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58.ルクセル侯爵家
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「社交界に知られるだけで命とりになるような秘密をアメリアのような人に話さざるを得ない状況はなんだろうと考えたんです。
アメリアも姉のメリッサも公爵もかなりの贅沢好きだと聞いています。我慢ができない上に誰よりもプライドが高い。
公爵家に財政上の問題があっても我慢できるような人たちではない気がします。
公爵は、贅沢なアクセサリーを買いたいと癇癪を起こすアメリアに神殿の宝物を使わせれば一時凌ぎになると考えたのではないかと。
贅沢な買い物ができるだけの余裕があれば神殿の宝物は金庫から出てこないはずです」
セアラの話に唖然としたアリエノールとウルリカは言葉を詰まらせた。今まで漠然とした疑問だったことが全てクリアになっていく。セアラの話には齟齬も曖昧な点もなく全てがあるべきところに収まっているようにみえた。
「以前、何度か公爵家に支援したと陛下が仰っておられたわ」
「先日の夜会でチラッと耳にしたのですが、娘にあんな豪華なドレスやアクセサリーを準備できるのに支援金を減らされたと不平を漏らしていた貴族の方がおられました」
「⋯⋯セアラ嬢、公爵家との養子縁組が破棄されたのちルクセル侯爵家と養子縁組して頂けませんか?」
「は? あの、ご心配頂きありがとうございます。お気持ちはありがたいのですが」
「ホプキンス伯爵家の支援を含めてルクセル侯爵家でセアラ嬢を引き受けたい⋯⋯いえ、我が家にお迎えしたいのです」
「今後のことを考えてみたのですが、わたくしがホプキンス家に戻っても問題はないのではないかと思うのです。最終段階まで準備できておりますし、アメリアを落とすだけならわたくしはいなくても」
「お父様は内務大臣でお祖父様は侍従長ですが、本業は王家の下での情報収集や情報操作と王家の影の管理育成です。
セアラ様の事は既に話し合っておりまして、全員一致で是非我が家へと希望しています。勧誘と条件の交渉や最終決定権はわたくしが一任されております」
「そのような機密情報をわたくしなどに仰ってよろしいのですか?」
「構わないわ。ウルリカが言いたい事は既に聞いているし、わたくしは諸手を挙げて賛成してるの。もし断るならわたくしのところは来てもらう予定」
「セアラ様と今回の件で関わりを持つようになって以来考えていたのですが先程のお話をお聞きして確信しました。同年代でわたくしの情報分析を超えた方に初めてお会いしました。当家にその能力をお貸し下さい。ホプキンス家への支援は支度金とでも思っていただけたらと思います」
「断っても良いのよ。わたくしとしてはその方が「アリエノール様、お約束を覚えておられますか? ルクセル侯爵家が先に交渉すると」」
「お二方からそのように言っていただくほどの力など⋯⋯ありがたいお申し出ではありますけれど、わたくしなどではお役に立てるとは思えません」
「自己評価が低すぎるわ。謙虚というのは美徳だけれど、セアラの場合は謙虚すぎて問題ありね」
(王家の影も管理育成する侯爵家のお役になんて)
「わたくしは自分に降りかかった火の粉を払おうと足掻いているだけの、ただの田舎者ですから」
「では、ホプキンス家への支援金はわたくしの個人資産から出します。学園にはセアラ・ホプキンス伯爵令嬢として通いなさい。
今後ルクセル侯爵家に養女になるならば支援金についてはルクセル侯爵家とわたくしが話し合います。
これは決定であり異議は認めません」
アリエノールが王女らしい毅然とした態度で宣言した。
這う這うの体で逃げ出すように部屋に戻ったセアラは混乱状態から抜け出せずにいた。
(レトビア公爵家からルクセル侯爵家へ? とんでもないお仕事への勧誘とかアリエノール様の個人資産で支援とか⋯⋯もう、頭が壊れそう)
翌日、教室に足を踏み入れたセアラとルークの前に久しぶりにシャーロット達が立ち塞がった。
「あら、退学されたのではありませんの? 荷物を纏めに来られたとか?」
ガタンと音がしてイリスが立ち上がった気配がした。
「どこでお聞きになられたお話か存じませんが退学など致しませんわ」
「レトビア公爵様に見限られたのでしょう? この学園は貴族専用ですのよ」
「近々ホプキンス伯爵家に戻りますので、手続きが終わった後はセアラ・ホプキンスになるだけですの」
「ホプキンス家では授業料など払えないのでしょう? 公爵家の支援がなくては立ち行かないと聞いておりますわ。平民になられるなんて大変ですわねぇ」
「今のところ平民になる予定はございませんし、ホプキンス伯爵家も問題ありませんの」
これ以上話すことはないとばかりに、にっこり微笑んだセアラはさっさと席についた。
「セアラ?」
「イリス、今日はお昼を一緒に食べない? 生徒会の方には許可をいただいているから。ルークももし良ければと思うのだけどどうかしら?」
「ええ、勿論」
「楽しみにしてる」
久しぶりに食堂の中二階にある生徒会専用エリアにやって来た。
「わあ、私も良いの?」
「勿論よ。アリエノール様に許可は頂いたの。周りが聞き耳立ててるから中々話せないでしょ? ここなら大声を出さない限り大丈夫」
ここを利用するのはまだ2回目。初めてアリエノールに呼び出されてから随分色々な事があったと感慨深く周りを見回した。
「じゃあ、本当にセアラ・ホプキンスに戻れるのね」
「ええ、レトビア公爵家とは縁が切れるから【レトビアの荊姫】じゃなくなるわ」
「良かったぁ。正直言うと以前は呪いがあるかどうか半々な気持ちだったの。でももしあったら恐ろしいし、友達の命がかかってるのに運任せみたいなのは嫌だからなんとかしたいって思ってた。
でも、あの教会巡りをしてて思ったの、もしかしたらホントなんじゃないかって。だから本当によかった~」
「呪いのあるなしはよくわからんが、公爵やアメリアと縁が切れたのは良かったと思う」
「でもアリエノール様って格好良いわぁ。正に王女様の中の王女様ね。リチャード王子殿下もきっと喜んでおられるわよ」
「ええ、昨日は気持ちが落ち着かなくて少しご心配をおかけしたから」
「えー、そう言うことじゃなくて。ご本人がいらっしゃる前で聞くのはアレなんだけど、セアラはリチャード王子殿下とルーク様のどっちなの?」
アメリアも姉のメリッサも公爵もかなりの贅沢好きだと聞いています。我慢ができない上に誰よりもプライドが高い。
公爵家に財政上の問題があっても我慢できるような人たちではない気がします。
公爵は、贅沢なアクセサリーを買いたいと癇癪を起こすアメリアに神殿の宝物を使わせれば一時凌ぎになると考えたのではないかと。
贅沢な買い物ができるだけの余裕があれば神殿の宝物は金庫から出てこないはずです」
セアラの話に唖然としたアリエノールとウルリカは言葉を詰まらせた。今まで漠然とした疑問だったことが全てクリアになっていく。セアラの話には齟齬も曖昧な点もなく全てがあるべきところに収まっているようにみえた。
「以前、何度か公爵家に支援したと陛下が仰っておられたわ」
「先日の夜会でチラッと耳にしたのですが、娘にあんな豪華なドレスやアクセサリーを準備できるのに支援金を減らされたと不平を漏らしていた貴族の方がおられました」
「⋯⋯セアラ嬢、公爵家との養子縁組が破棄されたのちルクセル侯爵家と養子縁組して頂けませんか?」
「は? あの、ご心配頂きありがとうございます。お気持ちはありがたいのですが」
「ホプキンス伯爵家の支援を含めてルクセル侯爵家でセアラ嬢を引き受けたい⋯⋯いえ、我が家にお迎えしたいのです」
「今後のことを考えてみたのですが、わたくしがホプキンス家に戻っても問題はないのではないかと思うのです。最終段階まで準備できておりますし、アメリアを落とすだけならわたくしはいなくても」
「お父様は内務大臣でお祖父様は侍従長ですが、本業は王家の下での情報収集や情報操作と王家の影の管理育成です。
セアラ様の事は既に話し合っておりまして、全員一致で是非我が家へと希望しています。勧誘と条件の交渉や最終決定権はわたくしが一任されております」
「そのような機密情報をわたくしなどに仰ってよろしいのですか?」
「構わないわ。ウルリカが言いたい事は既に聞いているし、わたくしは諸手を挙げて賛成してるの。もし断るならわたくしのところは来てもらう予定」
「セアラ様と今回の件で関わりを持つようになって以来考えていたのですが先程のお話をお聞きして確信しました。同年代でわたくしの情報分析を超えた方に初めてお会いしました。当家にその能力をお貸し下さい。ホプキンス家への支援は支度金とでも思っていただけたらと思います」
「断っても良いのよ。わたくしとしてはその方が「アリエノール様、お約束を覚えておられますか? ルクセル侯爵家が先に交渉すると」」
「お二方からそのように言っていただくほどの力など⋯⋯ありがたいお申し出ではありますけれど、わたくしなどではお役に立てるとは思えません」
「自己評価が低すぎるわ。謙虚というのは美徳だけれど、セアラの場合は謙虚すぎて問題ありね」
(王家の影も管理育成する侯爵家のお役になんて)
「わたくしは自分に降りかかった火の粉を払おうと足掻いているだけの、ただの田舎者ですから」
「では、ホプキンス家への支援金はわたくしの個人資産から出します。学園にはセアラ・ホプキンス伯爵令嬢として通いなさい。
今後ルクセル侯爵家に養女になるならば支援金についてはルクセル侯爵家とわたくしが話し合います。
これは決定であり異議は認めません」
アリエノールが王女らしい毅然とした態度で宣言した。
這う這うの体で逃げ出すように部屋に戻ったセアラは混乱状態から抜け出せずにいた。
(レトビア公爵家からルクセル侯爵家へ? とんでもないお仕事への勧誘とかアリエノール様の個人資産で支援とか⋯⋯もう、頭が壊れそう)
翌日、教室に足を踏み入れたセアラとルークの前に久しぶりにシャーロット達が立ち塞がった。
「あら、退学されたのではありませんの? 荷物を纏めに来られたとか?」
ガタンと音がしてイリスが立ち上がった気配がした。
「どこでお聞きになられたお話か存じませんが退学など致しませんわ」
「レトビア公爵様に見限られたのでしょう? この学園は貴族専用ですのよ」
「近々ホプキンス伯爵家に戻りますので、手続きが終わった後はセアラ・ホプキンスになるだけですの」
「ホプキンス家では授業料など払えないのでしょう? 公爵家の支援がなくては立ち行かないと聞いておりますわ。平民になられるなんて大変ですわねぇ」
「今のところ平民になる予定はございませんし、ホプキンス伯爵家も問題ありませんの」
これ以上話すことはないとばかりに、にっこり微笑んだセアラはさっさと席についた。
「セアラ?」
「イリス、今日はお昼を一緒に食べない? 生徒会の方には許可をいただいているから。ルークももし良ければと思うのだけどどうかしら?」
「ええ、勿論」
「楽しみにしてる」
久しぶりに食堂の中二階にある生徒会専用エリアにやって来た。
「わあ、私も良いの?」
「勿論よ。アリエノール様に許可は頂いたの。周りが聞き耳立ててるから中々話せないでしょ? ここなら大声を出さない限り大丈夫」
ここを利用するのはまだ2回目。初めてアリエノールに呼び出されてから随分色々な事があったと感慨深く周りを見回した。
「じゃあ、本当にセアラ・ホプキンスに戻れるのね」
「ええ、レトビア公爵家とは縁が切れるから【レトビアの荊姫】じゃなくなるわ」
「良かったぁ。正直言うと以前は呪いがあるかどうか半々な気持ちだったの。でももしあったら恐ろしいし、友達の命がかかってるのに運任せみたいなのは嫌だからなんとかしたいって思ってた。
でも、あの教会巡りをしてて思ったの、もしかしたらホントなんじゃないかって。だから本当によかった~」
「呪いのあるなしはよくわからんが、公爵やアメリアと縁が切れたのは良かったと思う」
「でもアリエノール様って格好良いわぁ。正に王女様の中の王女様ね。リチャード王子殿下もきっと喜んでおられるわよ」
「ええ、昨日は気持ちが落ち着かなくて少しご心配をおかけしたから」
「えー、そう言うことじゃなくて。ご本人がいらっしゃる前で聞くのはアレなんだけど、セアラはリチャード王子殿下とルーク様のどっちなの?」
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