乙女ゲームの主人公に転生した私は、魔王退治はもう1人の主人公にお願いして、スローライフを目論んでいたら堕落令嬢と呼ばれていました。

ninjin

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第49話 大根役者

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 私たちは5分程、ヘスリッヒが落ち着くのを静かに待っていた。


 「ブヒビ、ブヒヒヒブブ」
 「……」


 ヘスリッヒが興奮しないように何も返答しない。


 「ブヒブヒ、ブヒブヒ、やっとおとなしくなったブヒ。やっぱり聖女の香は効いていたブヒ」


 ヘスリッヒは私たちがおとなしく見守っているさまを見て、聖女の香が作用したと勘違いをする。


 「終焉の魔女様の邪魔になるローゼ、イーリス、この場に来たことを後悔させてやるブヒ」


 私たちに聖女の香が効いていると勘違いしたヘスリッヒは次第に興奮がおさまり饒舌になる。


 「お前達はワシの傀儡兵となったフラムの手によって殺す予定だったブヒ。自ら死地へ向かって来るとは飛んで火にいる夏の虫ブヒ」


 ヘスリッヒは自ら私たちが一番知りたかった情報を喋り出した。私たちはお互いに目を合わせて合図を送る。その内容は、このまま聖女の香が効いているふりをして、ヘスリッヒから得られる情報を入手しようという合図だった。


 「お前たちは聖女の香の効果で恐怖すら感じ取れないブヒ。そのうち意識も無くなり最高の気分になるブヒ。ワシが作った聖女の香、すなわち傀儡の香は自我を奪いワシの傀儡になる闇魔道具ブヒ」
 「……なんて……ひ……れつなことを……するの……かしら」


 イーリスは聖女の香に侵されているフリをする。


 「まだ意識があるブヒ。さすが最強の光もどき魔法士ブヒ。だが、ワシの作った傀儡の香は準聖女たちでも効果があると立証済みブヒ」


 若干17歳のイーリスだが、準聖女と呼ばれる光もどき魔法士としては最強と呼ばれるほどの才能の持ち主である。だからこそ、聖女ローゼのサポートキャラとして君臨している。ゲームでは実際に戦闘に参加することはないが、闇魔法に対してはローゼの次に強いキャラになるはずだ。そんな有能なイーリスを傀儡の香で支配できることの優越感でヘスリッヒの満足感が絶頂に達する。


 「ローゼ、あなたも聞いているフリをするのよ」


 私は小声でローゼに指示を出す。


 「……私もするのでしょうか」


 ローゼはあきらかに嫌な顔をする。


 「もう少しフラムのことを聞き出したいの」
 

 ヘスリッヒがフラムの居場所を知っていることは明白な事実となった。後はどこにフラムがいるのか知りたいところである。


 「な・ん・て・ことかしら。わ・た・し・も・自我が・なくなり・そう・です」


 ローゼは大根役者のように棒読みをする。見ている私は思わず声を出して笑いそうになるが必死に耐える。

 「ブヒブヒ、聖女のローゼにもワシの傀儡の香が効いているブヒ。さすがワシブヒ。ついに終焉の魔女様と同等の闇魔法具を作ったブヒィ――」


 ヘスリッヒは嬉しさのあまり両手を上げてジャンプして喜んだ。その時、ヘスリッヒの顔を隠していたフードが外れて素顔を見せる。その顔は硫酸を浴びたような異形の顔であった。皮膚は溶け、血管や目玉はむき出しになり、鼻だと思える場所には2つの空洞が存在する。そして、頭には髪はなく脳ミソがむき出しになっていた。


 「……」
 「……」


 私とローゼは思わず顔を背けたくなるが、無気力感を演じるためにぐっとこらえる。


 「あなた……は、最高の魔法具士……だわ。フラムの力を……利用しなくても……私たちは……敵わない」


 イーリスはヘスリッヒの異形の顔を見ても動じずに演技を続ける。


 「まだ、喋れるブヒ。お前達が力をつけることを終焉の魔女様は懸念しているブヒ。でも、もう安心だブヒ。このままお前達をワシの傀儡兵にしてやるブヒ」
 「最高の……闇魔法使いの……あなたには……私たちは敵わない……。傀儡兵となる……私たちに……1つだけ教えて……ほしい……の。フラムは……どこにいるの」


 イーリスは、そう述べると力が尽きたかのように地面に倒れ込む。


 「ブヒブヒブヒブ、ブヒブヒ、哀れなお前達の最後の願いを叶えてやるブヒ。フラムは地下室の傀儡毒水晶の中でスヤスヤと眠っているブヒ。お前達を倒すためシュバインに用意させたが無用だったブヒ」
 「ローゼ、フラムの居場所はわかったわ。ヘスリッヒを浄化して闇魔法因子を消滅させて」


 ゲームの設定ではヘスリッヒは終焉の魔女から闇魔法因子を与えられて闇魔法使いとなった。闇魔法を使えるようになったヘスリッヒは代償として全身に硫酸をかけられたような醜い姿になる。しかし、どうしてヘスリッヒが闇魔法使いになったのか?それには深い理由があった。


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