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クラーケン討伐編
第104話 奪い合い
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「そうなんですか!」
ロキは大声を上げた。
「はい。数日前から港にクラーケンが居座っているので漁に出ることが禁止されました。そのため海鮮丼の販売はどこのお店も中止しております」
「とても残念です。しかし、キューカンバにはセデリシュウの濃厚葡萄酒という特産品がありますよね」
「は……い」
宿屋のおかみは歯切れの悪い返事をした。
「どうかしたのでしょうか」
「実は最近、供給と需要のバランスが悪くなりセデリシュウの濃厚葡萄酒は品薄となっています。海鮮丼と同様に販売できないお店も多いと思います」
「そうですか……」
ロキは残念そうな顔をする。
「でもお客さんはラッキーですよ」
宿屋のおかみが笑みを浮かべる。
「ラッキーとは?」
ロキはおかみに尋ねる。
「鮮度は少し落ちますが海鮮丼とセデリシュウの濃厚葡萄酒を提供することができるのです」
「ほ……ほんとうですか!」
「嘘など言いません。ちょうどお2人分の海鮮丼とセデリシュウの濃厚葡萄酒、お嬢さんにはセデリシュウの濃厚葡萄ジュースを提供できます」
「私の分もあるのです」
私は両手を上げて喜んだ。
「先に宿屋へ寄ってよかったわね」
「そうなのです」
私とロキは宿屋の食堂で海鮮丼とセデリシュウの濃厚葡萄酒と濃厚葡萄ジュースを堪能した。そこへ、廃人のような姿をしたトールとズタボロのポロンが宿屋の食堂へ入って来た。
「トール、ポロン、どうして私たちの宿屋がわかったの」
「ここに……セデリシュウの濃厚葡萄酒があるんや」
「そ……うなので……す。私たちはキューカンバ中を走り回ってセデリシュウの濃厚葡萄酒を提供している場所を探していたのです。まさか宿屋の食堂にあるとは驚きだったのです」
トールとポロンは諦めなかった。事前情報では得られなかった情報を町中を走り回って収集した。その結果ロキの止まっている宿屋にたどり着いたのである。もう2人は立っているのでさえ奇跡である。2人はいつ意識を失っても不思議ではないくらいに心労が募っていた。そんな2人を立たせているのはセデリシュウの濃厚葡萄酒を飲みたいという強い意志であった。
「この匂いは……」
トールとポロンは生気を取り戻したように生き生きとした表情になる。
「トールさん、この匂いは山盛り海鮮丼で間違いないと思います」
「なんやとぉ~。俺に食べさせろや」
「お客様申し訳ありません。もう品切れです」
「なんでやねん」
トールは絶望の絶叫を上げる。
「トールさん、よく見るのです。そのどんぶりにご飯粒がついています。このご飯粒には海鮮のうまみ成分が吸収されているはずです」
「そやな。このどんぶりにもうまみ成分が付着しているやろ」
トールとポロンはお互いに見つめ合う。そして阿吽の呼吸で私とロキのどんぶりをペロペロと舐めだした。
「トール、ポロン、何をしているのよ」
「美味しいで、めっちゃ美味しいで」
「ご満悦です。素晴らしくご満悦です」
絶望の淵に落とされたトールとポロンはどんぶりに染みついた海鮮の汁とご飯粒だけで絶頂の気持ちへと駆け上がった。
「おかみ!セデリシュウの濃厚葡萄酒を用意してくれや」
「お願いします」
「お客様申し訳ありません。そちらもちょうど品切れになったのです」
トールとポロンはロキの空きグラスを見る。
「俺のや」
「私のです」
2人はビーチフラッグを取るように一斉に走り出す。スタートは同時だった。グラスまでの距離はたった1m。これは瞬発力と腕の長さがものを言う勝負だった。
「俺の勝ちやぁ~」
腕の長さはポロンの方が長かった。しかし、瞬発力はトールの方が上だった。ロキのグラスを先に掴み取ったトールはグラスに残った香りを堪能する。
「まるで葡萄の庭園でごろ寝しているような香りやな」
「トールさん、私にも残り香を嗅がせてください」
ポロンはトールの顔にべったりとくっつけて強引にグラスの香りをかぐ。
「まるで鼻の穴に百個の葡萄を詰め込んだ濃厚な香りです」
ポロンはうっとりとした艶めかしい顔でご満悦状態だ。
「よし、最後の一滴を飲み干すで」
グラスの底には一滴だけ残っていた。
ここからトール親分と殲滅のポロンさんの熾烈な戦いが始まる……のかもしれないのです。
ロキは大声を上げた。
「はい。数日前から港にクラーケンが居座っているので漁に出ることが禁止されました。そのため海鮮丼の販売はどこのお店も中止しております」
「とても残念です。しかし、キューカンバにはセデリシュウの濃厚葡萄酒という特産品がありますよね」
「は……い」
宿屋のおかみは歯切れの悪い返事をした。
「どうかしたのでしょうか」
「実は最近、供給と需要のバランスが悪くなりセデリシュウの濃厚葡萄酒は品薄となっています。海鮮丼と同様に販売できないお店も多いと思います」
「そうですか……」
ロキは残念そうな顔をする。
「でもお客さんはラッキーですよ」
宿屋のおかみが笑みを浮かべる。
「ラッキーとは?」
ロキはおかみに尋ねる。
「鮮度は少し落ちますが海鮮丼とセデリシュウの濃厚葡萄酒を提供することができるのです」
「ほ……ほんとうですか!」
「嘘など言いません。ちょうどお2人分の海鮮丼とセデリシュウの濃厚葡萄酒、お嬢さんにはセデリシュウの濃厚葡萄ジュースを提供できます」
「私の分もあるのです」
私は両手を上げて喜んだ。
「先に宿屋へ寄ってよかったわね」
「そうなのです」
私とロキは宿屋の食堂で海鮮丼とセデリシュウの濃厚葡萄酒と濃厚葡萄ジュースを堪能した。そこへ、廃人のような姿をしたトールとズタボロのポロンが宿屋の食堂へ入って来た。
「トール、ポロン、どうして私たちの宿屋がわかったの」
「ここに……セデリシュウの濃厚葡萄酒があるんや」
「そ……うなので……す。私たちはキューカンバ中を走り回ってセデリシュウの濃厚葡萄酒を提供している場所を探していたのです。まさか宿屋の食堂にあるとは驚きだったのです」
トールとポロンは諦めなかった。事前情報では得られなかった情報を町中を走り回って収集した。その結果ロキの止まっている宿屋にたどり着いたのである。もう2人は立っているのでさえ奇跡である。2人はいつ意識を失っても不思議ではないくらいに心労が募っていた。そんな2人を立たせているのはセデリシュウの濃厚葡萄酒を飲みたいという強い意志であった。
「この匂いは……」
トールとポロンは生気を取り戻したように生き生きとした表情になる。
「トールさん、この匂いは山盛り海鮮丼で間違いないと思います」
「なんやとぉ~。俺に食べさせろや」
「お客様申し訳ありません。もう品切れです」
「なんでやねん」
トールは絶望の絶叫を上げる。
「トールさん、よく見るのです。そのどんぶりにご飯粒がついています。このご飯粒には海鮮のうまみ成分が吸収されているはずです」
「そやな。このどんぶりにもうまみ成分が付着しているやろ」
トールとポロンはお互いに見つめ合う。そして阿吽の呼吸で私とロキのどんぶりをペロペロと舐めだした。
「トール、ポロン、何をしているのよ」
「美味しいで、めっちゃ美味しいで」
「ご満悦です。素晴らしくご満悦です」
絶望の淵に落とされたトールとポロンはどんぶりに染みついた海鮮の汁とご飯粒だけで絶頂の気持ちへと駆け上がった。
「おかみ!セデリシュウの濃厚葡萄酒を用意してくれや」
「お願いします」
「お客様申し訳ありません。そちらもちょうど品切れになったのです」
トールとポロンはロキの空きグラスを見る。
「俺のや」
「私のです」
2人はビーチフラッグを取るように一斉に走り出す。スタートは同時だった。グラスまでの距離はたった1m。これは瞬発力と腕の長さがものを言う勝負だった。
「俺の勝ちやぁ~」
腕の長さはポロンの方が長かった。しかし、瞬発力はトールの方が上だった。ロキのグラスを先に掴み取ったトールはグラスに残った香りを堪能する。
「まるで葡萄の庭園でごろ寝しているような香りやな」
「トールさん、私にも残り香を嗅がせてください」
ポロンはトールの顔にべったりとくっつけて強引にグラスの香りをかぐ。
「まるで鼻の穴に百個の葡萄を詰め込んだ濃厚な香りです」
ポロンはうっとりとした艶めかしい顔でご満悦状態だ。
「よし、最後の一滴を飲み干すで」
グラスの底には一滴だけ残っていた。
ここからトール親分と殲滅のポロンさんの熾烈な戦いが始まる……のかもしれないのです。
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