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捜索
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七月
ーーーーーー
それから2時間経っても、アイラは見つからなかった。
「どう言う事だ? 外には出ておられない。門番に確認した。今日の午後は誰も出入りしていなかったし、裏門の鍵も閉まっていた。庭も温室も全部探した。おい、ウィルソンしっかりしろ」
ギータがウィルソンに怒鳴る。ウィルソンはソファで頭を抱え込み、俯いたまま何も言わない。
「私達もです。全部の部屋を探しました。隠れられそうな隙間とか、クローゼットも」
ソフィアが言い、リリアはそれに頷いている。
顔を上げたウィルソンが、
「1階にもおられない。厨房や貯蔵庫もどこもかしこも調べた。備品室もリネン室も」
膝の上で握り合わせたウィルソンの両手が震えている。
「地下のワインセラーも全部調べた・・地下? 地下だ」
ウィルソンが立ち上がり駆け出した。その後をギータとソフィア達が追いかけた。
リネン室の横の細い廊下を抜けて、地下に降りる階段を2段飛ばしで駆け降りて行く。
地下牢へ続くドアを開けると、澱んだ空気とカビの匂いに、薔薇の香りが薄らと混じっていた。
部屋の突き当たりにあるドアを開けて、3段しかない階段を飛び降りる。手前から一つずつ牢屋の中を覗いていく。
一番奥の牢屋に辿り着くと、隅に置かれたベッドにアイラが横たわっているのが見えた。牢屋のドアに鍵はかかっていない、ウィルソンは中に駆け込みそっと声をかけた。
「アイラ様?」
「ウィルソン?」
「大丈夫だ、生きてる。気を失ってるだけだ」
そっとアイラの体を動かすと、頭の後ろでぬるっとした感触があった。
「怪我をしてる、ソフィア手伝ってくれ。頭の後ろだ。リリアはタオルを、ギータは医者を呼んできてくれ。それと犯人はまだ屋敷の中にいるかも知れない。もう一度調べろ」
暫くして、ギータが医者を連れて戻ってきた。医者が診察している時、アイラが目を覚ました。
「お名前は分かりますか?」
「アイラ、アイラ・ランズダウン」
「これが何本か見えますか?」
「3本?」
「何があったか覚えておられますか?」
「・・階段を降りた後頭が、靴が見えて」
「もう大丈夫ですよ、ゆっくり休んでください」
「ウィルソンは? 怒ってる?」
「さて、それはなんとも」
「お尻をぶたないでねって」
アイラは眠りについた。
「頭の傷は出血が多いので驚かれますが、見た目程の傷ではないですね。脈も落ち着いておられるので、一晩様子を見ましょう。1時間ごとに声をかけて、意識がしっかりしているか確認してください」
「動かしても大丈夫でしょうか? 出来ればお部屋に」
「そっと、なるべく頭を動かさないようにしてください。1日3回の飲み薬と塗り薬を届けさせます。何か変わった事があれば、直ぐ連絡を」
リリアが付き添い、医者が帰って行った。
ウィルソンはアイラをそっと抱き上げた。
「ソフィア、ドアを押さえててくれ」
ソフィアの先導でアイラの自室まで戻ってきた。ギータは後ろからついてきたが、自室に着くと直ぐに今来た道を戻って行った。
アイラをベッドに横たわらせ、部屋の中を一通り確認した。
「ウィルソン、申し訳ありません」ソフィアが頭を下げた。
「いや、屋敷内でこんな事になるとは思ってなかった。一体どこから侵入したのか。ドアの前に護衛を立たせよう。ソフィアとリリアは、どちらかが必ずアイラ様のそばにいてくれ。暫くは俺もいる」
ウィルソンは、アイラの近くに椅子を持ってきて座ったが、組んだ両手が震えている。
「少し2人っきりにしてあげる。護衛はあたしが頼んでくるから。リリア一緒に来てちょうだい。ウィルソン、ほんとにごめん」
そう言って、ソフィアは静かにドアを閉めた。
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それから2時間経っても、アイラは見つからなかった。
「どう言う事だ? 外には出ておられない。門番に確認した。今日の午後は誰も出入りしていなかったし、裏門の鍵も閉まっていた。庭も温室も全部探した。おい、ウィルソンしっかりしろ」
ギータがウィルソンに怒鳴る。ウィルソンはソファで頭を抱え込み、俯いたまま何も言わない。
「私達もです。全部の部屋を探しました。隠れられそうな隙間とか、クローゼットも」
ソフィアが言い、リリアはそれに頷いている。
顔を上げたウィルソンが、
「1階にもおられない。厨房や貯蔵庫もどこもかしこも調べた。備品室もリネン室も」
膝の上で握り合わせたウィルソンの両手が震えている。
「地下のワインセラーも全部調べた・・地下? 地下だ」
ウィルソンが立ち上がり駆け出した。その後をギータとソフィア達が追いかけた。
リネン室の横の細い廊下を抜けて、地下に降りる階段を2段飛ばしで駆け降りて行く。
地下牢へ続くドアを開けると、澱んだ空気とカビの匂いに、薔薇の香りが薄らと混じっていた。
部屋の突き当たりにあるドアを開けて、3段しかない階段を飛び降りる。手前から一つずつ牢屋の中を覗いていく。
一番奥の牢屋に辿り着くと、隅に置かれたベッドにアイラが横たわっているのが見えた。牢屋のドアに鍵はかかっていない、ウィルソンは中に駆け込みそっと声をかけた。
「アイラ様?」
「ウィルソン?」
「大丈夫だ、生きてる。気を失ってるだけだ」
そっとアイラの体を動かすと、頭の後ろでぬるっとした感触があった。
「怪我をしてる、ソフィア手伝ってくれ。頭の後ろだ。リリアはタオルを、ギータは医者を呼んできてくれ。それと犯人はまだ屋敷の中にいるかも知れない。もう一度調べろ」
暫くして、ギータが医者を連れて戻ってきた。医者が診察している時、アイラが目を覚ました。
「お名前は分かりますか?」
「アイラ、アイラ・ランズダウン」
「これが何本か見えますか?」
「3本?」
「何があったか覚えておられますか?」
「・・階段を降りた後頭が、靴が見えて」
「もう大丈夫ですよ、ゆっくり休んでください」
「ウィルソンは? 怒ってる?」
「さて、それはなんとも」
「お尻をぶたないでねって」
アイラは眠りについた。
「頭の傷は出血が多いので驚かれますが、見た目程の傷ではないですね。脈も落ち着いておられるので、一晩様子を見ましょう。1時間ごとに声をかけて、意識がしっかりしているか確認してください」
「動かしても大丈夫でしょうか? 出来ればお部屋に」
「そっと、なるべく頭を動かさないようにしてください。1日3回の飲み薬と塗り薬を届けさせます。何か変わった事があれば、直ぐ連絡を」
リリアが付き添い、医者が帰って行った。
ウィルソンはアイラをそっと抱き上げた。
「ソフィア、ドアを押さえててくれ」
ソフィアの先導でアイラの自室まで戻ってきた。ギータは後ろからついてきたが、自室に着くと直ぐに今来た道を戻って行った。
アイラをベッドに横たわらせ、部屋の中を一通り確認した。
「ウィルソン、申し訳ありません」ソフィアが頭を下げた。
「いや、屋敷内でこんな事になるとは思ってなかった。一体どこから侵入したのか。ドアの前に護衛を立たせよう。ソフィアとリリアは、どちらかが必ずアイラ様のそばにいてくれ。暫くは俺もいる」
ウィルソンは、アイラの近くに椅子を持ってきて座ったが、組んだ両手が震えている。
「少し2人っきりにしてあげる。護衛はあたしが頼んでくるから。リリア一緒に来てちょうだい。ウィルソン、ほんとにごめん」
そう言って、ソフィアは静かにドアを閉めた。
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