38 / 95
スペンサー商会
9.山賊
しおりを挟む
「いつ気がついた?」
「はっきり分かったのは今朝かな? セオ、全然寝てないだろ? 他の奴は気付いてないと思う」
セオは目を瞑って考え込んでいたが大きく溜息をついた後、
「何としてでもあの人だけは守りたい」
「でも山越えか?」
「ああ、それしか方法がない。それに誰が何と言っても聞かないだろうしな」
「惚れた弱みか?」
「最近他の奴にも言われたよ。二番煎じだな」
セオは苦笑いをした。
前後左右を傭兵達が守り山道を登って行った。
道幅は広いが、両側の落葉広葉樹のナラやブナの木が生茂り道に覆い被さっている。
空は澄み渡り空気も少しひんやりしている気がした。
頂上近くまで来た時、鳥や虫の声が聞こえなくなった。
草のざわめきだけが聞こえてくる中で、先頭を行くヒューの合図に全員が剣に手をかけた。
左の山側から、かなりの人数の男達が駆け降りて来てリディア達の前後を挟む様に立ち塞がった。
前を塞いでいる山賊の1人が話しはじめた。
「久しぶりのお客だな。得物から手を離して馬から降りてもらおうか」
ヒューは剣に手をかけたまま、
「最近はすっかり大人しくなったって言う噂だったが、まだこの辺で彷徨いてたのか?」
「お前らの様な間抜けがやってくるのを待ってたんだよ。
さっさと馬から降りろや!」
男の怒鳴り声を合図に、山賊達が襲いかかって来た。
リディアが山を背にしてその周りをセオと傭兵が半円を描く様に囲んだ。
斬りかかってきた山賊を馬で威嚇しながら傭兵達が斬り込むが、多勢に無勢で段々と傭兵達が押されはじめた。
少し離れたところで腕を組み、立ったままで戦いを傍観している男が山賊の頭だろう。
リディアはスリングショットを取り出し、狙いを定めて顔を狙って打った。
「うわぁ、ゲフッゲフッ」
顔面近くにきた玉を手で避けた山賊の頭は、大量の涙を流しながら転がり回っている。
戦っていた山賊の数人が頭に走り寄り、リディアはその男達に再び玉を打つ。
「「ゲホッゲホッゴホッ」」
異常な事態に慌てた山賊達が後ろに下がりはじめた。リディアは一番遠くにいる山賊を狙い玉を打つ。
「ぎゃぁ、ゲホッゲホッ」
「下がれ、引くぞー」
号令と共に山賊達が逃げ出して行き、何が起きたか分からないセオと傭兵達は呆然としていた。
ヒューが、
「取り敢えず逃げるぞ」
全員で一斉に走り出した。下りの道では何も起こらず、山裾のセルハイムの村迄無事に辿り着くことが出来た。
馬を預けて酒場に入った。全員が席に着いて昼食の注文を済ませた後ヒューが、
「何があった?」
リディアがこっそりと、スリングショットの玉をセオの手に乗せた。
油紙に包まれた少し大きめの玉を手の上で転がしていたセオが紙を剥がそうとすると、リディアが球を手で隠して首を振った。
セオの耳元で、
「胡椒と唐辛子」
「はっきり分かったのは今朝かな? セオ、全然寝てないだろ? 他の奴は気付いてないと思う」
セオは目を瞑って考え込んでいたが大きく溜息をついた後、
「何としてでもあの人だけは守りたい」
「でも山越えか?」
「ああ、それしか方法がない。それに誰が何と言っても聞かないだろうしな」
「惚れた弱みか?」
「最近他の奴にも言われたよ。二番煎じだな」
セオは苦笑いをした。
前後左右を傭兵達が守り山道を登って行った。
道幅は広いが、両側の落葉広葉樹のナラやブナの木が生茂り道に覆い被さっている。
空は澄み渡り空気も少しひんやりしている気がした。
頂上近くまで来た時、鳥や虫の声が聞こえなくなった。
草のざわめきだけが聞こえてくる中で、先頭を行くヒューの合図に全員が剣に手をかけた。
左の山側から、かなりの人数の男達が駆け降りて来てリディア達の前後を挟む様に立ち塞がった。
前を塞いでいる山賊の1人が話しはじめた。
「久しぶりのお客だな。得物から手を離して馬から降りてもらおうか」
ヒューは剣に手をかけたまま、
「最近はすっかり大人しくなったって言う噂だったが、まだこの辺で彷徨いてたのか?」
「お前らの様な間抜けがやってくるのを待ってたんだよ。
さっさと馬から降りろや!」
男の怒鳴り声を合図に、山賊達が襲いかかって来た。
リディアが山を背にしてその周りをセオと傭兵が半円を描く様に囲んだ。
斬りかかってきた山賊を馬で威嚇しながら傭兵達が斬り込むが、多勢に無勢で段々と傭兵達が押されはじめた。
少し離れたところで腕を組み、立ったままで戦いを傍観している男が山賊の頭だろう。
リディアはスリングショットを取り出し、狙いを定めて顔を狙って打った。
「うわぁ、ゲフッゲフッ」
顔面近くにきた玉を手で避けた山賊の頭は、大量の涙を流しながら転がり回っている。
戦っていた山賊の数人が頭に走り寄り、リディアはその男達に再び玉を打つ。
「「ゲホッゲホッゴホッ」」
異常な事態に慌てた山賊達が後ろに下がりはじめた。リディアは一番遠くにいる山賊を狙い玉を打つ。
「ぎゃぁ、ゲホッゲホッ」
「下がれ、引くぞー」
号令と共に山賊達が逃げ出して行き、何が起きたか分からないセオと傭兵達は呆然としていた。
ヒューが、
「取り敢えず逃げるぞ」
全員で一斉に走り出した。下りの道では何も起こらず、山裾のセルハイムの村迄無事に辿り着くことが出来た。
馬を預けて酒場に入った。全員が席に着いて昼食の注文を済ませた後ヒューが、
「何があった?」
リディアがこっそりと、スリングショットの玉をセオの手に乗せた。
油紙に包まれた少し大きめの玉を手の上で転がしていたセオが紙を剥がそうとすると、リディアが球を手で隠して首を振った。
セオの耳元で、
「胡椒と唐辛子」
26
あなたにおすすめの小説
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』
鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」
その一言で、私は婚約を破棄されました。
理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。
……ええ、どうぞご自由に。
私は泣きません。縋りません。
なぜなら——王家は、私を手放せないから。
婚約は解消。
けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。
失ったのは殿下の隣の席だけ。
代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。
最初は誰もが疑いました。
若い、女だ、感情的だ、と。
ならば証明しましょう。
怒らず、怯えず、排除せず。
反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。
派手な革命は起こしません。
大逆転も叫びません。
ただ、静かに積み上げます。
そして気づけば——
“殿下の元婚約者”ではなく、
“揺れない王”と呼ばれるようになるのです。
これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。
王冠の重みを受け入れた一人の女性が、
国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました
ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、
ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。
理由はただ一つ――
「平民出身の聖女と婚約するため」。
だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。
シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。
ただ静かに席を立っただけ。
それだけで――
王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、
王国最大の商会は資金提供を打ち切り、
王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。
一方シャウラは、何もしていない。
復讐もしない。断罪もしない。
平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。
そして王国は、
“王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、
聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。
誰かを裁くことなく、
誰かを蹴落とすことなく、
ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。
これは、
婚約破棄から始まる――
静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。
「私は何もしていませんわ」
それが、最強の勝利だった。
婚約破棄すると言われたので、これ幸いとダッシュで逃げました。殿下、すみませんが追いかけてこないでください。
桜乃
恋愛
ハイネシック王国王太子、セルビオ・エドイン・ハイネシックが舞踏会で高らかに言い放つ。
「ミュリア・メリッジ、お前とは婚約を破棄する!」
「はい、喜んで!」
……えっ? 喜んじゃうの?
※約8000文字程度の短編です。6/17に完結いたします。
※1ページの文字数は少な目です。
☆番外編「出会って10秒でひっぱたかれた王太子のお話」
セルビオとミュリアの出会いの物語。
※10/1から連載し、10/7に完結します。
※1日おきの更新です。
※1ページの文字数は少な目です。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年12月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、番外編を追加投稿する際に、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?
鏑木 うりこ
恋愛
父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。
「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」
庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。
少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *)
HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい!
色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー!
★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!
これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい!
【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
聖女は記憶と共に姿を消した~婚約破棄を告げられた時、王国の運命が決まった~
キョウキョウ
恋愛
ある日、婚約相手のエリック王子から呼び出された聖女ノエラ。
パーティーが行われている会場の中央、貴族たちが注目する場所に立たされたノエラは、エリック王子から突然、婚約を破棄されてしまう。
最近、冷たい態度が続いていたとはいえ、公の場での宣言にノエラは言葉を失った。
さらにエリック王子は、ノエラが聖女には相応しくないと告げた後、一緒に居た美しい女神官エリーゼを真の聖女にすると宣言してしまう。彼女こそが本当の聖女であると言って、ノエラのことを偽物扱いする。
その瞬間、ノエラの心に浮かんだのは、万が一の時のために準備していた計画だった。
王国から、聖女ノエラに関する記憶を全て消し去るという計画を、今こそ実行に移す時だと決意した。
こうして聖女ノエラは人々の記憶から消え去り、ただのノエラとして新たな一歩を踏み出すのだった。
※過去に使用した設定や展開などを再利用しています。
※カクヨムにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる