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一回目 (過去)
73.餌付けされるローザリア
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「ジャスパーからの差し入れです。朝食の後で小腹が減った時にどうぞと言っていました」
「いつも皆さんに気を遣わせていて申し訳ないです⋯⋯昨夜のダリオル、とても美味しかったです。ありがとうございました」
ナスタリア神父達はリリアーナに『教会の戒律は厳しい』と散々言っていた。優しい聖職者達は同じことを思いローザリア達に色々差し入れしてくれるのだろうと感謝していた。
(それか、応援してくれてるのかも。みんな優しい⋯⋯よし、もっと頑張らなくちゃ)
聖職者達がガリガリに痩せたローザリアに少しでも肉をつけようとして餌付けしていることに全く気付いていなかった。
「後で新しい本を届けます。午前中はこのまま部屋で本を呼んでいただく予定です」
「分かりました。宜しくお願いします」
朝食についていた差し入れは一口サイズに切ったメロン。皆がアレコレと山のように差し入れを持って来ていたが、ナスタリア神父が差し入れは一回一人限りの順番制に決めた。
(ありすぎても少食のローザリアには食べ切れないので、それよりも食べる回数を増やしましょう)
本を届けてくれたのはナザエル枢機卿だった。後ろから箱を抱えたニールが入ってくる。
「今日はここで仕事をさせてもらうぞ。執務室に籠っていたら退屈でつまらん」
ニールがドサリと置いた箱にはナザエル枢機卿のサインを待つ書類が沢山入っていた。
「昼飯を食い終わったら気分転換に実技でもしてみるか?」
ローザリアはワクワクとして大きく頷いた。
「是非お願いします!」
ローザリアが借りた本は初心者向けの教本ばかりだった。魔法の種類や実践方法が書かれ、それぞれの詠唱の文言や注意点などが丁寧に綴られていた。
「水と一口に言ってもいろんなことができると知って驚きました」
ローザリアがイメージしていたのはコップや桶に水を溜めることくらい。漠然と水が流れる様を想像していただけだったが細く鋭くしたり強い勢いで出したりする事で攻撃にも使える。
「霧のように出せれば目眩しにもなるぞ」
「はい、暑い時に霧のように出せば少し涼しくなりそうですし、量を加減できればお風呂がわりにも使えますね」
「頭から水をかぶるのか⋯⋯遠征中によくやるな。タオルで拭くよりスッキリする」
楽しそうに話をするナザエル枢機卿にグイグイと箱を押し付けるニール。
「分かってるって。昼飯までにコイツをやっつけて仕舞えばいいんだろ?」
ニールは護衛兼秘書のよう。無言でナザエル枢機卿の尻を叩く様は堂に入っていた。
「俺が張ってる結界も水魔法の応用だしな」
ローザリアがナザエル枢機卿の話に感心して身を乗り出して続きを聞こうとしているとナスタリア神父がやってきた。
「やはりここでしたか」
「おう、負けたからショックで立ち上がれんとこをローザリアに慰めてもらったぞ」
ナザエル枢機卿とナスタリア神父が賭けをしていたことなど知らないローザリアは首を傾げた。
(負けた?)
「では約束通り」
「うぅ、まあいいだろう。俺は先に元気をもらったからな」
「昼食の準備ができています」
ナスタリア神父にエスコートされたローザリアはナザエル枢機卿の執務室へ向かった。部屋の主人のナザエル枢機卿はニールと一緒に後をついてくる。
「ナスタリアの奴、美味しいとこばかり持っていきやがる」
あまり悔しそうではないナザエル枢機卿と得意満面のナスタリア神父。
(何があったのか⋯⋯聞きたいような聞きたくないような)
席に着き食事をはじめるとナザエル枢機卿が種明かししてくれた。
「リリアーナがいつ逃げ出すか賭けてたんだがコイツに負けた」
ナザエル枢機卿は夜の内、ナスタリア神父は翌日の午前中。
「それで俺が負けてローザリアとのデートの権利はナスタリア神父に奪われたってわけだ」
「ででで、デートォ?」
「今日ローザリア様の杖を買いに行こうと思っています。なくても問題ないのですが精霊師っぽく見せる演出です」
「ドレスやローブもな」
「そんな! あの、私はお金を全然持ってなくて、今も食事とかドレスとかいっぱいお金がかかってるのを払えないって思ってて⋯⋯いずれちゃんと働いて返そうとは思ってますが、いつになるかも分かってないんです! だから⋯⋯これ以上はもう払いきれなくなりますから、買わないで下さい。買いません!」
「駄目です。私達の楽し⋯⋯面子がありますから。有能な精霊師らしく装って頂きます」
(今、楽しみって言いかけた?)
「⋯⋯なら、古着で良いです。いえ、古着がいいです。ジェイクに教えてもらったんですが、平民は古着屋で服を買うそうですね。私もそこで」
「「「却下」」」
(無口なニールにも反対された⋯⋯)
「⋯⋯うっ、古着屋さん、行ってみたいです」
「いつも皆さんに気を遣わせていて申し訳ないです⋯⋯昨夜のダリオル、とても美味しかったです。ありがとうございました」
ナスタリア神父達はリリアーナに『教会の戒律は厳しい』と散々言っていた。優しい聖職者達は同じことを思いローザリア達に色々差し入れしてくれるのだろうと感謝していた。
(それか、応援してくれてるのかも。みんな優しい⋯⋯よし、もっと頑張らなくちゃ)
聖職者達がガリガリに痩せたローザリアに少しでも肉をつけようとして餌付けしていることに全く気付いていなかった。
「後で新しい本を届けます。午前中はこのまま部屋で本を呼んでいただく予定です」
「分かりました。宜しくお願いします」
朝食についていた差し入れは一口サイズに切ったメロン。皆がアレコレと山のように差し入れを持って来ていたが、ナスタリア神父が差し入れは一回一人限りの順番制に決めた。
(ありすぎても少食のローザリアには食べ切れないので、それよりも食べる回数を増やしましょう)
本を届けてくれたのはナザエル枢機卿だった。後ろから箱を抱えたニールが入ってくる。
「今日はここで仕事をさせてもらうぞ。執務室に籠っていたら退屈でつまらん」
ニールがドサリと置いた箱にはナザエル枢機卿のサインを待つ書類が沢山入っていた。
「昼飯を食い終わったら気分転換に実技でもしてみるか?」
ローザリアはワクワクとして大きく頷いた。
「是非お願いします!」
ローザリアが借りた本は初心者向けの教本ばかりだった。魔法の種類や実践方法が書かれ、それぞれの詠唱の文言や注意点などが丁寧に綴られていた。
「水と一口に言ってもいろんなことができると知って驚きました」
ローザリアがイメージしていたのはコップや桶に水を溜めることくらい。漠然と水が流れる様を想像していただけだったが細く鋭くしたり強い勢いで出したりする事で攻撃にも使える。
「霧のように出せれば目眩しにもなるぞ」
「はい、暑い時に霧のように出せば少し涼しくなりそうですし、量を加減できればお風呂がわりにも使えますね」
「頭から水をかぶるのか⋯⋯遠征中によくやるな。タオルで拭くよりスッキリする」
楽しそうに話をするナザエル枢機卿にグイグイと箱を押し付けるニール。
「分かってるって。昼飯までにコイツをやっつけて仕舞えばいいんだろ?」
ニールは護衛兼秘書のよう。無言でナザエル枢機卿の尻を叩く様は堂に入っていた。
「俺が張ってる結界も水魔法の応用だしな」
ローザリアがナザエル枢機卿の話に感心して身を乗り出して続きを聞こうとしているとナスタリア神父がやってきた。
「やはりここでしたか」
「おう、負けたからショックで立ち上がれんとこをローザリアに慰めてもらったぞ」
ナザエル枢機卿とナスタリア神父が賭けをしていたことなど知らないローザリアは首を傾げた。
(負けた?)
「では約束通り」
「うぅ、まあいいだろう。俺は先に元気をもらったからな」
「昼食の準備ができています」
ナスタリア神父にエスコートされたローザリアはナザエル枢機卿の執務室へ向かった。部屋の主人のナザエル枢機卿はニールと一緒に後をついてくる。
「ナスタリアの奴、美味しいとこばかり持っていきやがる」
あまり悔しそうではないナザエル枢機卿と得意満面のナスタリア神父。
(何があったのか⋯⋯聞きたいような聞きたくないような)
席に着き食事をはじめるとナザエル枢機卿が種明かししてくれた。
「リリアーナがいつ逃げ出すか賭けてたんだがコイツに負けた」
ナザエル枢機卿は夜の内、ナスタリア神父は翌日の午前中。
「それで俺が負けてローザリアとのデートの権利はナスタリア神父に奪われたってわけだ」
「ででで、デートォ?」
「今日ローザリア様の杖を買いに行こうと思っています。なくても問題ないのですが精霊師っぽく見せる演出です」
「ドレスやローブもな」
「そんな! あの、私はお金を全然持ってなくて、今も食事とかドレスとかいっぱいお金がかかってるのを払えないって思ってて⋯⋯いずれちゃんと働いて返そうとは思ってますが、いつになるかも分かってないんです! だから⋯⋯これ以上はもう払いきれなくなりますから、買わないで下さい。買いません!」
「駄目です。私達の楽し⋯⋯面子がありますから。有能な精霊師らしく装って頂きます」
(今、楽しみって言いかけた?)
「⋯⋯なら、古着で良いです。いえ、古着がいいです。ジェイクに教えてもらったんですが、平民は古着屋で服を買うそうですね。私もそこで」
「「「却下」」」
(無口なニールにも反対された⋯⋯)
「⋯⋯うっ、古着屋さん、行ってみたいです」
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