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20.謁見前
ドアの前に着いた時、ジェイクが話しかけてきた。
「また食事に誘ってもいいかな?」
「はい」
エリンが小さな声で返事をすると、ジェイクがエリンの頬に手を添えて顔を近づけてきた。
エリンは思わず目を瞑りかけたが、離れの女性のことを思い出しジェイクを突き飛ばして部屋に逃げ込んだ。
「信じらんない、最低」
ドアにすがって、顔を覆って泣き出したエリンを見たステラが駆け寄ってきた。
「どうされました? 何があったのですか?」
首を振って何も言わないエリンを抱えてソファに座らせた。
ステラが持ってきたタオルで顔を拭き、
「シンデレラのドレスにはやっぱり魔法がかかってたのね。
12時過ぎてたの気付かなかった」
訳がわからずエリンの顔を覗き込んでいるステラに、
「着替えるから手伝ってちょうだい。
今日のお料理はいつもよりもっと豪華だったから、食べ過ぎてコルセットがキツくて」
無理矢理笑顔を浮かべるエリンに、ステラは何も言えなくなった。
次の日から謁見の日まで、エリンは自室に引き篭もった。
何度もジェイクが話があるとドアの前までやって来たが、『実験中だから』と言ってエリンは一度も顔を出さなかった。
王宮へ向かう日、空は青く澄み渡り道行く人の足取りも心なしか楽しげに見えた。
寒い冬の終わりを告げるかのように、道端に小さな花が咲いている。
エリンは馬車の窓から外を眺め、花の名前を思い出そうとしていた。
「エリン、これが終わったら話したいことがあるんだが」
渋々姿勢を戻したエリンは、膝の上に置いたバスケットを見つめている。
「そうですね、決めなくてはいけない事がありますから何時でも仰ってください」
頑なに下を向き続けるエリンの顔を下から覗き込むようにして、
「エリン、こっちを見てくれないか? この間の事を話したい」
エリンは大きく息を吸って、
「忘れましょう。誰にでもついうっかりする事はありますから。
はい、何も問題はありませんでしたから」
「私達のことについては、王宮錬金術師の件が終わってからきちんと話そうと思ってたんだが、なんだか悪い方へ向かっているようで気になっているんだ」
「今日の謁見が終わってからに致しましょう。今はそれ以外考えられないと言うか。
まずは王宮錬金術師をやっつけなくては」
ジェイクは溜息をつき、
「そうだな、一つずつ片付けていこう」
「はい」
馬車は王宮前の長い道を走っている。両側には広々とした芝が植えられ、その奥にはサンザシの樹が並んでいる。
「王宮のお庭は風景式庭園だと聞いています」
「窓の外に絵画のような理想的風景を造り上げてあるんだ。
時間があれば寄って帰ろうか。とても綺麗で一見の価値があるよ」
「そうですね。もし時間があれば」
「緊張するなと言っても無理だと思うが、私を信じて堂々としていてくれ」
「はい、ヘマをしないよう落ち着いて頑張ります」
「今回の謁見だが、公には私達の結婚の報告と言うことになっている」
「えっ? あ、あの。そうですよね、何か理由がなくてはいけませんもの。
承知しました、はい大丈夫です」
「あまり大丈夫そうには思えないが、エリンを信じてるよ」
「一つお聞きしていいですか?」
「どうぞ」
「ジェイクは何故、王宮錬金術師の件に関わろうと思われたのですか?」
「大切な人が錬金術師の印を持ってるんだ。彼女を助けたくて」
「また食事に誘ってもいいかな?」
「はい」
エリンが小さな声で返事をすると、ジェイクがエリンの頬に手を添えて顔を近づけてきた。
エリンは思わず目を瞑りかけたが、離れの女性のことを思い出しジェイクを突き飛ばして部屋に逃げ込んだ。
「信じらんない、最低」
ドアにすがって、顔を覆って泣き出したエリンを見たステラが駆け寄ってきた。
「どうされました? 何があったのですか?」
首を振って何も言わないエリンを抱えてソファに座らせた。
ステラが持ってきたタオルで顔を拭き、
「シンデレラのドレスにはやっぱり魔法がかかってたのね。
12時過ぎてたの気付かなかった」
訳がわからずエリンの顔を覗き込んでいるステラに、
「着替えるから手伝ってちょうだい。
今日のお料理はいつもよりもっと豪華だったから、食べ過ぎてコルセットがキツくて」
無理矢理笑顔を浮かべるエリンに、ステラは何も言えなくなった。
次の日から謁見の日まで、エリンは自室に引き篭もった。
何度もジェイクが話があるとドアの前までやって来たが、『実験中だから』と言ってエリンは一度も顔を出さなかった。
王宮へ向かう日、空は青く澄み渡り道行く人の足取りも心なしか楽しげに見えた。
寒い冬の終わりを告げるかのように、道端に小さな花が咲いている。
エリンは馬車の窓から外を眺め、花の名前を思い出そうとしていた。
「エリン、これが終わったら話したいことがあるんだが」
渋々姿勢を戻したエリンは、膝の上に置いたバスケットを見つめている。
「そうですね、決めなくてはいけない事がありますから何時でも仰ってください」
頑なに下を向き続けるエリンの顔を下から覗き込むようにして、
「エリン、こっちを見てくれないか? この間の事を話したい」
エリンは大きく息を吸って、
「忘れましょう。誰にでもついうっかりする事はありますから。
はい、何も問題はありませんでしたから」
「私達のことについては、王宮錬金術師の件が終わってからきちんと話そうと思ってたんだが、なんだか悪い方へ向かっているようで気になっているんだ」
「今日の謁見が終わってからに致しましょう。今はそれ以外考えられないと言うか。
まずは王宮錬金術師をやっつけなくては」
ジェイクは溜息をつき、
「そうだな、一つずつ片付けていこう」
「はい」
馬車は王宮前の長い道を走っている。両側には広々とした芝が植えられ、その奥にはサンザシの樹が並んでいる。
「王宮のお庭は風景式庭園だと聞いています」
「窓の外に絵画のような理想的風景を造り上げてあるんだ。
時間があれば寄って帰ろうか。とても綺麗で一見の価値があるよ」
「そうですね。もし時間があれば」
「緊張するなと言っても無理だと思うが、私を信じて堂々としていてくれ」
「はい、ヘマをしないよう落ち着いて頑張ります」
「今回の謁見だが、公には私達の結婚の報告と言うことになっている」
「えっ? あ、あの。そうですよね、何か理由がなくてはいけませんもの。
承知しました、はい大丈夫です」
「あまり大丈夫そうには思えないが、エリンを信じてるよ」
「一つお聞きしていいですか?」
「どうぞ」
「ジェイクは何故、王宮錬金術師の件に関わろうと思われたのですか?」
「大切な人が錬金術師の印を持ってるんだ。彼女を助けたくて」
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