回しているのは何の目的だ?」

 静かだが威圧感のある声だった。

 「正直に言わないと痛い目を見ることになるぞ。」

 ジュディスは喉元で光る短剣の恐怖で声を出すこともできずに腰を抜かし、ズルズルと床にへたり込んだ。

 「おい!大丈夫か?」

 短剣をしまいながらエドワードが言った。

 「お前は何者なんだ?
 俺は下級生の女子に後をつけ回される覚えはないぞ。
 お前の目的はなんだ?」

 ジュディスはこうなったら正直に話すことにした。

 「イルゼ様との婚約を破棄していただきたくてあなたのことを調べていました。」

 エドワードは虚を突かれたような顔になった。

 「なんだそれは?どういうことだ?
 お前はイルゼのなんなのだ?」

 「私はアラン様の婚約者です。
 イルゼ様にはアラン様と結婚していただきたいのです。」

 エドワードはますます訳がわからなくなった。
 
 「アランの婚約者がなぜイルゼとアランを結婚させようとするのだ?」

 「2人は幼い頃から愛し合っておられます。
 愛し合っているのに引き裂かれるなんてかわいそうです。
 愛し合う者同士が結ばれるべきです。
 どうか2人が結婚できるように協力してください。」

 エドワードは首をひねった。
 イルゼとアランは確かに仲が良い。しかし自分が見たところそれは兄妹のような仲の良さで恋愛感情は感じられなかった。

 「君の勘違いじゃないか?
 2人に恋愛感情があるとは思えないぞ。」

 「いえ!絶対に愛し合っておられます。
 6年も2人を見てきた私が言っているのだから間違いありません。」

 ジュディスは自信満々に言った。

 「アランに幸せになって欲しいなら君が幸せにしてやればいいだろう?」

 そう言われるとジュディスは少し悲しそうな顔になった。

 「私では無理なのです。
 私はアラン様に好かれていません。
 アラン様は私の前ではいつも不機嫌で笑顔を見せてくださることもありません。
 そんな私と結婚しても幸せではないでしょう?
 私はアラン様が大好きだから幸せになってほしいんです。」

 「好きな男が他の女性と結婚して平気なのか?」

 「アラン様が幸せなら隣にいるのが私でなくてもいいのです。」

 エドワードは納得できるような納得できないような不思議な気分だった。

 「君、まわりの人から変わっていると言われないか?」

 エドワードは思わず言ってしまった。

 「まさか。言われたことないですよ。」

 ジュディスは笑い飛ばしたが、エドワードはまわりの人間はこのトンチンカンな娘に苦労しているのではと思った。

 「君の言い分は分かった。
 でも貴族の婚約なんて家が絡む契約みたいなものだから私の一存で破棄はできない。
 特に今回はルフェーブル伯爵家の再興という大きな目的のある話だからちょっとやそっとじゃ覆らないだろうな。」

 「確かに・・・そうですよね。」

 エドワードはショボンとするジュディスがなんだか哀れに見えた。
 全く理解できないがジュディスがアランのために一生懸命なのだけは伝わったのだ。

 「まぁ、とにかく何かあった時は協力するよ。」

 「本当ですか?」

 ジュディスの顔がパッと明るくなった。

 「あぁ、約束する。」

 「よろしくお願いします!」

 ガバッと頭を下げた。

 「イルゼ様の婚約者がいい方で本当に良かったわ。」

 上機嫌でそんな事を言うジュディスを見てエドワードは

 (やっぱり変わった子だな・・・)

 と思った。
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