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14.夢見る人達と働き者、それぞれの朝
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上手くマッケナを丸め込めなかったどころか崖っぷちに立たされたユージーンは国王への報告を先延ばしにして自分の屋敷に逃げ込んだ。侯爵家から毟り取った金で飾り立てた屋敷はウォルデン侯爵の屋敷を見た後では下品な紛い物の寄せ集めにしか見えず、ユージーンはますます不機嫌になり着替えを手伝いにやってきた従者に当たり散らした。
「この役立たずが! さっさと着替えを持って来い!」
当たり前のように蹴りを入れ蹲った使用人を踏みつける。
(マッケナが言う事を聞かなかったなんて真面に報告したら陛下に殺される。・・そうだ! マッケナは情報を教えれば俺を助けてくれると言ったんだよな。・・そうだ。それなら時間稼ぎをしておきさえすればマッケナが勝手に終わらせてくれるんじゃないか?)
すっかり気の晴れたユージーンは風呂に入り食堂へ行ったが出てきた料理を見て眉間に皺を寄せた。溜め息を吐きながら渋々口をつけたユージーンはメイドにフォークを投げつけた。
「何だこの料理は!? こんな粗末な・・クソ不味い物を俺に食えと言うのか!!」
(ウォルデン侯爵家で晩飯食ってくるんだったな)
翌日のんびりと朝寝をしていたユージーンの元に国王からの呼び出しがきた。ユージーンがどうやって時間稼ぎするか考えながら登城すると、話し合いが上手くいったと信じ切っている国王達が大量の料理を前に満面の笑みを浮かべていた。
「其方も朝はまだ食べておらんのだろう? 一緒に食べるが良い」
「ありがとうございます。では失礼して」
愛想笑いを浮かべて席についたユージーンはフォークを手に溜め息を飲み込んだ。
(はあ、朝と言うかもう昼だろ。しかもこんな油ギトギトの料理食えるかよ。マッケナのトコなら・・まあ、しばらくの我慢だな。マッケナが機嫌を直したら侯爵家に暫く居座って・・・・)
ユージーンがボケーっと叶うはずのない侯爵家の朝食を夢見ていると国王が話しかけてきた。
「彼奴はいつ迄に払うと言っておった?」
「は? あー、それについては少し時間を置いた方が良さそうです」
「どう言う事だ? 大口を叩いておきながら上手くいかなかったと言うのではあるまいな」
「今回は何というか・・1人娘の事ですから今までと違って少し時間がかかりそうです。グレイソン王子に婚約破棄されてしまってルーナは傷物令嬢になりましたからね、あんな父親でも思うところがあるようで少し機嫌を損ねてまして」
「ルーナなんてサッサと修道院へ入れてしまえば良いのですわ。あんな可愛げのない娘なんてどうせ行き遅れてしまうのに」
礼儀作法に疎い王妃はふんっと鼻を鳴らして口元を歪めフォークを分厚いハムに突き刺した。
「少し位なら猶予を与えてやっても良いが・・いや、余の言葉に直ぐに従わないなら慰謝料は増額せねばならんな。奴が増長するような前例を作ってはいかん」
昼前の朝食にも関わらず大量のワインを飲んでいる国王の顔は既に赤くなり口元が油でぎらついている。
「その通りですわ。先月の夜会でルーナがこれ見よがしにつけていた髪飾り・・あんな子に無駄なお金をかける余裕がウォルデン侯爵家にはあるようですからね。取り敢えずあの娘の宝石は全部差し出させましょう」
髪飾りが気に入り夜会の翌日ルーナから取り上げようとして失敗したのを根に持っている王妃は欲望でギラギラと目を光らせナイフを振り回していた。
(あー、サッサとマッケナんとこで飯を食いたい。昨日乗った馬車もスプリングが効いていて・・貰うか? いや、上手く頼めば新しいやつを作ってもらえるよな。そん時は・・)
愚か者達が三者三様の夢を見て下品な笑いを浮かべていたちょうどその頃・・。
王宮に登城する為に宰相が自室で着替えをしていると真っ青な顔で執事が部屋に飛び込んできた。
「旦那様、先触れもなくやって来たウォルデン侯爵が大勢の男達を引き連れて乗り込んで参りまして、今から家財を運び出すと申しておられます!」
鏡の前で従者に結ばせていたクラバットを引き抜き慌てふためく執事を連れて宰相が階段を駆け降りると、玄関ホールでは20人近い男達が腕まくりして片眼鏡を掛けた1人の男の指示を受けていた。
「貴様! 何をしている!! これは一体どう言う事だ!!」
「登城前の宰相殿にお会いできて良かった。今朝は借金の返済をお願いしようと思いましてな」
「貴様に金など借りておらん! しかもこんな大人数で押しかけるなど言語道断。マナーも知らん田舎者が、恥を知れ!!」
真っ赤な顔で喚く宰相にマッケナは手に持っていた借用書を見せチャーター家の執事に手渡した。執事から手渡された借用書は間違いなく宰相が債務者となっており、債権者の名前はウォルデン侯爵となっていた。
「宰相が借金をしていた金貸し達が返済がなく困っていると当家に助けを求めて来たので「まっ、待て! こんな所で話すことではない。応接室で話す。ついて参れ」」
急ぎ足で応接室に向かう宰相の後ろをマッケナが悠々とついて行った。その後ろでお茶を出すべきか悩んだ執事がオロオロと手を揉んでいるのに気付いたジョージが声をかけた。
「ご当主が執事殿には声をお掛けになると思いますが、我が主にはもてなしは不要なのでお気遣いなく。連れてきた者達は仕事が終わるまでここで待たせて頂きます」
穏やかな表情で優雅に会釈したジョージは颯爽とマッケナの後に続いた。
応接室のソファに腰掛けた宰相は青筋を立てて一枚ずつ確認した借用書を握りしめた。
「お渡ししたのは借用書の控えなので何度でも破っていただいて結構。どの借用書も期限が過ぎておりますので今日は即金でお支払い頂きたいと」
「待て、こんな・・こんな大金・・簡単に払えるわけがなかろう」
「この役立たずが! さっさと着替えを持って来い!」
当たり前のように蹴りを入れ蹲った使用人を踏みつける。
(マッケナが言う事を聞かなかったなんて真面に報告したら陛下に殺される。・・そうだ! マッケナは情報を教えれば俺を助けてくれると言ったんだよな。・・そうだ。それなら時間稼ぎをしておきさえすればマッケナが勝手に終わらせてくれるんじゃないか?)
すっかり気の晴れたユージーンは風呂に入り食堂へ行ったが出てきた料理を見て眉間に皺を寄せた。溜め息を吐きながら渋々口をつけたユージーンはメイドにフォークを投げつけた。
「何だこの料理は!? こんな粗末な・・クソ不味い物を俺に食えと言うのか!!」
(ウォルデン侯爵家で晩飯食ってくるんだったな)
翌日のんびりと朝寝をしていたユージーンの元に国王からの呼び出しがきた。ユージーンがどうやって時間稼ぎするか考えながら登城すると、話し合いが上手くいったと信じ切っている国王達が大量の料理を前に満面の笑みを浮かべていた。
「其方も朝はまだ食べておらんのだろう? 一緒に食べるが良い」
「ありがとうございます。では失礼して」
愛想笑いを浮かべて席についたユージーンはフォークを手に溜め息を飲み込んだ。
(はあ、朝と言うかもう昼だろ。しかもこんな油ギトギトの料理食えるかよ。マッケナのトコなら・・まあ、しばらくの我慢だな。マッケナが機嫌を直したら侯爵家に暫く居座って・・・・)
ユージーンがボケーっと叶うはずのない侯爵家の朝食を夢見ていると国王が話しかけてきた。
「彼奴はいつ迄に払うと言っておった?」
「は? あー、それについては少し時間を置いた方が良さそうです」
「どう言う事だ? 大口を叩いておきながら上手くいかなかったと言うのではあるまいな」
「今回は何というか・・1人娘の事ですから今までと違って少し時間がかかりそうです。グレイソン王子に婚約破棄されてしまってルーナは傷物令嬢になりましたからね、あんな父親でも思うところがあるようで少し機嫌を損ねてまして」
「ルーナなんてサッサと修道院へ入れてしまえば良いのですわ。あんな可愛げのない娘なんてどうせ行き遅れてしまうのに」
礼儀作法に疎い王妃はふんっと鼻を鳴らして口元を歪めフォークを分厚いハムに突き刺した。
「少し位なら猶予を与えてやっても良いが・・いや、余の言葉に直ぐに従わないなら慰謝料は増額せねばならんな。奴が増長するような前例を作ってはいかん」
昼前の朝食にも関わらず大量のワインを飲んでいる国王の顔は既に赤くなり口元が油でぎらついている。
「その通りですわ。先月の夜会でルーナがこれ見よがしにつけていた髪飾り・・あんな子に無駄なお金をかける余裕がウォルデン侯爵家にはあるようですからね。取り敢えずあの娘の宝石は全部差し出させましょう」
髪飾りが気に入り夜会の翌日ルーナから取り上げようとして失敗したのを根に持っている王妃は欲望でギラギラと目を光らせナイフを振り回していた。
(あー、サッサとマッケナんとこで飯を食いたい。昨日乗った馬車もスプリングが効いていて・・貰うか? いや、上手く頼めば新しいやつを作ってもらえるよな。そん時は・・)
愚か者達が三者三様の夢を見て下品な笑いを浮かべていたちょうどその頃・・。
王宮に登城する為に宰相が自室で着替えをしていると真っ青な顔で執事が部屋に飛び込んできた。
「旦那様、先触れもなくやって来たウォルデン侯爵が大勢の男達を引き連れて乗り込んで参りまして、今から家財を運び出すと申しておられます!」
鏡の前で従者に結ばせていたクラバットを引き抜き慌てふためく執事を連れて宰相が階段を駆け降りると、玄関ホールでは20人近い男達が腕まくりして片眼鏡を掛けた1人の男の指示を受けていた。
「貴様! 何をしている!! これは一体どう言う事だ!!」
「登城前の宰相殿にお会いできて良かった。今朝は借金の返済をお願いしようと思いましてな」
「貴様に金など借りておらん! しかもこんな大人数で押しかけるなど言語道断。マナーも知らん田舎者が、恥を知れ!!」
真っ赤な顔で喚く宰相にマッケナは手に持っていた借用書を見せチャーター家の執事に手渡した。執事から手渡された借用書は間違いなく宰相が債務者となっており、債権者の名前はウォルデン侯爵となっていた。
「宰相が借金をしていた金貸し達が返済がなく困っていると当家に助けを求めて来たので「まっ、待て! こんな所で話すことではない。応接室で話す。ついて参れ」」
急ぎ足で応接室に向かう宰相の後ろをマッケナが悠々とついて行った。その後ろでお茶を出すべきか悩んだ執事がオロオロと手を揉んでいるのに気付いたジョージが声をかけた。
「ご当主が執事殿には声をお掛けになると思いますが、我が主にはもてなしは不要なのでお気遣いなく。連れてきた者達は仕事が終わるまでここで待たせて頂きます」
穏やかな表情で優雅に会釈したジョージは颯爽とマッケナの後に続いた。
応接室のソファに腰掛けた宰相は青筋を立てて一枚ずつ確認した借用書を握りしめた。
「お渡ししたのは借用書の控えなので何度でも破っていただいて結構。どの借用書も期限が過ぎておりますので今日は即金でお支払い頂きたいと」
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