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ループ
167.ローザリアVSグレイソン
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「違います! 何言ってんですか!?」
見た目も人当たりも良いニールは今までに何度か女性関係のトラブルを起こしていた。ニールの優しい態度を勘違いした女性が乗り込んできたり、自分こそはと本気になった女性が教会に忍び込んできたり。
実家に謎の婚約者が訪ねてきたこともあったという。
「今までは、よくある事だって気にしてなかったんですよ。でも、ほら⋯⋯ねえ」
「だよね。おじさん相手でさえもあんな事が起きるんだし⋯⋯ニールが悩む気持ちは分かるよ。笑って済ませられないくらい暴走する人が出るかもしれない」
「おい、『俺でさえも』ってなんだよ⋯⋯全く」
二重の意味でシスター・タニアを追い詰めていたんだと罪悪感に駆られていたローザリアの頭をエリサが優しく撫でてくれた。
ニールの不安はあながち間違ってはいない。ニールが適齢期になってからは女性陣の攻撃力は上がり、気を抜いていたら足を掬われそうになることも起きはじめている。
「俺、この旅が終わったらちょっと考えようかなあ。別にモテなくてもいいし、どっちかっていうと面倒だし」
ローザリアはハッとしてニールの顔を凝視してしまった。
(まさか! 昔の無言・無表情ニールが生まれるのって⋯⋯こう言う理由だったの!? でも、前世ではシスター・タニアは元気だったから違うか)
翌日のお昼過ぎにウスベルの町に入った。興味津々の視線を無視して町の中を抜け、以前町の人が集まっていた倉庫にやって来た。
山からは掘削する大きな音が鳴り響き泥まみれの男達が大声で怒鳴っていた。
「グレイソンさん!」
ローザリアが音に負けないように張り上げた声に大男が振り向いた。
「ガキの来るとこじゃねえ、さっさと帰れ! おい、もたもたすんな、日が暮れるぞ!!」
「湖の事でお話があります。時間を下さい」
「そっちじゃねえ! 何ボケてやがんだ!!」
ローザリアを無視して男達に指示を出しているグレイソンはいつまで待っても振り向かない。
「なら勝手に登りますから。行きましょう」
ペコリと頭を下げた後坂を降りはじめたローザリアにグレイソンが声をかけた。
「お前らが登れるわけねえだろうがよ。途中で動けなくなって助けに行かにゃならん俺らの身になって考えろ!」
「助けてくれって言ってませんから。もしもの時はあり得ませんので」
強気のローザリアが巨大で不機嫌なグレイソンと睨み合った。側から見ると熊に勝負を挑むハリネズミといった光景に周りの男達が吹き出した。
「おやじ、話だけでも聞いてやれよ。おやじに噛み付く勇気だけは一人前じゃねえか」
「くそ! ついてこい」
腹立たしげなグレイソンの後をついて行き、傷だらけのテーブルと椅子が置かれた小屋に入った。
「んで、湖がどうしたって?」
「調べたいことがあって湖に行きたいと思ってます。グレイソンさんが反対するのは分かっていますし、途中の道とかは分かっているので勝手にしますね」
「嬢ちゃん、お利口さんだから家で人形遊びでもしときな」
椅子にもたれて腕を組んだグレイソンは馬鹿にしたような笑いを浮かべていた。ナザエル神父達を見て、大の大人がこんなチビに付き従うなんて⋯⋯と内心嘲笑ってもいた。
「Cの形になった湖の一番奥は見えにくくて滝は2つ。この町や下流にある町の水源は手前の滝が。奥にある滝の下がどうなってるかは足場が悪過ぎて確認できていない。
滝壺の横には広場があってグレイソンさん達が登るときはここで一旦休憩をする。
広場の手前には大きな岩があって迂回しないと登れない」
「随分と詳しく調べたんだな」
「知ってるのかも⋯⋯登ったことがあるとか」
「夢でか?」
「さあ、現実かもしれませんよ。グレイソンさんに話を通したのは許可をもらうためじゃなく一緒に登りたいか聞くためです。
恐らく奥の滝を調べることになると思うので、興味があるんじゃないかと思っただけです」
話しているうちに湖の状況がローザリアの頭に浮かび、間違いなく奥の滝が問題だと確信に近い思いが湧き上がった。
「あそこは無理だ。手前の滝より水量が多くて足場にできる場所もねえ。知ってんだろ?」
「はい、滝の中を降りるしか方法がないってグレイソンが言ってましたから」
「俺がねえ⋯⋯」
ローザリアの子供とは思えない態度にグレイソンは考え込んでしまった。遊びとは思えない真剣な表情と信念を持った目つき。
「あの滝を降りる方法はあります。間違いなく降りられるし帰ってきます」
「何がしたい? あの滝に何がある?」
見た目も人当たりも良いニールは今までに何度か女性関係のトラブルを起こしていた。ニールの優しい態度を勘違いした女性が乗り込んできたり、自分こそはと本気になった女性が教会に忍び込んできたり。
実家に謎の婚約者が訪ねてきたこともあったという。
「今までは、よくある事だって気にしてなかったんですよ。でも、ほら⋯⋯ねえ」
「だよね。おじさん相手でさえもあんな事が起きるんだし⋯⋯ニールが悩む気持ちは分かるよ。笑って済ませられないくらい暴走する人が出るかもしれない」
「おい、『俺でさえも』ってなんだよ⋯⋯全く」
二重の意味でシスター・タニアを追い詰めていたんだと罪悪感に駆られていたローザリアの頭をエリサが優しく撫でてくれた。
ニールの不安はあながち間違ってはいない。ニールが適齢期になってからは女性陣の攻撃力は上がり、気を抜いていたら足を掬われそうになることも起きはじめている。
「俺、この旅が終わったらちょっと考えようかなあ。別にモテなくてもいいし、どっちかっていうと面倒だし」
ローザリアはハッとしてニールの顔を凝視してしまった。
(まさか! 昔の無言・無表情ニールが生まれるのって⋯⋯こう言う理由だったの!? でも、前世ではシスター・タニアは元気だったから違うか)
翌日のお昼過ぎにウスベルの町に入った。興味津々の視線を無視して町の中を抜け、以前町の人が集まっていた倉庫にやって来た。
山からは掘削する大きな音が鳴り響き泥まみれの男達が大声で怒鳴っていた。
「グレイソンさん!」
ローザリアが音に負けないように張り上げた声に大男が振り向いた。
「ガキの来るとこじゃねえ、さっさと帰れ! おい、もたもたすんな、日が暮れるぞ!!」
「湖の事でお話があります。時間を下さい」
「そっちじゃねえ! 何ボケてやがんだ!!」
ローザリアを無視して男達に指示を出しているグレイソンはいつまで待っても振り向かない。
「なら勝手に登りますから。行きましょう」
ペコリと頭を下げた後坂を降りはじめたローザリアにグレイソンが声をかけた。
「お前らが登れるわけねえだろうがよ。途中で動けなくなって助けに行かにゃならん俺らの身になって考えろ!」
「助けてくれって言ってませんから。もしもの時はあり得ませんので」
強気のローザリアが巨大で不機嫌なグレイソンと睨み合った。側から見ると熊に勝負を挑むハリネズミといった光景に周りの男達が吹き出した。
「おやじ、話だけでも聞いてやれよ。おやじに噛み付く勇気だけは一人前じゃねえか」
「くそ! ついてこい」
腹立たしげなグレイソンの後をついて行き、傷だらけのテーブルと椅子が置かれた小屋に入った。
「んで、湖がどうしたって?」
「調べたいことがあって湖に行きたいと思ってます。グレイソンさんが反対するのは分かっていますし、途中の道とかは分かっているので勝手にしますね」
「嬢ちゃん、お利口さんだから家で人形遊びでもしときな」
椅子にもたれて腕を組んだグレイソンは馬鹿にしたような笑いを浮かべていた。ナザエル神父達を見て、大の大人がこんなチビに付き従うなんて⋯⋯と内心嘲笑ってもいた。
「Cの形になった湖の一番奥は見えにくくて滝は2つ。この町や下流にある町の水源は手前の滝が。奥にある滝の下がどうなってるかは足場が悪過ぎて確認できていない。
滝壺の横には広場があってグレイソンさん達が登るときはここで一旦休憩をする。
広場の手前には大きな岩があって迂回しないと登れない」
「随分と詳しく調べたんだな」
「知ってるのかも⋯⋯登ったことがあるとか」
「夢でか?」
「さあ、現実かもしれませんよ。グレイソンさんに話を通したのは許可をもらうためじゃなく一緒に登りたいか聞くためです。
恐らく奥の滝を調べることになると思うので、興味があるんじゃないかと思っただけです」
話しているうちに湖の状況がローザリアの頭に浮かび、間違いなく奥の滝が問題だと確信に近い思いが湧き上がった。
「あそこは無理だ。手前の滝より水量が多くて足場にできる場所もねえ。知ってんだろ?」
「はい、滝の中を降りるしか方法がないってグレイソンが言ってましたから」
「俺がねえ⋯⋯」
ローザリアの子供とは思えない態度にグレイソンは考え込んでしまった。遊びとは思えない真剣な表情と信念を持った目つき。
「あの滝を降りる方法はあります。間違いなく降りられるし帰ってきます」
「何がしたい? あの滝に何がある?」
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