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一回目 (過去)
27.興奮する枢機卿と冷ややかな神父
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「大きな身体をモジモジさせて途轍もなく気持ち悪い」
チラチラとローザリアを見るナザエル枢機卿を不気味なものでも見るような嫌そうな顔で見ていたナスタリア神父が溜息をついた。
「ローザリア様、申し訳ありませんが先程の聖布を見せて頂けませんでしょうか?」
「おっおう、無理にとは言わんがな。生涯見ることなどないと思っていた精霊王の紋章に気がはやってしまってだな」
ローザリアはテーブルの端に置いていた聖布をナザエル枢機卿に手渡した。ナザエル枢機卿は恭しげに両手で受け取った聖布にこうべを垂れてからそっと広げた。
「おおー! まさに⋯⋯本物の精霊王の紋章!! そうか、こんな色をしているのか! 文字で説明されてもわからんかったが、いやぁなんと美しい。しかも、ん? この紋章はなんだ?」
感動に耽り細い目を益々細くして聖布を凝視しているナザエル枢機卿はブツブツと何やら呟いているが何を言っているのかよく聞こえない。
「このまま放置しましょう。こうなってしまっては暫く戻ってこないと思います。
さて、この後のことなんですが⋯⋯」
残念そうな顔でナザエル枢機卿を見ていたナスタリア神父が気を取り直して話しはじめた。
「ローザリア様はトーマック公爵や監視人の騒がしさで体調が優れないので神託の儀の前に別室で休んでいただいている事になっています。万全な体調で儀式に望んで頂きたいのにアレコレと外野がうるさ⋯⋯色々な意見が飛び交いお疲れになったと言う事で納得していただきました。
教会で延々待たれては邪(魔)⋯⋯気を遣ってしまわれるでしょうからと言って強制的にお帰りいただきました。
ローザリア様が長い間体調を崩されていたことはご存じですからなんの問題もありませんでした」
本当はしつこくゴネていたがナスタリア神父がローザリアの1ヶ月間の病状と治療や経過の報告会を勧めたところ公爵夫妻が慌てて帰り支度をはじめた。神託の結果を公爵家に入れるからと監視人に同行を薦めた。
「水の精霊の加護があったと連絡を入れてありますから監視人達は王家に報告に帰っているはずです」
ウォレス達はその連絡を聞いてどう思っただろう。リリアーナも水の精霊の加護を頂いているので今頃は癇癪を起こしているのではないだろうか。しかもさっきナザエル枢機卿が見せてくれた紋章は枢機卿が興奮する程大きいらしい。
(きっとリリアーナの紋章より大きいってことだよね⋯⋯)
「恐らく王家はローザリア様を学園に編入させようとすると思いますが、今までの状況から考えると公爵家はそれに抵抗してあれこれ言って先延ばしにしようとする可能性があります」
「学園に行けるだけの勉強もマナーも知りませんし、加護のこともわかっていません。突然学園に通わされてもどうすればいいのか⋯⋯簡単な読み書きと計算はエリサが教えてくれましたが学園の教科書でさえ読めるかどうかわかりません」
「基礎知識がないまま学園に通うのは無理がありすぎるのですが、王家としては箔付けの為だけに学園に通わせようとすると思います。
対して公爵家はローザリア様がリリアーナ様より優秀だと周知されるのを嫌がるはずなのでその辺りが狙い目ではないかと考えています」
キョトンと首を傾げたローザリアはナスタリア神父の思惑が全く想像できない。ナスタリア神父は別の世界に入り込んでいるナザエル枢機卿の膝を思いっきり叩いた。
「ナザエル枢機卿、大事な話ですからちゃんと聞いてください! 別の枢機卿にお願いしても良いんですよ。ロンダール枢機卿は確か水の加護をお持ちでしたよね」
「へ? ちゃんと聞いているぞ。うん。腰抜けロンダールはダメだ。あれが役に立つのは王家のバカちんどものケツを追いかけ」
ナザエル枢機卿の頭にナスタリア神父がゲンコツを落とし手から火を出した。
「その白髪、燃やしますか? レディの前で下品な言葉は謹んで下さい。ナザエル枢機卿のせいで教会の品位がダダ下がりです」
名残惜しそうに聖布から目を離したナザエル枢機卿が居住まいを正した。
チラチラとローザリアを見るナザエル枢機卿を不気味なものでも見るような嫌そうな顔で見ていたナスタリア神父が溜息をついた。
「ローザリア様、申し訳ありませんが先程の聖布を見せて頂けませんでしょうか?」
「おっおう、無理にとは言わんがな。生涯見ることなどないと思っていた精霊王の紋章に気がはやってしまってだな」
ローザリアはテーブルの端に置いていた聖布をナザエル枢機卿に手渡した。ナザエル枢機卿は恭しげに両手で受け取った聖布にこうべを垂れてからそっと広げた。
「おおー! まさに⋯⋯本物の精霊王の紋章!! そうか、こんな色をしているのか! 文字で説明されてもわからんかったが、いやぁなんと美しい。しかも、ん? この紋章はなんだ?」
感動に耽り細い目を益々細くして聖布を凝視しているナザエル枢機卿はブツブツと何やら呟いているが何を言っているのかよく聞こえない。
「このまま放置しましょう。こうなってしまっては暫く戻ってこないと思います。
さて、この後のことなんですが⋯⋯」
残念そうな顔でナザエル枢機卿を見ていたナスタリア神父が気を取り直して話しはじめた。
「ローザリア様はトーマック公爵や監視人の騒がしさで体調が優れないので神託の儀の前に別室で休んでいただいている事になっています。万全な体調で儀式に望んで頂きたいのにアレコレと外野がうるさ⋯⋯色々な意見が飛び交いお疲れになったと言う事で納得していただきました。
教会で延々待たれては邪(魔)⋯⋯気を遣ってしまわれるでしょうからと言って強制的にお帰りいただきました。
ローザリア様が長い間体調を崩されていたことはご存じですからなんの問題もありませんでした」
本当はしつこくゴネていたがナスタリア神父がローザリアの1ヶ月間の病状と治療や経過の報告会を勧めたところ公爵夫妻が慌てて帰り支度をはじめた。神託の結果を公爵家に入れるからと監視人に同行を薦めた。
「水の精霊の加護があったと連絡を入れてありますから監視人達は王家に報告に帰っているはずです」
ウォレス達はその連絡を聞いてどう思っただろう。リリアーナも水の精霊の加護を頂いているので今頃は癇癪を起こしているのではないだろうか。しかもさっきナザエル枢機卿が見せてくれた紋章は枢機卿が興奮する程大きいらしい。
(きっとリリアーナの紋章より大きいってことだよね⋯⋯)
「恐らく王家はローザリア様を学園に編入させようとすると思いますが、今までの状況から考えると公爵家はそれに抵抗してあれこれ言って先延ばしにしようとする可能性があります」
「学園に行けるだけの勉強もマナーも知りませんし、加護のこともわかっていません。突然学園に通わされてもどうすればいいのか⋯⋯簡単な読み書きと計算はエリサが教えてくれましたが学園の教科書でさえ読めるかどうかわかりません」
「基礎知識がないまま学園に通うのは無理がありすぎるのですが、王家としては箔付けの為だけに学園に通わせようとすると思います。
対して公爵家はローザリア様がリリアーナ様より優秀だと周知されるのを嫌がるはずなのでその辺りが狙い目ではないかと考えています」
キョトンと首を傾げたローザリアはナスタリア神父の思惑が全く想像できない。ナスタリア神父は別の世界に入り込んでいるナザエル枢機卿の膝を思いっきり叩いた。
「ナザエル枢機卿、大事な話ですからちゃんと聞いてください! 別の枢機卿にお願いしても良いんですよ。ロンダール枢機卿は確か水の加護をお持ちでしたよね」
「へ? ちゃんと聞いているぞ。うん。腰抜けロンダールはダメだ。あれが役に立つのは王家のバカちんどものケツを追いかけ」
ナザエル枢機卿の頭にナスタリア神父がゲンコツを落とし手から火を出した。
「その白髪、燃やしますか? レディの前で下品な言葉は謹んで下さい。ナザエル枢機卿のせいで教会の品位がダダ下がりです」
名残惜しそうに聖布から目を離したナザエル枢機卿が居住まいを正した。
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