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ループ
174.枢機卿に口で勝利する助祭
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侍女頭ターニャと執事ケビンの2人は内務大臣の前に立たされただけで簡単に口を開いた。
「おっ、俺は旦那様と奥様とリリアーナ様の指示に従っただけなんです!」
「地下牢に閉じ込めたのは旦那様の指示でしたし、その後も全部言われた通りにしただけで、あたしは手を出してませ⋯⋯いえ、あの。言われた通りにしただけです。貴族様の指示に使用人が逆らうなんてできないってお分かりいただけますよね。
嫌だったんですよ、あんな酷いこと。でも、言えないじゃないですか。ローザリア様はお分かりになりますよね。
エリサだって、あたしの気持ちわかるでしょう!?」
「言い訳は不要じゃ! 貴族のルールなんぞワシら教会の者には関係がないでな」
オーガスト枢機卿の一言で青褪めて黙り込んだターニャとケビンは牢へ連行されて行った。
その後直ぐにローザリアの離籍の書類が整えられた。ローザリアとエリサの所属は教会になり後見人は得意満面のオーガスト枢機卿が立候補した。
「オーガスト枢機卿、問題が解決するまでの暫定措置だと覚えておいて下さいね。いついかなる状況であってもローザリア様の意志が最優先されます」
硬直している内務大臣の前で助祭が枢機卿に釘を刺した。
「何を言うか!? ワシはこの先も後見人としてローザリア様の成長を見守り、手となり足となって生涯を捧げると誓っておるのじゃぞ」
オーガスト枢機卿は熱弁しながらローザリアの手を掴もうとして逃げられた。
「重い⋯⋯そんなだと逃げられますよ。それは困るんじゃないですか?」
「ぐぬぬ! しかし、ワシはローザリア様のお側を離れる気はな⋯⋯」
(枢機卿を口で言い負かす助祭⋯⋯やっぱりナスタリア助祭は危険だ。間違いなく危険人物だ)
「それはまぁ、いずれゆっくり話しゃいいだろ。次の問題が待ってるぜ」
ナザエル神父の言葉に内務大臣だけでなく全員に緊張が走った。背筋を伸ばし目に力が入り剣に手をかけた者さえいた。
(やはり、ここからが本題か。その為にローザリア様の離籍が必要だったという事は公爵家の闇の魔石に関することに違いあるまい)
「ギャンター内務大臣に今日の午後にでも緊急会議を開いていただきたいんです。参加者は国王・王妃・王太子・王弟・王弟妃・各大臣・トーマック公爵家の3人でいいと思います。
そこに私達を証人として呼んでいただきたいのですが、内務大臣は中立の立場を表明してくださって構いません。証人として呼びはするけれど私達を信用した訳ではないと仰ってください」
「先ずは詳しい話をお聞かせ願えますか? それが分からなければ何ともお返事できません」
「失礼を承知で申し上げますと、内務大臣が私達を信用できないように私達も内務大臣を信用しきれているわけではありません。
だから、全てをお話しすることは出来ないのですが⋯⋯その場で闇の魔石の出どころと使用目的をはっきりさせる予定です」
「今それをお伺いする事は出来ないのですか?」
「ギャンター内務大臣が握り潰さないという確証がありませんから。代わりに一つ私の秘密をお見せします」
ローザリアは内務大臣の前で空のカップに水を出し、テーブルの上の書類を風で舞上げた。
「つっ、つまり⋯⋯ローザリア様はふたっ、2つの加護をお持ちだと?」
「他にもできます」
公爵家の騒動から不眠不休の内務大臣に回復の魔法をかけると口をぽかんと開けた間抜け顔を晒した。
「おうっ、王宮精霊師には複数の加護を持つ者はおりません。教会にはおられるという事でしょうか」
「ほっほっほ、複数の加護持ちなぞ他にはおらんわい。ワシがローザリア様の後見人となる理由をお分かりいただけたかのう」
ローザリアの離籍が完了するまで彼等が話をはじめなかった理由が漸く理解できた。離籍前に公になっていればローザリアの親権を持つトーマック公爵の思い通りにされてしまっただろう。
「錚々たるメンバーがローザリア様の護衛をしておられる訳も漸く理解できました。見習いシスターと仰っておられましたから請願も立てておられるのでしょう?」
「勿論じゃとも。王家にも公爵家にも手は出させぬ。精霊を使役するなどとほざく輩には教会の威信をかけて争う所存じゃて」
「しかし、複数の加護持ちである事と今回の公爵家の魔石の件が繋がらないのですが?」
「おっ、俺は旦那様と奥様とリリアーナ様の指示に従っただけなんです!」
「地下牢に閉じ込めたのは旦那様の指示でしたし、その後も全部言われた通りにしただけで、あたしは手を出してませ⋯⋯いえ、あの。言われた通りにしただけです。貴族様の指示に使用人が逆らうなんてできないってお分かりいただけますよね。
嫌だったんですよ、あんな酷いこと。でも、言えないじゃないですか。ローザリア様はお分かりになりますよね。
エリサだって、あたしの気持ちわかるでしょう!?」
「言い訳は不要じゃ! 貴族のルールなんぞワシら教会の者には関係がないでな」
オーガスト枢機卿の一言で青褪めて黙り込んだターニャとケビンは牢へ連行されて行った。
その後直ぐにローザリアの離籍の書類が整えられた。ローザリアとエリサの所属は教会になり後見人は得意満面のオーガスト枢機卿が立候補した。
「オーガスト枢機卿、問題が解決するまでの暫定措置だと覚えておいて下さいね。いついかなる状況であってもローザリア様の意志が最優先されます」
硬直している内務大臣の前で助祭が枢機卿に釘を刺した。
「何を言うか!? ワシはこの先も後見人としてローザリア様の成長を見守り、手となり足となって生涯を捧げると誓っておるのじゃぞ」
オーガスト枢機卿は熱弁しながらローザリアの手を掴もうとして逃げられた。
「重い⋯⋯そんなだと逃げられますよ。それは困るんじゃないですか?」
「ぐぬぬ! しかし、ワシはローザリア様のお側を離れる気はな⋯⋯」
(枢機卿を口で言い負かす助祭⋯⋯やっぱりナスタリア助祭は危険だ。間違いなく危険人物だ)
「それはまぁ、いずれゆっくり話しゃいいだろ。次の問題が待ってるぜ」
ナザエル神父の言葉に内務大臣だけでなく全員に緊張が走った。背筋を伸ばし目に力が入り剣に手をかけた者さえいた。
(やはり、ここからが本題か。その為にローザリア様の離籍が必要だったという事は公爵家の闇の魔石に関することに違いあるまい)
「ギャンター内務大臣に今日の午後にでも緊急会議を開いていただきたいんです。参加者は国王・王妃・王太子・王弟・王弟妃・各大臣・トーマック公爵家の3人でいいと思います。
そこに私達を証人として呼んでいただきたいのですが、内務大臣は中立の立場を表明してくださって構いません。証人として呼びはするけれど私達を信用した訳ではないと仰ってください」
「先ずは詳しい話をお聞かせ願えますか? それが分からなければ何ともお返事できません」
「失礼を承知で申し上げますと、内務大臣が私達を信用できないように私達も内務大臣を信用しきれているわけではありません。
だから、全てをお話しすることは出来ないのですが⋯⋯その場で闇の魔石の出どころと使用目的をはっきりさせる予定です」
「今それをお伺いする事は出来ないのですか?」
「ギャンター内務大臣が握り潰さないという確証がありませんから。代わりに一つ私の秘密をお見せします」
ローザリアは内務大臣の前で空のカップに水を出し、テーブルの上の書類を風で舞上げた。
「つっ、つまり⋯⋯ローザリア様はふたっ、2つの加護をお持ちだと?」
「他にもできます」
公爵家の騒動から不眠不休の内務大臣に回復の魔法をかけると口をぽかんと開けた間抜け顔を晒した。
「おうっ、王宮精霊師には複数の加護を持つ者はおりません。教会にはおられるという事でしょうか」
「ほっほっほ、複数の加護持ちなぞ他にはおらんわい。ワシがローザリア様の後見人となる理由をお分かりいただけたかのう」
ローザリアの離籍が完了するまで彼等が話をはじめなかった理由が漸く理解できた。離籍前に公になっていればローザリアの親権を持つトーマック公爵の思い通りにされてしまっただろう。
「錚々たるメンバーがローザリア様の護衛をしておられる訳も漸く理解できました。見習いシスターと仰っておられましたから請願も立てておられるのでしょう?」
「勿論じゃとも。王家にも公爵家にも手は出させぬ。精霊を使役するなどとほざく輩には教会の威信をかけて争う所存じゃて」
「しかし、複数の加護持ちである事と今回の公爵家の魔石の件が繋がらないのですが?」
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