【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね

との

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20.トゥールの支店を選ぶなんて

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 青褪めた顔のロジャーが『悪魔だ、魔王降臨・・』とブツブツ呟きながら従業員用宿舎に帰って行った。

 夕方まで鑑定を続けられたおかげで、アーロンと約束した期日までに間に合いそうな様子になった。

 アリスはそのまま明日の朝までお休みにしたので、ルーシーは別のメイドミリーに手伝ってもらって湯浴みと着替えを済ませた。


 夕食の時間までは、整理してもらった請求書などのチェック。


(思ったより不足分が少なくて助かったわ)


 ドアがノックされミリーがお茶と手紙を持って入ってきた。


「マルフォー邸から手紙? リチャード・・ではないわね。あら、ミセス・ブラックリーだわ」


 手紙にはルーシーへの感謝の言葉と共に重要な情報が書かれていた。


(トゥールに荷受表・・すごく有難いけど、無茶しないで)


 実はマルフォー邸から荷物を運び出す時、ルーシーは食品庫の中身や食材の殆どを置いてきた。

「リチャードにはないって言ってね、これはあなた達へ私からのお礼のつもり。直ぐに足りないものが出てくるとは思うんだけど・・」

「これだけあれば暫くはやっていけると思います。先日小麦やら何やら沢山購入されたのはこのせいでございましたか。
明日の朝一番で料理長やメイド達全員に徹底致します」


「リチャードは食品庫を覗きに来ないと思うけど、お義母様がいらっしゃったら絶対見に来られると思うの」

「はい、それ迄に出来る限り移動させておきます」





 ヒューゴが帰って来たのでルーシーは食堂に行った。
 メイド達がワインや料理を次々と運んできた。

 今日の料理はうなぎのパテとブーダン赤ソーセージ、うさぎのシチュー、焼いてマスタードを添えた山うずら、米や野菜を詰めた焼魚、花梨の実のサラダまであった。


「なんだこりゃあ、祝いか?」

「ルーシー様が戻られたので料理長が張り切りすぎてしまいまして」


 執事のグレイソンが嬉しそうにワインをテーブルに置いた。


「ルーシーの好物ばかりか・・。しかし王侯貴族みたいな品数だな。お前らも食えよ」

「はい、遠慮なく頂きます。宿舎の方にも届けましたので、今頃大騒ぎだと思います」

「明日は普段の三倍働かせてやるって言っといてくれ」


 ワインで乾杯し目移りしそうな程の品数の料理を楽しむ二人。




「トゥールねぇ、奴等は余程自滅したいらしいな。人を罠に嵌めたいんだったら少しは調査をするもんだろ」


 トゥールの港は二年前から王家直轄の港になっている。王家保有の船舶以外の停泊は基本的には認めておらず、やむを得ず使用する場合は法外な入港料と他の港より高い関税が課せられる。


「ニ年前からは一度も使ってないけど、日付けがそれ以前だったら?」

「トゥールを選ぶような奴ならまあ問題はないだろ。荷受表の日付けと出入りした船を一応調べとくか。
そっちはどうだ?」


「ロジャーのお陰で鑑定はかなり順調。その他の資料も思ったより揃ってる」

「昨日、名誉毀損で訴状を出すよう頼んできた。今日辺りマルフォーは又怒鳴りまくってるだろう。訴えたらこっちが下手に出ると思ってただろうからな」

「火に油を注いだって?」

「その通り! 散々ルーシーを虐めた奴らにはとことん嫌な思いをさせてやる」



 意気揚々とグラスを掲げるヒューゴを見ながら苦笑いするルーシーだった。

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