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60.シスコンでちょっとヘタレだけど
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「お兄様!」
「セアラ!! 元気だったか!? イリスから聞いて心配してたんだ。手紙を書いても受け取り拒否で戻ってくるし、会いに行っても門前払いだし。学園に忍び込むしかないと思ってたんだ」
「心配かけてごめんなさい。私からはどこにも連絡できなかったの。アリエノール様達が手紙を送ったり面会が出来るように手配してくださるって仰って下さったのだけど、公爵様にバレたらご迷惑をおかけするかもしれないでしょう? だから⋯⋯」
「セアラが謝ることなんて何もないよ。セアラが公爵家で軟禁されてたことも酷い仕打ちをされてたことも知ってる。学園でも大変だって」
「それほど大変でもないの。だって周りに助けて下さる方がたくさんおられるから、向こうは大したことができなくて苛々してるくらいだもの」
学園の休みにセアラはライルと待ち合わせた。学園の正門前で待っていたライルはセアラを見つけた途端目を潤ませて今にも抱きつきそうな勢いで走ってきた。
ライルはセアラの記憶よりも背が伸びて大人っぽくなっていた。髪が少し伸びて目にかかりかなり着古したシャツを着ている。
「3年、いや3年半ぶりだもんな。大人っぽくなってて吃驚したよ」
学園に入学した後のライルは土日と長期休暇にアルバイトをして学費や生活費を稼いでいたので一度もホプキンス領に帰って来れなかった。
「セアラがこっちに来るまで友達のところに泊めてもらう約束をして、セアラに入学祝いを渡そうと楽しみにしてたんだよ。それなのに父上があんな事をしでかすなんて!
顔を合わせたらタダじゃおかない。セアラの苦労と不安と俺の心配分絶対仕返ししてやる。
家も領地も大事だけどその為に娘を売り飛ばすなんてあり得ないよ!! だか「お兄様。ご結婚おめでとう」」
「はひっ?」
ヒートアップし過ぎて歯止めが効かなくなっていたライルがおかしな声を発して固まった。
「長年の思いが叶ってよかったわね」
「うっ、うん。聞いたんだ」
「ええ、それはもう。じっくりと念入りに」
セアラとライルはウルリカに教えて貰った王都で一番チーズケーキが美味しいと言うカフェに向かって歩き出した。
「でっ、でも婚約式のようなものだから。手を繋いだだけだし。
ちっ、誓いのキ⋯⋯キスだって司祭様の提案で頬にしたんだから。何より、まだラーニア子爵に正式な挨拶にも行けてない」
「ふーん、断られたらどうするの?」
「は? そっ、それは困る!」
「ふふっ、応援するから頑張ってね。おじ様はイリスの事をものすご~く可愛がってるから、こんなに早く結婚を決めたなんて落ち込んでしまわれるかもだけど」
「脅かさないでくれよ。フライングしたってのは自覚してるんだ。先に子爵様にお願いに行くべきだったって」
「お兄様がホプキンス家の借金で身動きが取れなかったのはおば様もおじ様もご存じだから、それがなくなったって知れば話はすんなり進むんじゃないかしら」
「だけど、王女殿下の個人資産でなんて大丈夫なのか?」
「ええ、無茶なことは仰らない⋯⋯まあ、うん。大丈夫。
実はね、自信がなくて一度お断りしたんだけどルクセル侯爵家からお仕事に誘われてるの。アリエノール様からもお声をかけていただいているし」
「ルクセル侯爵家って言ったら内務大臣の? 前侯爵は侍従長をされている名門じゃないか! それに王家も!?」
「そう、分不相応だなって思うけど嬉しくもあるの」
「流石セアラだよ! うん、流石俺の自慢のセアラだな」
「お兄様、領地にいる可愛くて怖い妹って誰のこと?」
「は? へ?」
「お兄様と同学年だったって」
「あー! 殿下ぁ⋯⋯。ごめん」
「いいけど代わりに暴露しておいたから。お兄様の木剣が飛んで窓を突き破ったとか、腕立て伏せしたらフォークが持てなくなって『あーん』してもらったとか、あとは⋯⋯」
「ウソだろ? そんなぁ」
「ふふっ、嘘です」
「口は災いの元だな。セアラの前では気をつけないと」
会えなかった時の話を夢中でしているうちに件のカフェに着いていた。賑わう店の中は女性ばかりで、居心地の悪そうなライルを揶揄いながら席につき紅茶とケーキを頼んだ。
「私達ってやっぱり貧乏性だわ。辻馬車を探してたはずなのにここまで歩いてきちゃった」
「まあ、貧乏じゃなかった時なんてなかったもんな」
「でも、今になってみれば楽しかった事もいっぱいあったわ。その時覚えた特技が今回役に立ったのよ」
「ん?」
セアラは働かないメイドとのバトルやドレスを二枚重ねにして隠したことなどを面白おかしく話した。
「お祖父様を引っ掛けようとする悪徳商人を言葉で言い負かしてやっつけるのは神業だったもんな」
「ふふっ、それほどでも」
カフェの後は大通りを歩いてライルの服を買いに行くことにした。
「えっ? 俺は必要ないから」
「ラーニア子爵家に挨拶に行く時の為にきちんとした服を買わなくちゃ」
「でもそんな金は⋯⋯まだ時間はあるし少しずつ貯めてさ」
「アリエノール様から調査団に参加したお兄様への報酬を預かってきたの。因みにさっきのケーキ代はそこから出したの。
ご馳走様でした」
セアラが渡した袋の中には吃驚するほどの金貨が入っていた。
「えっ? こんなに?」
「ええ、イリスも貰ったから今度お買い物に付き合って欲しいって言ってたわ。私の代わりに髪飾りくらい買ってあげてね」
普段着や靴など一揃い買うと両手いっぱいの荷物になった。
「凄い、今までの人生でこんなに金を使った事ないかも。夢でうなされそうだよ」
「イリスが『ライル、格好良い』って惚れ直してくれるかも」
照れたように笑うライルの笑顔がレトビア公爵家に着いた日からの疲れを吹き飛ばした。
三月末、4人の剣技大会出場選手が決定した。
明日行われる王宮での夜会には王侯貴族が多数出席し、3校の出場選手全員への盛大な激励会が開催される。
「セアラ!! 元気だったか!? イリスから聞いて心配してたんだ。手紙を書いても受け取り拒否で戻ってくるし、会いに行っても門前払いだし。学園に忍び込むしかないと思ってたんだ」
「心配かけてごめんなさい。私からはどこにも連絡できなかったの。アリエノール様達が手紙を送ったり面会が出来るように手配してくださるって仰って下さったのだけど、公爵様にバレたらご迷惑をおかけするかもしれないでしょう? だから⋯⋯」
「セアラが謝ることなんて何もないよ。セアラが公爵家で軟禁されてたことも酷い仕打ちをされてたことも知ってる。学園でも大変だって」
「それほど大変でもないの。だって周りに助けて下さる方がたくさんおられるから、向こうは大したことができなくて苛々してるくらいだもの」
学園の休みにセアラはライルと待ち合わせた。学園の正門前で待っていたライルはセアラを見つけた途端目を潤ませて今にも抱きつきそうな勢いで走ってきた。
ライルはセアラの記憶よりも背が伸びて大人っぽくなっていた。髪が少し伸びて目にかかりかなり着古したシャツを着ている。
「3年、いや3年半ぶりだもんな。大人っぽくなってて吃驚したよ」
学園に入学した後のライルは土日と長期休暇にアルバイトをして学費や生活費を稼いでいたので一度もホプキンス領に帰って来れなかった。
「セアラがこっちに来るまで友達のところに泊めてもらう約束をして、セアラに入学祝いを渡そうと楽しみにしてたんだよ。それなのに父上があんな事をしでかすなんて!
顔を合わせたらタダじゃおかない。セアラの苦労と不安と俺の心配分絶対仕返ししてやる。
家も領地も大事だけどその為に娘を売り飛ばすなんてあり得ないよ!! だか「お兄様。ご結婚おめでとう」」
「はひっ?」
ヒートアップし過ぎて歯止めが効かなくなっていたライルがおかしな声を発して固まった。
「長年の思いが叶ってよかったわね」
「うっ、うん。聞いたんだ」
「ええ、それはもう。じっくりと念入りに」
セアラとライルはウルリカに教えて貰った王都で一番チーズケーキが美味しいと言うカフェに向かって歩き出した。
「でっ、でも婚約式のようなものだから。手を繋いだだけだし。
ちっ、誓いのキ⋯⋯キスだって司祭様の提案で頬にしたんだから。何より、まだラーニア子爵に正式な挨拶にも行けてない」
「ふーん、断られたらどうするの?」
「は? そっ、それは困る!」
「ふふっ、応援するから頑張ってね。おじ様はイリスの事をものすご~く可愛がってるから、こんなに早く結婚を決めたなんて落ち込んでしまわれるかもだけど」
「脅かさないでくれよ。フライングしたってのは自覚してるんだ。先に子爵様にお願いに行くべきだったって」
「お兄様がホプキンス家の借金で身動きが取れなかったのはおば様もおじ様もご存じだから、それがなくなったって知れば話はすんなり進むんじゃないかしら」
「だけど、王女殿下の個人資産でなんて大丈夫なのか?」
「ええ、無茶なことは仰らない⋯⋯まあ、うん。大丈夫。
実はね、自信がなくて一度お断りしたんだけどルクセル侯爵家からお仕事に誘われてるの。アリエノール様からもお声をかけていただいているし」
「ルクセル侯爵家って言ったら内務大臣の? 前侯爵は侍従長をされている名門じゃないか! それに王家も!?」
「そう、分不相応だなって思うけど嬉しくもあるの」
「流石セアラだよ! うん、流石俺の自慢のセアラだな」
「お兄様、領地にいる可愛くて怖い妹って誰のこと?」
「は? へ?」
「お兄様と同学年だったって」
「あー! 殿下ぁ⋯⋯。ごめん」
「いいけど代わりに暴露しておいたから。お兄様の木剣が飛んで窓を突き破ったとか、腕立て伏せしたらフォークが持てなくなって『あーん』してもらったとか、あとは⋯⋯」
「ウソだろ? そんなぁ」
「ふふっ、嘘です」
「口は災いの元だな。セアラの前では気をつけないと」
会えなかった時の話を夢中でしているうちに件のカフェに着いていた。賑わう店の中は女性ばかりで、居心地の悪そうなライルを揶揄いながら席につき紅茶とケーキを頼んだ。
「私達ってやっぱり貧乏性だわ。辻馬車を探してたはずなのにここまで歩いてきちゃった」
「まあ、貧乏じゃなかった時なんてなかったもんな」
「でも、今になってみれば楽しかった事もいっぱいあったわ。その時覚えた特技が今回役に立ったのよ」
「ん?」
セアラは働かないメイドとのバトルやドレスを二枚重ねにして隠したことなどを面白おかしく話した。
「お祖父様を引っ掛けようとする悪徳商人を言葉で言い負かしてやっつけるのは神業だったもんな」
「ふふっ、それほどでも」
カフェの後は大通りを歩いてライルの服を買いに行くことにした。
「えっ? 俺は必要ないから」
「ラーニア子爵家に挨拶に行く時の為にきちんとした服を買わなくちゃ」
「でもそんな金は⋯⋯まだ時間はあるし少しずつ貯めてさ」
「アリエノール様から調査団に参加したお兄様への報酬を預かってきたの。因みにさっきのケーキ代はそこから出したの。
ご馳走様でした」
セアラが渡した袋の中には吃驚するほどの金貨が入っていた。
「えっ? こんなに?」
「ええ、イリスも貰ったから今度お買い物に付き合って欲しいって言ってたわ。私の代わりに髪飾りくらい買ってあげてね」
普段着や靴など一揃い買うと両手いっぱいの荷物になった。
「凄い、今までの人生でこんなに金を使った事ないかも。夢でうなされそうだよ」
「イリスが『ライル、格好良い』って惚れ直してくれるかも」
照れたように笑うライルの笑顔がレトビア公爵家に着いた日からの疲れを吹き飛ばした。
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