【完結】真実の行方 悠々自適なマイライフを掴むまで

との

文字の大きさ
32 / 89

私室

七月

ーーーーーー

 ギータを伴い私室に戻ったウィルソンはギータにソファをすすめた。

「話したい事って?」
「まず、さっき話してた鍵の件だ。今日盗まれたんだったら侵入経路がわからん。前もって鍵を持っていたとしたら、入手方法が分からん」
 ウィルソンは部屋をうろつき、暖炉の上の置物を手に取った。
「壁をよじ登った形跡は?」
「調べた、異常なしだ」

「デイビッドが・・いやそれはないか。備品室にスペアキーがある事を知ってる誰かが手引きした?」
 ウィルソンがギータを見る。
「俺もそう思う。誰かが鍵を盗んで犯人に渡し、それを使って侵入逃走した」
「くそ、使用人の誰かが犯人と繋がってるって事か。家政婦長に聞いてくれ。スペアキーをいつ備品室に移動したのか、その事を知ってた奴は誰と誰なのか」


「もう一つわからん事がある。なぜ奴は此処に忍び込んだ? アイラ様が狙いだとしたら、俺ならアイラ様が外に出てくるのを待つ。忍び込むのは危険がでかすぎる」
 ギータの言葉に、
「確かにそうだが、実際奴はここに忍び込んで」

「ウィルソン、落ち着いて考えてみろ。俺達は大きな勘違いをしかけてるんじゃないか? 大旦那様達の事はともかく、デイビッド様がアイラ様を殺しても意味がない。遺言状に書いてない限り、デイビッド様には何も手に入らないんだ。今までの状況からして、アイラ様がデイビッド様に何かを遺すとは思えん。逆にアイラ様が生きていれば、今まで通り好き勝手出来る。その方がデイビッド様にとっては都合がいい。お前の頭の中はアイラ様で一杯になってる、冷静になってよく考えろ」

 アイラの怪我で動揺していたウィルソンは、ギータの一喝で目が覚めた。

 その通りだ。アイラ様に何かあれば、爵位も領地も全て遠戚の誰かが受け継ぐだろう。もしくは王家に返上か。そうなればデイビッドは手ぶらで放り出される。

 デイビッドがやるとしたらなんだ? 子供みたいな奴のことだ、せいぜい嫌がらせとか八つ当たり位か。だからと言ってその為だけに、態々屋敷に忍び込ませるのは、リスクが高すぎる。

 ウィルソンは手の中の置物を暖炉の上に戻し、大きく息を吐き出した。

「あの時不思議に思ったんだ。犯人はわざわざアイラ様をベッドに寝かせた。ドレスの裾が整えられていたし、両手も胸の下で組んであった」
「ウィルソン。漸く頭が働き出したようだな」
「すまないギータ、俺たちは今大旦那様の一件を調べてる。そこに今回のアイラ様の怪我で、すっかり勘違いしていた。タイミングからいって今回の犯人は、大旦那様達の事件に関わってる奴としか思えないが、狙いは多分アイラ様じゃない。・・アイラ様は運悪く犯人に遭遇しただけかも」

 ウィルソンは空になった両手を見つめながら考え続けた。

 調査報告は相変わらずで、これと言った情報は何も出て来ていない。今気になっているのは、ホットスパーの行商人とバイオレットから聞いたと言う下働きの男だ。リューベックの調査はまだはじめたばかりだし、そこに何かあるとしても、今回のこれとの関連が想像できない。

 ウィルソンが漸く口を開いた。
「それぞれ別々に考えたらどうだろう」
「どういう意味だ?」
「大旦那様の件と今回の事を、別々に考えるんだ。つまり主導権を握ってる奴が別だとしたら?」
「詳しく話してくれ」
 ギータが体を乗り出してきた。

「大旦那様の件はデイビッドが主犯で、爵位と財産狙い。誰かを使ってやらせた事は間違いない。そいつは頭のおかしい奴で、犯罪慣れしてる。デイビッドは計画を立てて準備するような頭は持っちゃいないから、計画と実行の殆どをそいつがやったんだと思う。
もしそいつが途中から、別の思惑で動き出したとしたら辻褄が合う。今回の件はそいつが勝手にやらかした。危険を冒して侵入してるくせに、時間を無駄にしてまでアイラ様をベッドに寝かせた。普通じゃ考えられない」

「つまりデイビッド様に雇われてたはずの奴が、別の目的で侵入したって事か?」

「ああ、それが1つ目の可能性。2つ目の可能性は、元々別の思惑があってデイビッドを手伝ったか。デイビッドの味方のふりをして大旦那様の事件を起こして、それをネタにデイビッドを手駒として利用する。デイビッドは小心者だから、煽てたり脅したりすれば簡単に利用できると思う」

「これからどうする?」

 ウィルソンは大きく溜息をついた。
「今まで通りだな。リューベックで奴に繋がる情報が出て来れば、先に進めるかもしれないが。デイビッドとウォルターに接触した奴を調べる、今はそれぐらいしか出来る事がない。後は、これから先のデイビッドの行動を、もっとしっかり見張るしかない。あいつが一番ボロを出しやすい」


 その後、ギータは家政婦長のメアリー・アンに話を聞きに行った。

 スペアキーを備品室に移動したのは、アイラが王立学院に入学して1年ほど経った頃だった。
 大旦那様達が王都に滞在していた時、偶々食品貯蔵庫の鍵が壊れた。当時スペアキーは執務室の金庫に入れてあり、誰も取り出す事ができなかった。仕方なく貯蔵庫の鍵を壊し事なきを得たが、それ以降スペアキーは備品室の金庫に移された。
 家政婦長の話では、料理長やメイド長他屋敷内の多くの者達が知っていた可能性があるとの事だった。
 誰が鍵を持ち出したのか、結局分からずじまいだった。
感想 10

あなたにおすすめの小説

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【完結】傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される

中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。 実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。 それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。 ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。 目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。 すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。 抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……? 傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに たっぷり愛され甘やかされるお話。 このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。 修正をしながら順次更新していきます。 また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。 もし御覧頂けた際にはご注意ください。 ※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。

〖完結〗終着駅のパッセージ 

苺 迷音
恋愛
過去、使用人に悪戯をされそうになった事がきっかけとなり、分厚い眼鏡とひっつめた髪を編み帽で覆い、自身の容姿を隠すようになった女性・カレン。 その事情を知りながらも夫ローランは、奇妙で地味な姿の妻を厭い目を逸らし続けた。 婚姻してからわずか三日後の朝。彼は赴任先の北の地へと旅立ちその後、カレンの元へと帰省してきたのは、片手で数えるほどだった。 孤独な結婚生活を送る中。 ある冬の日に、ローランの上官であり北の地を治める領主ハルシオン公爵が、カレン夫妻の邸にやってきた。 始まりは、部下の家族を想う上司としての気遣いだった。 他愛もない会話と、節度を守ったやり取り。ほんの僅かな時間を重ねていく。 そのうちに、お互いに灯り始めた小さな心の想い。 だが二人は、それを決して明かさず語ることはなかった。 それから一年ほどたった冬の夜。 カレンから届いた手紙に、たった一度だけハルシオンは返事を書く。 そこには彼の想いが書かれてあった。 月日は流れ、カレンとローランが婚姻して三年目の冬の日。 カレンはひとつの決意と想いを胸に、北へ向かう汽車に乗った。 ※微さまぁか、もしくはざまぁになっていないかもしれないです。 ※舞台は近世・産業革命初頭を基にした架空世界だと思っていただけましたら有難いです。 稚拙な作品ではありますがご覧くださいましたら凄く嬉しいです。よろしくお願い致します。

【完結】あなたのいない世界、うふふ。

やまぐちこはる
恋愛
17歳のヨヌク子爵家令嬢アニエラは栗毛に栗色の瞳の穏やかな令嬢だった。近衛騎士で伯爵家三男、かつ騎士爵を賜るトーソルド・ロイリーと幼少から婚約しており、成人とともに政略的な結婚をした。 しかしトーソルドには恋人がおり、結婚式のあと、初夜を迎える前に出たまま戻ることもなく、一人ロイリー騎士爵家を切り盛りするはめになる。 とはいえ、アニエラにはさほどの不満はない。結婚前だって殆ど会うこともなかったのだから。 =========== 感想は一件づつ個別のお返事ができなくなっておりますが、有り難く拝読しております。 4万文字ほどの作品で、最終話まで予約投稿済です。お楽しみいただけましたら幸いでございます。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

恋詠花

舘野寧依
恋愛
アイシャは大国トゥルティエールの王妹で可憐な姫君。だが兄王にただならぬ憎しみを向けられて、王宮で非常に肩身の狭い思いをしていた。 そんな折、兄王から小国ハーメイの王に嫁げと命じられたアイシャはおとなしくそれに従う。しかし、そんな彼女を待っていたのは、手つかずのお飾りの王妃という屈辱的な仕打ちだった。それは彼女の出自にも関係していて……? ──これは後の世で吟遊詩人に詠われる二人の王と一人の姫君の恋物語。

母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語 母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・? ※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています