✖️✖️の薬を作ったら牢に入れられました。ここで薬を作れ? それは嫌かなー。って事でさよならします

との

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アルスター侯爵家

123.祝福のオリーブの行方

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 静まりかえった馬場にどこからともなく心地の良い音楽が聴こえ、青空を背に白い鳩が飛び交った。
 オリーブ冠を被り白いローブに金で縫い取りされたターコイズブルーの帯をつけた姿の天使サンダルフォンが晴れた青空を背に現れた。手には平和の象徴であるオリーブの小枝を持っており中世的な魅力に溢れたサンダルフォンがミリア達に優しく微笑みかけた。

 斜め後ろには龍に乗ったカフジエルが立っている。長い髪を風に靡かせ引き締めた口元と顎髭が力強さを感じさせる。


 天使サンダルフォンの名前は『兄弟』を意味し、天国の歌を司りルシファーと戦う役割を持つといわれ、預言者エリヤが生きながら昇天してサンダルフォンとなったと言われている。
 大天使ミカエルや大天使ガブリエルを凌ぐ力を持つと言われている兄の天使メタトロンとは双子の兄弟。サンダルフォンはメタトロンに代わって七大天使の一角として数えられる事もある。 

 第五天マティを支配する天使で天に達するほど巨大な姿の巨人。罪を犯した天使たちを永遠に閉じ込めておく幽閉所の支配者であり、誕生を控えた胎児の性別を決める天使とされる。
 天国の歌を司るのが職務とされ、天使の軍勢を指揮して戦い人々の祈りを受け取って神に渡す存在である。

 その前身は預言者エリヤ。エリヤの目の前に炎の馬に引かれた炎の戦車が現れ、旋風に巻き上げられたエリヤは天に昇り大天使サンダルフォンとなった。
 
・音楽による癒し
・地球全体の守護
・人間の願いや祈りを神へ届ける
・答えや気付きを与える


 龍に乗って現れる大天使カシエル。カシエルは『神の願い』を意味する平和と調和の天使で、神と人を結びつける役割を持っているが人間への直接干渉は許されていない。
 世界中の海を統治する海洋生物の保護者で、赤い癒しの光で物事を成し遂げる情熱とエネルギーをくれる。

・土星の統治者
・第7天の支配者
・孤独と涙の天使

 大天使カシエルは勤勉で真面目な人を好み、向上心を持って真面目に取り組んでいる時さらなる成長の手助けとなる知識をくれると言われている。

 大天使カシエルは別名カフジエル精霊とも呼ばれ、カフジエルは『神の速さ』を意味し、大天使ガブリエルが戦いに赴くときの副官としての役割を持つ。今回カシエルはカフジエルの姿で現れた。


 サンダルフォンは「液体の黄金」と呼ばれるオリーブオイルとオリーブの苗木をミリアに手渡した。

「祝福を得たこれらを『平和と知恵と勝利』の証として授けましょう。人の子の知恵と勇気に心からの賛辞を送ります」

「では、オリーブの苗は全てエレノアさんに差し上げたいと思います」

「戦いに勝った褒美として頂いたと言うのに良いのか?」

「初めに異常に気付いたのはエレノアさんだし屋敷の修理費用も必要だしね」

 ミリアの言葉に振り返るとベルフェゴールの槍が直撃した侯爵邸は大穴が開き見るも無惨な姿に変わり果てていた。

 その穴の近くには縄を解かれ座り込んでいる侯爵の側にエレノア達全員が集まっており、ルカが手招きすると全員が小走りでやって来た。

「ミリアちゃん!」

 一番に飛びついてきたカノンの後ろからヘルメースがミリアに抱きつこうとしてルカに蹴り飛ばされた。

「痛え、神を蹴ったな! その足切り落としてやる」

 ミリアがすかさずワンドを構えルカが結界を張った。

「中々良いコンビネーションですな。だからこそベルフェゴールを追い払えたと言うところですな」

 したり顔をしているに違いない龍の言葉に侯爵と当の本人達以外の全員が頷いた。


「これは一体・・何がどうなってるんだ?」

「アンタのしでかした事は後できっちり責任取ってもらう。今は黙っとけ」


「エレノア、ミリアに授けたオリーブの苗だが其方に託すが良いか?」

 エレノアがミリアとルカの顔を見遣ってこっそりと聞いてきた。

「ミリアさん、本当に宜しいんですの?」

「代わりと言ってはアレなんですけど、驢馬の皮と熊の胆嚢を貰って帰れれば嬉しいです。驢馬の皮から作るグルーは血を作り止血する作用があって、貧血や産後の栄養補給・強壮にも効くので。熊の胆嚢は強壮剤・腹痛薬・解熱薬ですし」

「ミリアちゃんったら・・」

「だって薬師だもん。オリーブの苗よりそっちの方が嬉しい」


 エレノアがサンダルフォンに向けてこうべを垂れた。

「謹んでお預かり致します」



 話を聞いていたサンダルフォンとカフジエルが唖然として、龍がゲラゲラと大口を開けて笑いはじめた。

「ラファエル様達からお聞きした通りですな。良く言えば欲がない、正直に言えば・・とんでもない変わり者ですな」

「あの方達が気に入ったと仰る気持ちが良く分かりました。ミリアならばこの先も我等を楽しませてくれる事でしょう」

 柔かに微笑むサンダルフォンの横でカフジエルが険しい顔を綻ばせた。

「悪魔が人間界を彷徨かない方が助かるがな」

 ルカの言葉にミリアが大きく首を縦に振った。



「フェンリルよ、此度も其方には歯痒い時間であったろう。許せ」

『ふん!』

「ヴァン! でも、本当にありがとう」

 ヴァンに抱きつくと珍しく嫌がられなかったので、久しぶりのもふもふを堪能したミリアだった。


「それにしてもベルフェゴールって、ルシファーの副官としての地位をアスタロトに奪われたりルシファーに裏切られたり。汚らしい排泄物を奉納されたり・・散々なのよね」

「排泄物を奉納される・・」

(だから、ちびすけはオヤジの背中に《奉納??》って書いたのか。水責めといい・・可愛い顔してエゲツない)



 聞いていた全員が何とも言えない表情を浮かべた。

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