【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

との

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1.レトビアの荊姫

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「宴に呼ばれなかった魔女はたまたま運が悪かった? それとも悪い魔女だった? どちらだと思う?」

「私的には悪い魔女説の方かなあ。だって、王家にお皿が12枚しかないなんてあり得ないし、選ばれない13番目になったのは日頃から意地悪ばかりしていたとかの方がお皿が足りないって言うよりしっくりくるわね。
急に童話なんて何かあったの?」

「⋯⋯そう思うわよね。じゃあ紡錘糸車の針で眠りについた荊姫は?」

「その魔女だけを宴に呼ばないって決めたのは王様かお妃様だから、荊姫は単に運が悪かったんじゃないかしら」

「運か⋯⋯だよね。はぁ」


 セアラ・ホプキンス伯爵令嬢は手に持ったカップの中を覗き込んだままで、久しぶりに会った友人のイリス・ラーニア子爵令嬢の意見に溜息をついた。

「いつも元気いっぱいのセアラが溜息をつくなんてどうしたの? 幼馴染のイリス様に相談してごらんなさいな」

 心ここに在らずといった様子のセアラを心配したイリスは冗談めかして話を促した。

 セアラとイリスは共に14歳。旅行から帰ってきた母親のお土産を手にやって来たイリスは、セアラの部屋で二人仲良く紅茶とお土産のお菓子をぱくつく予定だったが妙に元気のないセアラを心配して顔を顰めた。


「貧乏貴族の次女ってやっぱりいらない子なのかしら」



 セアラは昨夜の父親との会話を話しはじめた。

『レトビア公爵が資金援助する代わりにお前を養女に欲しいと仰って下さったんだ』

『借金の代わりに私を差し出すと言う事ですか?』

『まあそう言う言い方も⋯⋯。いや、その、セアラには申し訳ないが我が家がもうどうにもならないことは知っているだろ? 今回の話はお前にとっても良いこと尽くめなんだ。
公爵家の令嬢として籍を入れて学園にも通わせてくださるそうなんだ』

『学園に通えるのはとても嬉しいですけれどレトビア公爵家となると⋯⋯。年齢からして次女になるのでしょうか?』

 セアラの祖父、先代のホプキンス伯爵は美術品や骨董品の蒐集家だった。そのお陰で伯爵家の財政が傾いても『必要になれば売れば良い』と言い続けて蒐集をやめず亡くなった。
 祖父亡き後調べてみると蒐集品の殆どが贋物だった所為で借金の返済に追われるホプキンス伯爵家では来年度から入学予定のセアラの学費が払える見込みがたっていない。

『いや、長女のメリッサ様は近々侯爵家へ輿入れされることが決まったんだ。だから扱いは長女という事になるそうだ』

『⋯⋯つまり、お父様は私を【呪われしレトビアの長女】になさるおつもりですの?』

『あんなものは迷信に決まってる。今時魔女の呪いだなんて有り得ないよ』

『では何故養女が必要なのでしょうか? メリッサ様が嫁がれた後、妹のアメリア様が長女の立ち位置になられるのを嫌がっておられるから養女が必要なのではありませんか?』

『そんなわけないさ。それにメリッサ様はご結婚された後もレトビア公爵家の長女である事は変わらないんだから』

(お父様はご存じないんだわ)



 レトビア公爵家の呪いはこの国の建国時に遡る。サルドニア帝国からの独立を目指した戦いの最中、当時は侯爵だったレトビア家の嫡男を筆頭にした一団が前線近くに建つイーバリス神殿の宝物庫を奇襲した。抵抗する神官や聖女を皆殺しにして全ての宝物を盗み出し、その収益を現在の王家に差し出した事で戦況は一変し独立を果たしたと言われている。

 その功を讃え公爵に陞爵したレトビア家だったが独立記念の宴の夜、黒いベールを着た戦乙女ディースがレトビア公爵の前に現れた。

“未来永劫レトビア家の長女は18の歳に、紡錘の針で命を落とすであろう”


 殺された聖女の代わりに連れ去るのではないかと言われ、紡錘の針と言う文言から、

 【レトビアの
 【呪われしレトビアの長女】

と呼ばれるようになった。

 崩壊した神殿には今でも夜な夜な殺された神官や聖女が現れ、失われた宝物を探している姿が見受けられると言われている。


『紡錘の針だなんて御伽噺そのままじゃないか。馬鹿馬鹿しい。そんなことを心配する必要なんかないよ』

『錘は神々の貢物としてもささげられるほど神聖なものだと言われていますわ。呪いのアイテムとしては最適だって』

『あれはレトビア公爵家へのやっかみだって。あんまり気持ちのいい話じゃないのはわかるが、心配しなくても大丈夫だよ。実際に亡くなった方はおられないと仰っておられたしね』

『それは、レトビア公爵家では女の子が誕生すると18歳になるまでに結婚させるか養女に出しておられるからではないのですか?』

『本気で心配しておられるならアメリア様を養女に出されているはずだろ?』

『レトビア公爵家はメリッサ様かアメリア様が継がなくてはならないのです。メリッサ様が他家に嫁がれるならアメリア様を養子には出せないんです。
お父様は私が死んでも良いのですか? このお話でレトビア公爵家にどんなメリットがあるのかもっとよくお考えになって下さい』

 レトビア現公爵には娘しか生まれなかった。長女が結婚して家を出た今、次女のアメリアが後を継ぐ事になる。

サイラスレトビア公爵と私は古くからの友人だから手を差し伸べてくださったんだ。呪いなんて信じてないでもっと建設的な事を考えなさい。
百歩譲って、少しでもおかしな事があったら直ぐに戻って来ればいい』

 
 現実主義者のイーサンセアラの父は目の前の督促状を手に取りながらセアラに退出を促した。

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