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一回目 (過去)
91.教会本部に嵌められた?
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「よくいらしてくださいました」
町の中心を抜けて教会に着くと顔色が悪く疲れ果てた様子のケルン神父が迎えてくれた。
「この町はどうなってるんだ? 誰もいねえが」
「半年ほど前から体調を崩す者が増えはじめ、2ヶ月位前から一気に増えて⋯⋯それ以来この状態です。動けるものは町外れの昔の倉庫に集まっています。それ以外の者はほとんどがここに集められていて出来る限りの治療をしてはいるのですが⋯⋯」
「報告はきていないようですが、疫病という事ですか?」
「原因は分かっていないのです。家族でも子供や年寄りからはじまり、症状も様々でお手上げ状態です。流行り病のように感染るものではないみたいだとしか。
本部には何度も連絡して治療のできる精霊師の派遣を依頼しているのですが薬草が届くばかりで」
今は安静と消化のいい食べ物、滋養強壮や消化促進の薬草をメインに症状に合わせた薬を飲ませている。
頭痛・食欲減退・嘔吐・貧血などが多く骨や関節の痛みを訴える者や歩行に支障をきたす者もいる。
「きっかけになりそうな事は思い当たりませんか?」
「それが想像がつかなくて⋯⋯」
元々水不足で体調を崩す者が多かった為、本部からは『その延長ではないか』と言われ薬草で様子を見るように言われていた。
「おおかたノールケルト子爵が金がねえって言ったんだろうよ」
「その通りです」
悔しそうなケルン神父は溜息をついた。
教会も全ての病人の治療に精霊師を送るほどの人材を抱えているわけではない。その上、精霊師の育成には多額の費用がかかりそれを全て賄えるほどの財源があるわけでもない。
精霊師の派遣の際は移動にかかる諸々の費用を含めた治療費を領主に負担してもらう必要が出てくる。
支払い能力のある貴族や裕福な平民などは問題ないが、今回のように領主が費用の負担を拒否すると精霊師を派遣する事はできない。
「ウスベルは閉山されてから寂れる一方で」
「本部に嵌められたのはムカつくが乗りかかった船だ。病人のとこに案内してくれ」
「ローザリア様はここでニールとお待ちください。原因がわからないうちは連れて行く事はできません」
疫病だった時のことを考えローザリアは連れて行きたくない。精霊がいるとは言え人間の病気の全てを治せるかどうかわからない。
「いえ、一緒に行きます」
ローザリアとナスタリア神父の睨み合いが続いたがローザリアは引かなかった。ナザエル枢機卿もローザリアにはここで待機していてほしい。
「ローザリアになんかあったらこれから何もできなくなるんだぞ。それを分かってるのか?」
「大丈夫です。流行り病だったらとっくにわかっているはずです。そうは思いませんか?」
精霊王や精霊が対処できない病なら町に入った時点で教えてくれるはずだとローザリアは確信していた。今のところ精霊達には何も言われていない。
「そう言う考え方もありましたね。では一緒に行きましょう」
病室には大勢の人が雑魚寝していた。青い顔でうんうん唸っている人もいれば静かに目を瞑っている人もいる。
「ベッドが足りないのでやむなく床に家から持ってきてもらったマットや毛布を敷いてもらっています」
病人達の間をエプロン姿の夫人が桶と手ぬぐいを持って歩き回っていた。
「あのご婦人達には看病を手伝ってもらっています。みなさん家族がここにいる方ばかりで離れているよりも何かしたいと仰って下さった方です」
【お腹の中が汚れてる】
【綺麗にしたげないと死んじゃうよ】
「ナザエル枢機卿、如何しますか?」
「ああ、いいだろう。だがこれだけの人数だとかなり時間がかかるな。重病の者からはじめられるよう準備を頼む」
治療の為に派遣されてきたのではない精霊師に任務外の治療の指示を出せるのはナザエル枢機卿のみ。ナザエル枢機卿なら許可を出すと分かっていても形式上確認する必要があった。
「ありがとうございます。直ぐに準備をします」
ケルン神父がひとりの夫人に声をかけに行った。ローザリア達は部屋を出て教会の外で待つ精霊師の元に急いだ。
「あの、お腹の中が汚れてるそうです。このままだと命に関わるって」
ローザリアの言葉にナスタリア神父達が立ち止まった。
「理由はわかりますか?」
【お水が汚いの】
【飲んじゃダメなやつ】
「水だそうです」
「水か⋯⋯まさかとは思うが廃鉱から漏出した汚染水じゃねえよな」
「廃坑になったのは随分前です。汚染水の危険はよく分かっているはずですし」
「ちょい、聞いてみるしかないな」
「では私は精霊師と話してきます」
町の中心を抜けて教会に着くと顔色が悪く疲れ果てた様子のケルン神父が迎えてくれた。
「この町はどうなってるんだ? 誰もいねえが」
「半年ほど前から体調を崩す者が増えはじめ、2ヶ月位前から一気に増えて⋯⋯それ以来この状態です。動けるものは町外れの昔の倉庫に集まっています。それ以外の者はほとんどがここに集められていて出来る限りの治療をしてはいるのですが⋯⋯」
「報告はきていないようですが、疫病という事ですか?」
「原因は分かっていないのです。家族でも子供や年寄りからはじまり、症状も様々でお手上げ状態です。流行り病のように感染るものではないみたいだとしか。
本部には何度も連絡して治療のできる精霊師の派遣を依頼しているのですが薬草が届くばかりで」
今は安静と消化のいい食べ物、滋養強壮や消化促進の薬草をメインに症状に合わせた薬を飲ませている。
頭痛・食欲減退・嘔吐・貧血などが多く骨や関節の痛みを訴える者や歩行に支障をきたす者もいる。
「きっかけになりそうな事は思い当たりませんか?」
「それが想像がつかなくて⋯⋯」
元々水不足で体調を崩す者が多かった為、本部からは『その延長ではないか』と言われ薬草で様子を見るように言われていた。
「おおかたノールケルト子爵が金がねえって言ったんだろうよ」
「その通りです」
悔しそうなケルン神父は溜息をついた。
教会も全ての病人の治療に精霊師を送るほどの人材を抱えているわけではない。その上、精霊師の育成には多額の費用がかかりそれを全て賄えるほどの財源があるわけでもない。
精霊師の派遣の際は移動にかかる諸々の費用を含めた治療費を領主に負担してもらう必要が出てくる。
支払い能力のある貴族や裕福な平民などは問題ないが、今回のように領主が費用の負担を拒否すると精霊師を派遣する事はできない。
「ウスベルは閉山されてから寂れる一方で」
「本部に嵌められたのはムカつくが乗りかかった船だ。病人のとこに案内してくれ」
「ローザリア様はここでニールとお待ちください。原因がわからないうちは連れて行く事はできません」
疫病だった時のことを考えローザリアは連れて行きたくない。精霊がいるとは言え人間の病気の全てを治せるかどうかわからない。
「いえ、一緒に行きます」
ローザリアとナスタリア神父の睨み合いが続いたがローザリアは引かなかった。ナザエル枢機卿もローザリアにはここで待機していてほしい。
「ローザリアになんかあったらこれから何もできなくなるんだぞ。それを分かってるのか?」
「大丈夫です。流行り病だったらとっくにわかっているはずです。そうは思いませんか?」
精霊王や精霊が対処できない病なら町に入った時点で教えてくれるはずだとローザリアは確信していた。今のところ精霊達には何も言われていない。
「そう言う考え方もありましたね。では一緒に行きましょう」
病室には大勢の人が雑魚寝していた。青い顔でうんうん唸っている人もいれば静かに目を瞑っている人もいる。
「ベッドが足りないのでやむなく床に家から持ってきてもらったマットや毛布を敷いてもらっています」
病人達の間をエプロン姿の夫人が桶と手ぬぐいを持って歩き回っていた。
「あのご婦人達には看病を手伝ってもらっています。みなさん家族がここにいる方ばかりで離れているよりも何かしたいと仰って下さった方です」
【お腹の中が汚れてる】
【綺麗にしたげないと死んじゃうよ】
「ナザエル枢機卿、如何しますか?」
「ああ、いいだろう。だがこれだけの人数だとかなり時間がかかるな。重病の者からはじめられるよう準備を頼む」
治療の為に派遣されてきたのではない精霊師に任務外の治療の指示を出せるのはナザエル枢機卿のみ。ナザエル枢機卿なら許可を出すと分かっていても形式上確認する必要があった。
「ありがとうございます。直ぐに準備をします」
ケルン神父がひとりの夫人に声をかけに行った。ローザリア達は部屋を出て教会の外で待つ精霊師の元に急いだ。
「あの、お腹の中が汚れてるそうです。このままだと命に関わるって」
ローザリアの言葉にナスタリア神父達が立ち止まった。
「理由はわかりますか?」
【お水が汚いの】
【飲んじゃダメなやつ】
「水だそうです」
「水か⋯⋯まさかとは思うが廃鉱から漏出した汚染水じゃねえよな」
「廃坑になったのは随分前です。汚染水の危険はよく分かっているはずですし」
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「では私は精霊師と話してきます」
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