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8.ジュディスの誕生日 そして・・・

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 それからアランはボランティア部の活動に積極的に参加するようになった。
 なんとかジュディスと親しくなるチャンスを狙っていた。
 
 しかしいつも子供達に捕まって剣術の稽古に付き合わされ、ジュディスに話しかけるチャンスさえなかった。


 その日もアランは孤児院に来ていた。
 剣術指南をしながらなんだか子どもたちがソワソワして落ち着かないのを感じた。

 「みんな!集中して!」

 何度か子供達に注意した。

 
 おやつの時間になると突然子どもたちがバースデーソングを歌い出した。

 アイリスとルーシーが大きなケーキを運んできた。
 「ジュディス!お誕生日おめでとう!」

 ジュディスは何も知らなかったようで驚いていた。
 子供達は「おめでとう!」の大合唱の中、それぞれ描いたジュディスの絵をプレゼントした。

 「ありがとう!みんな!」

 ジュディスは感激して涙ぐんでいた。


 アランはジュディスの誕生日を忘れていたことに気まずさを感じた。
 そういえば何年もバースデーカードすら出したことがなかった。

 

 ケーキを食べ終わるとジュディスや女の子達は台所で皿洗いを始めた。
 アランは庭で子供達と剣術の稽古をしていた。

 台所の窓からジュディスと女の子たちの会話が聞こえてきた。
 

 「ねぇ、ジュディス。
 アイリスとルーシーは好きな人がいるのよね? 
 ジュディスは好きな人いないの?」

 「前は大好きな人がいたんだけどね。
 その人は私のことを好きじゃなかったんだ。
 だからあきらめたの。」

 ジュディスの言葉を聞いてアランはびっくりした。

 (それって俺のことか?ジュディスのことを好きじゃないなんて一言も言ったことないぞ!)

 「ジュディスはとってもかわいいのになんでその人はジュディスを好きにならなかったんだろう?」

 「ありがとう。でもね、人の気持ちはどうにもならないのよ。」

 「好きな人をあきらめるなんて悲しくなかった?」

 「そうね。悲しかったかもしれない。
 でもその人は私といる時はいつも不機嫌で笑顔を見せてくれることもなかったわ。
 私はその人を笑顔にしてあげられないのだからしょうがないと思ったわ。
 その人のことが大好きだから幸せになってほしいからあきらめたのよ。」

 アランはショックのあまり口を手で押さえた。
 押さえていないと叫んでしまいそうだった。

 (ジュディスがそんな事を考えていたなんて知らなかった・・・)

 後悔で胸が押しつぶされそうだった。


 子供達が台所から出ていくのが見えた。
 入れ違いにアランは台所に入っていった。

 「あら?アラン様。何か御用ですか?」

 「ジュディス!今まで悪かった!」

 突然アランが頭を下げた。
 
 ジュディスはびっくりした。 

 「アラン様?どうしたのですか?
 一体何のことですか?」 

 頭を上げたアランの目には涙があふれていた。 

 「ジュディス、6年も君をほったらかしにして本当に申し訳なかった。 
 俺は本当は君のことが大好きだったのに。 
 俺が一番大事にしなきゃいけなかったのは君だったのに。
 俺は君の気持ちも考えずないがしろにしてしまった。 
 俺は最低だ。」 

 アランの目から涙が落ちて床にシミを作った。

  ジュディスは驚いた。 

 アランが泣いたこともだが、自分のことが好きだと言ったことに驚いた。 
 
 でもあんなに大好きだったアランに好きと言われたのに心はまったく動かなかった。 
 
 自分の心はとっくにアランから離れていたんだなと気づいてしまった。

 
 泣いているアランになんと声をかけたらいいかわからなかった。

 「泣かないでください。もういいんです。」
 
 迷ったあげくただそう言った。



 しばらくして新学期が来てジュディスは2年生になった。
 学年が上がって変わったことがある。

 まずは急転直下でジュディスとアランは婚約破棄した。
 
 さすがに6年間もないがしろにされたことをジュディスの両親が重く見てバーンズ家に婚約破棄を申し出た。
 バーンズ伯爵夫妻はそんなことになっていたとは知らなかったと言って平謝りで婚約破棄に同意してくれた。
 アランは最後まで婚約破棄を拒否したが、最後はバーンズ伯爵に一喝されてしぶしぶ承諾した。

 2人の婚約は世間にはあまり知られていなかったので学校内でも騒がれることはなかった。
 ジュディスがアイリスとルーシーに事情をすべて話すと、2人はスイーツの美味しいお店に連れて行ってくれて『ジュディスを慰める会』を開いてくれた。
 
 
 その後のアランはまるで人が変わったように毎日ジュディスに手紙を送ってくるし、デートにも誘ってくる。
 
 ベネット夫人は「今さら何なのかしらね。」とあきれている。

 ジュディスは相変わらずボランティア部の活動が忙しいのでデートする暇もないのだが。

 それでもアランは毎朝学校の車寄せでジュディスを待っていて、車寄せからジュディスの教室まで送ってくれる。
 短い時間だけどアランとジュディスは毎日話をするようになった。
 婚約破棄した途端にこんなに話すようになるなんておかしな話だなとジュディスは思った。

 そして孤児院の剣術指南は卒業したエドワードから引き継いでアランがやってくれることになった。
 無愛想なアランで大丈夫かと心配したが子供達からは不思議と懐かれて上手くやっている。

 

 アランはいつもジュディスに言う。
 
 「君の心が俺から離れてしまったとしても、俺は絶対にもう一度君を好きにならせてみせるよ。何年かかってもね。」 

 そこまで思ってくれるのはうれしいがジュディスは複雑な思いだ。

 「私がもう一度あなたを好きになる保証はありませんよ。
 何年も待たせたあげく『やっぱりあなたを好きになりませんでした。他の人と結婚します。』ってことになるかも。」

 と、正直に自分の気持ちを話した。

 「それでもいい。結果として俺のことを好きにならなくてもいいから君を好きでいさせてくれないか?」

 アランがそう言うので今はアランの好きにしてもらっている。



 私がもう一度アランを好きになることはあるのだろうか。

 自分でもわからない。

 でも私たちが本当に運命の相手ならきっと近い未来私はもう一度アランに恋をするだろう。

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感想 2

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みんなの感想(2件)

あんころもち

個人的には続きが読みたいです、こんな良い子を放っておくなんてアラン許すまじ。
ジュディス母がズバッ!とぶった切ってたので溜飲は下がりましたが、性格悪い私はアランに玉砕してほしいところです。


2026.01.19 透明

ご感想ありがとうございます。

解除
篠宮
2026.01.19 篠宮
ネタバレ含む
2026.01.19 透明

ご感想ありがとうございます。

解除

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