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ループ
155.葡萄畑と酒談義
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ローザリア達は一旦宿に戻り旅支度をはじめた。ジンにバレた以上長居は危険だろう。
「あんな大量の精霊なんてあの森以来だが、何度見てもすげえ」
「迫力がありすぎてさ、見慣れることは無さそうだなぁ」
この街はきっと以前のような落ち着きを取り戻すだろう。
(この地に精霊の加護が有りますように)
【ありがとう】
精霊の声に見送られてホルステン伯爵領を後にしたローザリア達はニコシア侯爵領へと向かった。
「子供達の恨みを利用しないといけないのは、多分だけどジンが思い通りに力を発揮できるほど力がないんだと思います」
「だったら力をつける前に叩けば可能性がある」
「多分」
ニコシア侯爵領を目前にしてローザリア達は野営をしていた。
「石碑を全部修復できたらって事か?」
「⋯⋯」
「ローザリア、何を隠してるの?」
ほんの少し目を逸らしたローザリアの行動に、相変わらず勘のいいナスタリア助祭が気が付いた。
「皆さんは今後どうするか決められたんですか?」
「私はどこまでもローザリア様とご一緒します」
エリサの心強い言葉に嬉しいような心配なような複雑な心境になる。
「⋯⋯悩んでたが、ここまで来たら逃げ出す気も無くなるぜ。あんなの見せられちゃあなあ」
ナザエル神父は火山での出来事を言っているのだろう、焚き火に枝をくべながら嫌そうに呟いた。
「俺もナザエル神父と同じかな。興味も湧いたしさ」
あっけらかんと言うニール。
「僕も⋯⋯中途半端に逃げ出すのは嫌だな。それに、ローザリア一人じゃ無理だと思う。大人の力が必要だよね」
確かに、精霊王や精霊の手助けがあっても9歳のローザリアだけではやりきれないだろう。大人がいなくては火山にも登れなかっただろうし移動にも時間がかかりすぎる。
「前世でのウスベルの湖での事なんですけど⋯⋯」
ローザリアは前世で、ウスベルの湖には特別な意味があるのではないかと言う話になっていたことを説明した。
「どこかのタイミングであの湖に行かなきゃいけないんじゃないかと思ってます」
「崖を登るのか⋯⋯そりゃ余程の理由がありそうだな」
「まあ、なんとかなるでしょ。最悪ナザエル神父が背負って登れば良いんじゃないかなぁ」
「それ、賛成! おじさんの無駄にデカい筋肉の使いどころだよね」
「お前ら勝手なこと言いやがって! 帰ったら覚えてろよ。訓練2倍、いや3倍にしてやる!」
「明日早いし⋯⋯寝ようかなー」
ニコシア侯爵領に入ると延々と広がる葡萄畑が目に入った。なだらかな起伏が続きあちこちに小山があり、葡萄作りに最適な斜面に葡萄の木が植えてあった。
「ニコシア侯爵領ののシャンパンは有名ですからね。すっごい楽しみです」
「甘い貴腐ワインの方が好きだったんじゃないのか?」
「いやー、それはそれで良いんですけど⋯⋯ 中々手に入らないし、ニコシアのシャンパンの方が良いかなぁと」
ナザエル神父とニールの酒談義が長閑な風景に溶け込んでいく。
「この後は直ぐに石碑を探す?」
まだ酒の飲めないナスタリア助祭とローザリアは荷馬車の中からぼんやりと外を眺めながら相談していた。
「石碑も気になるんだけどニコシア侯爵のこともなんであんな事をしたのか気になるの」
「だよね、加護がない人なんてよくある事だし、それを全部排除してたらキリがないよね⋯⋯結構な人数だったし。何か理由ありそうだよね」
長櫃の中には5~6人くらいいたように思う。異様に加護に執着しているようで不気味に感じたローザリアはその理由を調べたいと思っていた。
「ただ埋葬するだけじゃ駄目な気がするの」
「領主の動向か⋯⋯おじさん、教会で聞くのは拙いかな?」
ナスタリア助祭が荷馬車から顔を覗かせて御者台にいるナザエル神父に声をかけた。
「うーん、俺達がここにいる理由をでっちあげられりゃ何とかなるかなぁ」
「理由理由⋯⋯ ホルステン伯爵領との不和の噂を聞いて寄ってみたとか、ニコシア のワインの品質が落ちてる気がするとか⋯⋯じゃあ弱いですか?」
「あっ、それ良いかも! おじさんは教会でも自由奔放で有名だからさ、偶々噂を聞きつけ寄ってみたって言えば?」
「俺は戒律に忠実に聖職者らしく⋯⋯」
「はいはい。で、どう?」
「⋯⋯はぁ、教会に行ってみるか。領主に聞くよりはマシかもな」
「あんな大量の精霊なんてあの森以来だが、何度見てもすげえ」
「迫力がありすぎてさ、見慣れることは無さそうだなぁ」
この街はきっと以前のような落ち着きを取り戻すだろう。
(この地に精霊の加護が有りますように)
【ありがとう】
精霊の声に見送られてホルステン伯爵領を後にしたローザリア達はニコシア侯爵領へと向かった。
「子供達の恨みを利用しないといけないのは、多分だけどジンが思い通りに力を発揮できるほど力がないんだと思います」
「だったら力をつける前に叩けば可能性がある」
「多分」
ニコシア侯爵領を目前にしてローザリア達は野営をしていた。
「石碑を全部修復できたらって事か?」
「⋯⋯」
「ローザリア、何を隠してるの?」
ほんの少し目を逸らしたローザリアの行動に、相変わらず勘のいいナスタリア助祭が気が付いた。
「皆さんは今後どうするか決められたんですか?」
「私はどこまでもローザリア様とご一緒します」
エリサの心強い言葉に嬉しいような心配なような複雑な心境になる。
「⋯⋯悩んでたが、ここまで来たら逃げ出す気も無くなるぜ。あんなの見せられちゃあなあ」
ナザエル神父は火山での出来事を言っているのだろう、焚き火に枝をくべながら嫌そうに呟いた。
「俺もナザエル神父と同じかな。興味も湧いたしさ」
あっけらかんと言うニール。
「僕も⋯⋯中途半端に逃げ出すのは嫌だな。それに、ローザリア一人じゃ無理だと思う。大人の力が必要だよね」
確かに、精霊王や精霊の手助けがあっても9歳のローザリアだけではやりきれないだろう。大人がいなくては火山にも登れなかっただろうし移動にも時間がかかりすぎる。
「前世でのウスベルの湖での事なんですけど⋯⋯」
ローザリアは前世で、ウスベルの湖には特別な意味があるのではないかと言う話になっていたことを説明した。
「どこかのタイミングであの湖に行かなきゃいけないんじゃないかと思ってます」
「崖を登るのか⋯⋯そりゃ余程の理由がありそうだな」
「まあ、なんとかなるでしょ。最悪ナザエル神父が背負って登れば良いんじゃないかなぁ」
「それ、賛成! おじさんの無駄にデカい筋肉の使いどころだよね」
「お前ら勝手なこと言いやがって! 帰ったら覚えてろよ。訓練2倍、いや3倍にしてやる!」
「明日早いし⋯⋯寝ようかなー」
ニコシア侯爵領に入ると延々と広がる葡萄畑が目に入った。なだらかな起伏が続きあちこちに小山があり、葡萄作りに最適な斜面に葡萄の木が植えてあった。
「ニコシア侯爵領ののシャンパンは有名ですからね。すっごい楽しみです」
「甘い貴腐ワインの方が好きだったんじゃないのか?」
「いやー、それはそれで良いんですけど⋯⋯ 中々手に入らないし、ニコシアのシャンパンの方が良いかなぁと」
ナザエル神父とニールの酒談義が長閑な風景に溶け込んでいく。
「この後は直ぐに石碑を探す?」
まだ酒の飲めないナスタリア助祭とローザリアは荷馬車の中からぼんやりと外を眺めながら相談していた。
「石碑も気になるんだけどニコシア侯爵のこともなんであんな事をしたのか気になるの」
「だよね、加護がない人なんてよくある事だし、それを全部排除してたらキリがないよね⋯⋯結構な人数だったし。何か理由ありそうだよね」
長櫃の中には5~6人くらいいたように思う。異様に加護に執着しているようで不気味に感じたローザリアはその理由を調べたいと思っていた。
「ただ埋葬するだけじゃ駄目な気がするの」
「領主の動向か⋯⋯おじさん、教会で聞くのは拙いかな?」
ナスタリア助祭が荷馬車から顔を覗かせて御者台にいるナザエル神父に声をかけた。
「うーん、俺達がここにいる理由をでっちあげられりゃ何とかなるかなぁ」
「理由理由⋯⋯ ホルステン伯爵領との不和の噂を聞いて寄ってみたとか、ニコシア のワインの品質が落ちてる気がするとか⋯⋯じゃあ弱いですか?」
「あっ、それ良いかも! おじさんは教会でも自由奔放で有名だからさ、偶々噂を聞きつけ寄ってみたって言えば?」
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「⋯⋯はぁ、教会に行ってみるか。領主に聞くよりはマシかもな」
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