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アンヴィル
1.アンヴィル
スペンサー商会は騾馬の販売の他に、個別注文による輸入品等の売買を行なっている。
騾馬の納入後の空き時間に、大市などで交易品を購入し販売したのが始まり。
特に、ガラス製品や宝石・絹織物・石鹸などが飛ぶ様に売れている。
顧客は騾馬の取引で知り合った貴族や豪商が殆どなので、店舗に飛び込みでやって来る客は少ない。
店には店員を数名置いているが、店員と呼ぶよりも事務員と言った方が正しいのかもしれない。
ルーカスが彼ら事務員を統括している。
伝書鳩は急ぎの仕事や緊急連絡用だが、2階にあるテラスには引っ切り無しに伝書鳩が飛んでくる。
気の短い貴族の要望に応えるには、これが一番早い。
その次は商人専用の飛脚。単価は高いが自衛のために武装しているので確実に届く。
最後が郵便馬車。大量の書類などにはこの方法を使う。
会議の三日後、リディア・マーサ・セオの三人は二頭立てのコーチで出発した。
行き先はロレンヌ川上流の村、アンヴィル。
領主はジョンバーグ伯爵。社交嫌いの農業オタクで有名な、変わり者の領主だ。
「ジョンバーグ伯爵にお会いするのはすごく楽しみなの」
「変わり者だと有名ですよね」
「だから楽しみなの。そういう方の方が、色んな話を聞かせて下さるんじゃないかしらって」
「そう言えば、リディア様に騾馬の事を教えて下さったライオネル様も変わり者で有名な方でしたね」
セオが懐かしそうに言った。
「お嬢様はそういう方とご縁があるのでしょうか?」
「将来の旦那様に不安が出てきますね」
「?」
マーサやセオの心配を他所に、ワクワクが止まらないリディア。
数日をかけてジョンバーグ伯爵領に到着した。
町の大通りに近い街道を走っているはずだが、道は今までの中で一番と言っていいほどの悪路で、リディアとマーサは馬車の中で飛び跳ねている。
「ねえ、ここって」
リディアが話し始めたが、セオが話を遮った。
「馬車が止まるまで話されない方が良いですよ。舌を噛んでしまうのがオチです」
こくこくと頷くリディア。
領主町らしきところに着き、馬車が速度を落とした。
木造の個人商店が軒を連ねている。
まだ新しい店もある様だが、どことなく薄汚れた感じがする。
馬車の窓から外を覗いているが、とにかく人が歩いていない。
空いている店も開店休業状態に見えた。
「綺麗なお店が並んでるんだけど、何だか随分と寂れて見えるわね」
「調べでは、農業改革がかなり順調で好景気だとなってたんですが」
「取り敢えず宿をとって、先触れのお手紙を出しましょう」
町の中程に宿屋を見つけ、セオが中に入って行く。
「不思議な町ですね。割と新しそうな店が並ぶ、ゴーストタウンって言う感じですかね」
評論家のようなコメントをするマーサ。
「何だか鼻がムズムズしない?」
リディアとマーサはハンカチで鼻を押さえた。
「空いてました。と言うか他に客はいないみたいで、泊まりたいと言うと亭主がビックリした顔をしてました」
「何だかワクワクしてきたわ」
すっかり冒険者気分のリディアだった。
騾馬の納入後の空き時間に、大市などで交易品を購入し販売したのが始まり。
特に、ガラス製品や宝石・絹織物・石鹸などが飛ぶ様に売れている。
顧客は騾馬の取引で知り合った貴族や豪商が殆どなので、店舗に飛び込みでやって来る客は少ない。
店には店員を数名置いているが、店員と呼ぶよりも事務員と言った方が正しいのかもしれない。
ルーカスが彼ら事務員を統括している。
伝書鳩は急ぎの仕事や緊急連絡用だが、2階にあるテラスには引っ切り無しに伝書鳩が飛んでくる。
気の短い貴族の要望に応えるには、これが一番早い。
その次は商人専用の飛脚。単価は高いが自衛のために武装しているので確実に届く。
最後が郵便馬車。大量の書類などにはこの方法を使う。
会議の三日後、リディア・マーサ・セオの三人は二頭立てのコーチで出発した。
行き先はロレンヌ川上流の村、アンヴィル。
領主はジョンバーグ伯爵。社交嫌いの農業オタクで有名な、変わり者の領主だ。
「ジョンバーグ伯爵にお会いするのはすごく楽しみなの」
「変わり者だと有名ですよね」
「だから楽しみなの。そういう方の方が、色んな話を聞かせて下さるんじゃないかしらって」
「そう言えば、リディア様に騾馬の事を教えて下さったライオネル様も変わり者で有名な方でしたね」
セオが懐かしそうに言った。
「お嬢様はそういう方とご縁があるのでしょうか?」
「将来の旦那様に不安が出てきますね」
「?」
マーサやセオの心配を他所に、ワクワクが止まらないリディア。
数日をかけてジョンバーグ伯爵領に到着した。
町の大通りに近い街道を走っているはずだが、道は今までの中で一番と言っていいほどの悪路で、リディアとマーサは馬車の中で飛び跳ねている。
「ねえ、ここって」
リディアが話し始めたが、セオが話を遮った。
「馬車が止まるまで話されない方が良いですよ。舌を噛んでしまうのがオチです」
こくこくと頷くリディア。
領主町らしきところに着き、馬車が速度を落とした。
木造の個人商店が軒を連ねている。
まだ新しい店もある様だが、どことなく薄汚れた感じがする。
馬車の窓から外を覗いているが、とにかく人が歩いていない。
空いている店も開店休業状態に見えた。
「綺麗なお店が並んでるんだけど、何だか随分と寂れて見えるわね」
「調べでは、農業改革がかなり順調で好景気だとなってたんですが」
「取り敢えず宿をとって、先触れのお手紙を出しましょう」
町の中程に宿屋を見つけ、セオが中に入って行く。
「不思議な町ですね。割と新しそうな店が並ぶ、ゴーストタウンって言う感じですかね」
評論家のようなコメントをするマーサ。
「何だか鼻がムズムズしない?」
リディアとマーサはハンカチで鼻を押さえた。
「空いてました。と言うか他に客はいないみたいで、泊まりたいと言うと亭主がビックリした顔をしてました」
「何だかワクワクしてきたわ」
すっかり冒険者気分のリディアだった。
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