幼女無双~魔王の子供に転生した少女は人間界で無双する~

ninjin

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亜人の少女フェル編

第89話 チョロい門番

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 「ルシスおねぇ~ちゃ~ん。ルシスおねぇ~ちゃ~ん」


 リプロはシュティルの森の上空を飛びながら私の名を大声で叫んでいた。しかし、私が返事をすることはない。


 「もう、人間が住む町へ行ったのかな?もっと先へ進んでみよう」


 リプロは翼をはためかせてスピードを加速する。そのスピードはマッハを超える。


 「あ!町があったよ。あそこにルシスお姉ちゃんがいるはずだよ」


 リプロは町を発見すると期待に胸を膨らませて町へ急降下した。リプロが降り立った町はパースリだ。リプロは魔族だとバレないように幻影で角を隠して、翼を体内に入れて人間の姿へ変化した。


 「門兵さん、町へ入らせてください」
 「ここは神が治める町パースリです。神の証をお持ちでしょうか」


 ローガンの支配から解放されたパースリは以前の姿へと戻っていた。


 「神の証ってどのようなものだったかな」


 リプロは門兵に問いかける。


 「神の証はこういうものだ」


 門兵は胸元にぶら下げている神の証をリプロへ見せた。


 「あ!それ知っているよ。ほらこれだよね」


 リプロは胸元から神の証を見せた。もちろんこれは幻影だ。


 「あなたは敬虔な天空神教の信者ですね。どうぞ、中へお入りください」


 門兵は扉を開いてリプロをパースリへ入れた。

 パースリは4つの地域から成り立っている。まず町の入り口付近は誰でも入ることが許されるフリーゾーン。フリーゾーンには宿屋や定期運航の馬車の繋ぎ場がある。フリーゾーンから奥へ進むとビリーバーゾーンに入る。ビリーバーゾーンに入るには神の証が必要となり天空神教の信者しか入れない。ビリーバーゾーンは天空神教の一般信者が生活をするエリアで、大小さまざまな家や商店、畑や農場などがあり信者の生活拠点となっている。ビリーバーゾーンはパースリの8割の面積を占める。そして、パースリの中心部を占めるのがアドバンスゾーンである。アドバンスゾーンの一部の区域には一般信者も入ることができる。天空神大教会はアドバンスゾーンに建てられていて信者なら誰でもお祈りを捧げることができる。しかし、アドバンスゾーンの特権区域には信者の中でも限られた上級信者と天空神教の聖職者しか入ることはできない。

 リプロは慎重だ。フリーゾーンで聞き込みをしてパースリの実態を把握してから私の捜索を開始した。


 「あの~すみません。最近、亜人の女の子がこの町へ来ませんでしたか」
 「……。坊や、亜人はこの町にいないよ」


 リプロはビリーバーゾーンで商店を開いている店員に声を掛けた。一瞬、店員の顔色は変わったが、すぐに営業スマイルに戻って亜人のことを知らないと答える。しかし、リプロはこの一瞬の違和感を見逃さない。


 「わかりました」


 リプロは深く追究せずに別の店員へ声をかける。しかし、皆同じ返答を繰り返すのである。


 「これ以上の聞き込みは無駄だよね」


 明らかに店員たちの返答はおかしかった。たしかにパースリへ入って亜人の姿は全く見ていない。でもリプロは店員たちが何かを隠しているように感じた。


 「アドバンスゾーンの特権地域へ行く必要があるよね」


 アドバンスゾーンの特権地域に入るには特級神の証が必要となる。リプロはアドバンスゾーンでも特権地域に何か秘密があると推察した。特権地域は高さ20mの壁に囲まれた場所であり、外からは特権地域の状況は把握できない。特権地域へ入るには厳重に警備された大きな金の門を通らなければならない。もちろん、金の門には屈強な岩石のような顔をした2名の門兵が大きな斧を片手に持ち仁王像のように立ちはだかっている。そんな恐ろしい門兵に守られた門へ向かって、リプロはニコニコと笑みを浮かべながら歩いて行った。


 「ここは特級神の証がなければ入れない場所だ。用のない者は立ち去れ!」


 特権地域は上位階級の信者もしくは聖職者しか入ることが許されない。門兵は特級神の証を確認しなくても顔を見ればわかるのである。


 「かっこいいお兄さんは特級神の証を持っているの?」


 リプロは無邪気な笑顔で質問する。


 「ほほう、ちょっとは見どころのあるガキだな」


 かっこいいと言われた門兵は上機嫌になる。


 「僕もあなたのようなかっこいい大人になりたいなぁ」
 「ガハハハハハ、俺のようになりたければ日ごろから鍛錬を忘れるな。俺は神技を使えるエリートだ。お前が俺に憧れるのは当然ってわけだな。ガハハハハハハハ」


 門兵はさらに上機嫌になる。


 「お兄さんはすごいんだね!」
 「もちろんだ。俺は特級神の証を与えられた選ばれし天空神教の信者だ。お前も俺のようになれよ」

 
 門兵は自慢げに特級神の証を見せつける。


 「は~い。僕もカッコいいお兄さんみたいになるよ」
 「ロック隊長、特級神の証のない信者の相手をする必要などありません」

 「ガハハハハハ、ガハハハハハ。俺たちは子供の見本になる立場の人間だ。お前は心が狭すぎるぞ」
 「申し訳ありません」


 もう1人の門兵はロックが褒められて嫉妬をしていた。


 「あ!そうだ。僕もその証を持っているよ」


 リプロは幻影で特級神の証を作り上げる。


 「そうか、そうか、お前もこちら側の人間だったのだな。さぁ!楽園へようこそ」


 ロックは笑顔でリプロの入場を許可した。


 「ロック隊長、こんなガキを私は知りません。もっと詳しく調べる必要があります」
 

 もう1人の門兵は業務を真剣に全うする。特権地域を任される門兵は、天空神軍の中でも選りすぐりの兵士だけが就ける名誉職である。たまにパースリ以外の町から来られる上位信者や聖職者もいるが、来訪者の情報は伝えられている。それを踏まえるとあきらかにリプロは怪しい存在なのである。


 「ストーン、お前は融通の利かない石頭だな。だからお前はいつまでたっても特級神の証を貰えないのだぞ。この坊やの気品ある言動に真実を見分けることのできる純真な心、正に特級神の証を授かるのにふさわしい坊やだろう」


 ロックはカッコいいと言われたことが嬉しくて有頂天になっていた。


 「……。私は反対です」
 

 ストーンは上司であるロックにこれ以上口を出すことはできない。しかし、彼の職務に対する使命感がリプロを通すなと訴える。


 「イケメンのお兄さん、お願いします。僕を通してください」


 リプロは涙目でストーンにお願いする。


 「この……わ……私がイ・ケ・メ・ン!」


 ストーンは目を丸くして驚く。


 「はい。お2人共カッコいいです」
 「ガハハハハ、ガハハハハ、ストーン、その坊やは素直でかわいいだろう」
 「たしかにそうだと思います。私の目は節穴でした。坊や、特権地域へどうぞ」


 ストーンも上機嫌になり、あっさりとリプロの入場を許可した。


 ロックとストーンはチョロいのでした。
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