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69.最強マーシャル夫人の告白
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「それがわたくしの祖先。イーバリス教最後の聖女の妹の末裔と言った方が合っているかもしれませんね」
レトビア公爵が全ての鍵を握っているとしか思えないと言い出したのはマーシャル夫人の曽祖母だった。
「それまではディースの呪いがレトビアにだけかかっているのはかの家が襲撃の首謀者だったからだと考えられていて、王家がどこに売り払ったのかばかり調べていたそうなの。でもそれはおかしいと曽祖母様が言いはじめて。
一度ヴァイマル王国に移住して準備を整えてこの国にやってきたの。
サルタルス子爵はレトビアの縁戚で、尚且つレトビアとは縁が薄い。子爵と伯爵令嬢の縁談をまとめ、わたくしは侍女となってこの国にやってきた。その後のことはご存じかしら?」
「いえ、マーシャル夫人は謎の人だと。この国に来られる前の事もこの国での目的も不明だと聞きました」
「この国の諜報部よりわたくし達の方が上手だけど、ルクセル侯爵家の諜報部隊には少しくらいバレているかと思っていたわ」
人脈を広げ情報を集めるのにマナー講師という立場はとても便利だった。屋敷内に堂々と入り夫人達の姦しい噂話に耳を貸す。評価が上がるにつれ王家や高位貴族にも縁ができ調査はますます進んでいった。
「レトビアが資金繰りが悪化していると知って揺さぶりをかけていた時、王女達が動きはじめたことに気付いて少し様子を見ていたの。
王家が今更密約を破棄する為に動くとは思わなかったから、少し驚いてしまって興味が湧いたの」
「王家とレトビアの密約をご存じだったのですか!?」
「ふふっ、勿論ですとも。三代目国王は愚か者でレトビア公爵の操り人形だったと記録に残っているわ。
それ以降レトビア家がいつどのように権利を行使したかも全て知っているの」
マーシャル夫人の曽祖母は初代国王の私費で戦費を賄ったと言うのが真実で神殿の宝物をレトビア公爵が秘匿しているからこそレトビア公爵家だけに呪いがかかったのではないかと言い出した。
「似たような話はそれまでにも出たそうなんだけど密書がわたくし達の目を惑わせたの。王家はレトビアに対してあんな書類を交わすほどの恩義を感じたのは宝物を受け取ったからとしか思えないって。
でも、王家もレトビアも襲撃後に宝物を売り捌いた気配がなくそれらしい物を所持している人も見つからない。
三代目国王は朝食に何を食べたのか覚えてないんじゃないかって言われるほどとんでもない愚王だったし、本当に宝物を受け取ったなら初代国王が密約を交わしてたんじゃないかって」
レトビア公爵はそろそろ王家に資金援助を依頼しなければならないくらいまで追い詰められており資金がレトビア公爵の手に渡らないよう準備も整えてあったと言う。
「屋敷に忍び込んで宝物を取り返すだけなら簡単だったと思うの。でも、それでは納得できないから⋯⋯王家からの支援金が手に届かず宝物を売り捌くしかなくなるまで追い詰められ、襲撃に関わった全ての者達に真実が知られ破滅するレトビア公爵⋯⋯というのがわたくしの計画だったの」
レトビア公爵家に忍び込んで宝物を取り返すだけでは一族の恨みは晴らせない。長年無駄に走り回らされ無念の思いを抱えたまま亡くなった仲間達への餞に、じわりじわりと追い詰められる恐怖を味わえばいいと思っていたとマーシャル夫人は話した。
この世の春を謳歌し続けたレトビア公爵家と彼等に追従して甘い汁を吸ってきた愚か者達、自分達が育てた浅はかな娘達の言動をきっかけに破滅していくシナリオは既に出来上がっていた。
「あまり捜査が進んでいないようだから少し手伝おうかと思っていた時【レトビアの荊姫】として表舞台に現れたのがセアラ様だったの。
会って話してみて助けたいって思っていたら王女達と作戦を練って行動しはじめて⋯⋯。
足りない情報があれば影から手伝っても良いかなって思っていたのだけど、それからのセアラ様達の動きは見事だったわ。情報分析もレトビア達を追い詰めるテクニックも、見ているだけで本当に楽しかったわ。
だから観客として最後まで楽しませてもらったと言うわけ」
「ありがとうございました。とても不思議だったんです。初めてお会いして夜会の準備で色々助けて頂いて、その上ルークが学園に編入してくれるよう手配までしてくださいましたし。
それに他にも不思議な巡り合わせのような事があって。
⋯⋯あの、もしかしたらなのですが⋯⋯イリスとお兄様が出会った⋯⋯マーシアの町のことを教えて下さったシスターとの出会いとか司祭様とか。
偶然にしては出来すぎてるように思ったのですが?」
「頑張っている二人に少しだけお手伝いしたの。でもね、シスターや司祭の協力を得られたのは二人の本気の努力があったからなのは間違いないわ。だって、わたくしがしたのはいくつかの町の名前を調査団が知るように手配しただけですもの。
特にあの司祭は見た目によらずとても頑固者でね、ベルスペクト王国嫌いで極め付けのイーバリス教信奉者なのよ。夜の座り込みを決行したのは大正解だったわね。
だからお礼を言われるほど大したことはしていないの」
(やっぱりマーシャル夫人の見えない手助けがあっての成功だったんだわ。色々な事が上手く行きすぎる気がしていたのよね)
「元々、王家のせいでわたくし達一族が宝探しをさせられていると思っていたから王家を助けるつもりなんてこれっぽっちもなかったの。神殿の襲撃さえなければわたくし達はごく普通の暮らしができていたはずなのにって思っていたし、この国の王は密約だなんて恥の上塗りをしてるって馬鹿にしていたの」
あんな王家など取り潰されて仕舞えばいいと思っていたとマーシャル夫人は言う。神殿の宝物を取り戻す事は一族の使命だけれど、襲撃に関わった貴族を含めて潰してしまおうとマーシャル夫人は計画していた。
「今になって思えばわたくしの一族もある意味でレトビアの呪いにかかっていたと言えるかもしれないわ。
だから、セアラ様達が神殿襲撃に関わる全てを終わらせたいと願ったように、わたくしもそれをわたくしの代で終わらせたかったの」
レトビア公爵が全ての鍵を握っているとしか思えないと言い出したのはマーシャル夫人の曽祖母だった。
「それまではディースの呪いがレトビアにだけかかっているのはかの家が襲撃の首謀者だったからだと考えられていて、王家がどこに売り払ったのかばかり調べていたそうなの。でもそれはおかしいと曽祖母様が言いはじめて。
一度ヴァイマル王国に移住して準備を整えてこの国にやってきたの。
サルタルス子爵はレトビアの縁戚で、尚且つレトビアとは縁が薄い。子爵と伯爵令嬢の縁談をまとめ、わたくしは侍女となってこの国にやってきた。その後のことはご存じかしら?」
「いえ、マーシャル夫人は謎の人だと。この国に来られる前の事もこの国での目的も不明だと聞きました」
「この国の諜報部よりわたくし達の方が上手だけど、ルクセル侯爵家の諜報部隊には少しくらいバレているかと思っていたわ」
人脈を広げ情報を集めるのにマナー講師という立場はとても便利だった。屋敷内に堂々と入り夫人達の姦しい噂話に耳を貸す。評価が上がるにつれ王家や高位貴族にも縁ができ調査はますます進んでいった。
「レトビアが資金繰りが悪化していると知って揺さぶりをかけていた時、王女達が動きはじめたことに気付いて少し様子を見ていたの。
王家が今更密約を破棄する為に動くとは思わなかったから、少し驚いてしまって興味が湧いたの」
「王家とレトビアの密約をご存じだったのですか!?」
「ふふっ、勿論ですとも。三代目国王は愚か者でレトビア公爵の操り人形だったと記録に残っているわ。
それ以降レトビア家がいつどのように権利を行使したかも全て知っているの」
マーシャル夫人の曽祖母は初代国王の私費で戦費を賄ったと言うのが真実で神殿の宝物をレトビア公爵が秘匿しているからこそレトビア公爵家だけに呪いがかかったのではないかと言い出した。
「似たような話はそれまでにも出たそうなんだけど密書がわたくし達の目を惑わせたの。王家はレトビアに対してあんな書類を交わすほどの恩義を感じたのは宝物を受け取ったからとしか思えないって。
でも、王家もレトビアも襲撃後に宝物を売り捌いた気配がなくそれらしい物を所持している人も見つからない。
三代目国王は朝食に何を食べたのか覚えてないんじゃないかって言われるほどとんでもない愚王だったし、本当に宝物を受け取ったなら初代国王が密約を交わしてたんじゃないかって」
レトビア公爵はそろそろ王家に資金援助を依頼しなければならないくらいまで追い詰められており資金がレトビア公爵の手に渡らないよう準備も整えてあったと言う。
「屋敷に忍び込んで宝物を取り返すだけなら簡単だったと思うの。でも、それでは納得できないから⋯⋯王家からの支援金が手に届かず宝物を売り捌くしかなくなるまで追い詰められ、襲撃に関わった全ての者達に真実が知られ破滅するレトビア公爵⋯⋯というのがわたくしの計画だったの」
レトビア公爵家に忍び込んで宝物を取り返すだけでは一族の恨みは晴らせない。長年無駄に走り回らされ無念の思いを抱えたまま亡くなった仲間達への餞に、じわりじわりと追い詰められる恐怖を味わえばいいと思っていたとマーシャル夫人は話した。
この世の春を謳歌し続けたレトビア公爵家と彼等に追従して甘い汁を吸ってきた愚か者達、自分達が育てた浅はかな娘達の言動をきっかけに破滅していくシナリオは既に出来上がっていた。
「あまり捜査が進んでいないようだから少し手伝おうかと思っていた時【レトビアの荊姫】として表舞台に現れたのがセアラ様だったの。
会って話してみて助けたいって思っていたら王女達と作戦を練って行動しはじめて⋯⋯。
足りない情報があれば影から手伝っても良いかなって思っていたのだけど、それからのセアラ様達の動きは見事だったわ。情報分析もレトビア達を追い詰めるテクニックも、見ているだけで本当に楽しかったわ。
だから観客として最後まで楽しませてもらったと言うわけ」
「ありがとうございました。とても不思議だったんです。初めてお会いして夜会の準備で色々助けて頂いて、その上ルークが学園に編入してくれるよう手配までしてくださいましたし。
それに他にも不思議な巡り合わせのような事があって。
⋯⋯あの、もしかしたらなのですが⋯⋯イリスとお兄様が出会った⋯⋯マーシアの町のことを教えて下さったシスターとの出会いとか司祭様とか。
偶然にしては出来すぎてるように思ったのですが?」
「頑張っている二人に少しだけお手伝いしたの。でもね、シスターや司祭の協力を得られたのは二人の本気の努力があったからなのは間違いないわ。だって、わたくしがしたのはいくつかの町の名前を調査団が知るように手配しただけですもの。
特にあの司祭は見た目によらずとても頑固者でね、ベルスペクト王国嫌いで極め付けのイーバリス教信奉者なのよ。夜の座り込みを決行したのは大正解だったわね。
だからお礼を言われるほど大したことはしていないの」
(やっぱりマーシャル夫人の見えない手助けがあっての成功だったんだわ。色々な事が上手く行きすぎる気がしていたのよね)
「元々、王家のせいでわたくし達一族が宝探しをさせられていると思っていたから王家を助けるつもりなんてこれっぽっちもなかったの。神殿の襲撃さえなければわたくし達はごく普通の暮らしができていたはずなのにって思っていたし、この国の王は密約だなんて恥の上塗りをしてるって馬鹿にしていたの」
あんな王家など取り潰されて仕舞えばいいと思っていたとマーシャル夫人は言う。神殿の宝物を取り戻す事は一族の使命だけれど、襲撃に関わった貴族を含めて潰してしまおうとマーシャル夫人は計画していた。
「今になって思えばわたくしの一族もある意味でレトビアの呪いにかかっていたと言えるかもしれないわ。
だから、セアラ様達が神殿襲撃に関わる全てを終わらせたいと願ったように、わたくしもそれをわたくしの代で終わらせたかったの」
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