【完結】私なりのヒロイン頑張ってみます。ヒロインが儚げって大きな勘違いですわね

との

文字の大きさ
69 / 93

69.最強マーシャル夫人の告白

しおりを挟む
「それがわたくしの祖先。イーバリス教最後の聖女の妹の末裔と言った方が合っているかもしれませんね」




 レトビア公爵が全ての鍵を握っているとしか思えないと言い出したのはマーシャル夫人の曽祖母だった。

「それまではディースの呪いがレトビアにだけかかっているのはかの家が襲撃の首謀者だったからだと考えられていて、王家がどこに売り払ったのかばかり調べていたそうなの。でもそれはおかしいと曽祖母様が言いはじめて。
一度ヴァイマル王国に移住して準備を整えてこの国にやってきたの。

サルタルス子爵はレトビアの縁戚で、尚且つレトビアとは縁が薄い。子爵と伯爵令嬢の縁談をまとめ、わたくしは侍女となってこの国にやってきた。その後のことはご存じかしら?」

「いえ、マーシャル夫人は謎の人だと。この国に来られる前の事もこの国での目的も不明だと聞きました」

「この国の諜報部よりわたくし達の方が上手だけど、ルクセル侯爵家の諜報部隊には少しくらいバレているかと思っていたわ」


 人脈を広げ情報を集めるのにマナー講師という立場はとても便利だった。屋敷内に堂々と入り夫人達の姦しい噂話に耳を貸す。評価が上がるにつれ王家や高位貴族にも縁ができ調査はますます進んでいった。

「レトビアが資金繰りが悪化していると知って揺さぶりをかけていた時、王女達が動きはじめたことに気付いて少し様子を見ていたの。
王家が今更密約を破棄する為に動くとは思わなかったから、少し驚いてしまって興味が湧いたの」

「王家とレトビアの密約をご存じだったのですか!?」

「ふふっ、勿論ですとも。三代目国王は愚か者でレトビア公爵の操り人形だったと記録に残っているわ。
それ以降レトビア家がいつどのように権利を行使したかも全て知っているの」

 マーシャル夫人の曽祖母は初代国王の私費で戦費を賄ったと言うのが真実で神殿の宝物をレトビア公爵が秘匿しているからこそレトビア公爵家だけに呪いがかかったのではないかと言い出した。

「似たような話はそれまでにも出たそうなんだけどがわたくし達の目を惑わせたの。王家はレトビアに対してあんな書類を交わすほどの恩義を感じたのは宝物を受け取ったからとしか思えないって。
でも、王家もレトビアも襲撃後に宝物を売り捌いた気配がなくそれらしい物を所持している人も見つからない。
三代目国王は朝食に何を食べたのか覚えてないんじゃないかって言われるほどとんでもない愚王だったし、本当に宝物を受け取ったなら初代国王が密約を交わしてたんじゃないかって」




 レトビア公爵はそろそろ王家に資金援助を依頼しなければならないくらいまで追い詰められており資金がレトビア公爵の手に渡らないよう準備も整えてあったと言う。

「屋敷に忍び込んで宝物を取り返すだけなら簡単だったと思うの。でも、それでは納得できないから⋯⋯王家からの支援金が手に届かず宝物を売り捌くしかなくなるまで追い詰められ、襲撃に関わった全ての者達に真実が知られ破滅するレトビア公爵⋯⋯というのがわたくしの計画だったの」

 レトビア公爵家に忍び込んで宝物を取り返すだけでは一族の恨みは晴らせない。長年無駄に走り回らされ無念の思いを抱えたまま亡くなった仲間達への餞に、じわりじわりと追い詰められる恐怖を味わえばいいと思っていたとマーシャル夫人は話した。
 この世の春を謳歌し続けたレトビア公爵家と彼等に追従して甘い汁を吸ってきた愚か者達、自分達が育てた浅はかな娘達の言動をきっかけに破滅していくシナリオは既に出来上がっていた。


「あまり捜査が進んでいないようだから少し手伝おうかと思っていた時【レトビアの荊姫】として表舞台に現れたのがセアラ様だったの。
会って話してみて助けたいって思っていたら王女達と作戦を練って行動しはじめて⋯⋯。
足りない情報があれば影から手伝っても良いかなって思っていたのだけど、それからのセアラ様達の動きは見事だったわ。情報分析もレトビア達を追い詰めるテクニックも、見ているだけで本当に楽しかったわ。
だから観客として最後まで楽しませてもらったと言うわけ」

「ありがとうございました。とても不思議だったんです。初めてお会いして夜会の準備で色々助けて頂いて、その上ルークが学園に編入してくれるよう手配までしてくださいましたし。
それに他にも不思議な巡り合わせのような事があって。
⋯⋯あの、もしかしたらなのですが⋯⋯イリスとお兄様が出会った⋯⋯マーシアの町のことを教えて下さったシスターとの出会いとか司祭様とか。
偶然にしては出来すぎてるように思ったのですが?」

「頑張っている二人に少しだけお手伝いしたの。でもね、シスターや司祭の協力を得られたのは二人の本気の努力があったからなのは間違いないわ。だって、わたくしがしたのはいくつかの町の名前を調査団が知るように手配しただけですもの。
特にあの司祭は見た目によらずとても頑固者でね、ベルスペクト王国嫌いで極め付けのイーバリス教信奉者なのよ。夜の座り込みを決行したのは大正解だったわね。
だからお礼を言われるほど大したことはしていないの」

(やっぱりマーシャル夫人の見えない手助けがあっての成功だったんだわ。色々な事が上手く行きすぎる気がしていたのよね)


「元々、王家のせいでわたくし達一族が宝探しをさせられていると思っていたから王家を助けるつもりなんてこれっぽっちもなかったの。神殿の襲撃さえなければわたくし達はごく普通の暮らしができていたはずなのにって思っていたし、この国の王は密約だなんて恥の上塗りをしてるって馬鹿にしていたの」

 あんな王家など取り潰されて仕舞えばいいと思っていたとマーシャル夫人は言う。神殿の宝物を取り戻す事は一族の使命だけれど、襲撃に関わった貴族を含めて潰してしまおうとマーシャル夫人は計画していた。




「今になって思えばわたくしの一族もある意味でレトビアの呪いにかかっていたと言えるかもしれないわ。
だから、セアラ様達が神殿襲撃に関わる全てを終わらせたいと願ったように、わたくしもそれをわたくしの代で終わらせたかったの」

しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

婚約破棄された悪役令嬢、実は最強聖女でした〜辺境で拾った彼に一途に愛され、元婚約者が泣きついてきてももう遅い〜

usako
恋愛
王太子の婚約者でありながら「悪女」と呼ばれ婚約破棄された公爵令嬢リディア。 国外追放されたその日、命を救ってくれたのは無骨な騎士ルークだった。 彼に導かれた辺境の地で、本来の力――“聖女”としての奇跡が目覚める。 新たな人生を歩み始めた矢先、かつて自分を貶めた王太子が後悔とともに現れるが……。 もう遅い。彼女は真の愛を知ってしまったから――。 ざまぁと溺愛が交錯する、爽快逆転ラブファンタジー。

処理中です...