乙女ゲームの主人公に転生した私は、魔王退治はもう1人の主人公にお願いして、スローライフを目論んでいたら堕落令嬢と呼ばれていました。

ninjin

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第62話 バランス隊長

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 30分後、先に兄が私たちの元へ戻って来た。


 「お兄様、月華隊の方々はご無事でしょうか」
 「ローゼ嬢の光魔法のおかげで全員無事だ。まさかジャイアントベアーに出くわすとは不運でしかないだろう」


 ゲームでは試練の森を抜ける試練としてジャイアントベアーが登場するがリアルでは違うのであろう。


 「お兄様、ジャイアントベアーとはどのような魔獣なのでしょうか」


 私はゲームとの違いを確認することにした。


 「ジャイアントベアーは試練の森の主と言われる神出鬼没な大厄災魔獣だ。体長は5mほどで全身を鋼の毛で覆われているため物理攻撃は全く通用しない。そして右手の鋭い爪には猛毒が仕込まれていて、かすり傷でも負えば死に至ることもあるのだ」
 「月華隊の方々は猛毒の爪にやられたのでしょうか」

 「そうだ。ジャイアントベアーの猛毒の爪は徐々に体を蝕む恐ろしい攻撃だ。ローゼ嬢が居たことで九死に一生を得たのであろう」


 ジャイアントベアーの特徴はゲームとほとんど変わらないことがわかった。ローゼが居れば怖いものなど何もないのだが、いつでもどこでもローゼがいるとは限らない。もしも、ローゼが居ない時にジャイアントベアーと出会したら一貫の終わりかもしれない。


 「ジャイアントベアー……恐ろしい魔獣ですね」
 「そうだな。俺達も試練の森で特訓をしているが大きな足跡を見つけた時や魔獣が怯えて逃げる様を見た時はジャイアントべアーが現れる予兆だと判断して即座に退散している。月華隊ほどの優秀な部隊が逃げ遅れたのは何か理由があるのかもしれない」

 「メッサー様、私はお役に立てたのでしょうか」


 メーヴェは魔力も回復して血色の良い元気な姿に戻っていた。


 「君の敏速な救援のおかげで1人の死者も出さずに済んだのだ。ありがとう、メーヴェ」


 兄がメーヴェの頭をナデナデすると、メーヴェは子供のような無邪気な笑顔を浮かべていた。

 兄が戻って来てさらに30分が経過した頃にローゼたちが戻って来た。


 「メッサー、今回の救援誠に感謝する」


 40代前後の顎ひげを貯えたいかつい男性が頭を下げて兄にお礼を言う。


 「バランス隊長、頭を上げてください。私は当然のことをしたまでです。それに皆さんを救ったのはローゼ嬢とイーリス嬢になります」
 「2人にもとても感謝をしているが、メッサーとメーヴェに出会わなければ多くの仲間が死んでいた。本当にありがとう」


 バランス隊長は、再び頭を下げてお礼を言う。


 「わかりました。その言葉謹んでお受けいたします」


 兄もバランス隊長に頭を下げた。


 「ローゼ、あの方は誰なのかしら」


 ゲームではバランス隊長など聞いたことがない。それにゲームならこの隊を率いているのはメテオール副団長だったはず。


 「彼は王国魔法士団月華隊の隊長バランス様です。今回は20名の魔法士を率いて試練の森で修練をしていたところをジャイアントベアーに襲われたそうです」
 「メテオール副団長は居なかったの」


 今回はローゼとメテオールの運命の出会いを再現させるのが目的である。


 「もともと月華隊はメテオール副団長が率いている隊だったのですが、今回はバランス隊長がメテオール副団長の代わりに隊を率いていたそうです」
 「今日はなぜメテオール副団長ではなくバランス隊長が率いていたのかしら」


 私はゲームとは違う展開になったことの理由を知りたい。


 「魔法士さんの話では、最近メテオール副団長は姿を見せていないそうです」
 「え!」

 
 私は思わず大声を上げて驚いてしまった。


 「リーリエ、どうしたのだ」


 兄は私が急に大声をあげたので心配して側に駆け寄ってきた。


 「なんでもありません……ただ……」


 私は消えていた不安が再び蘇ってきた。


 「どうしたのだリーリエ。何か気になることがあるのなら言ってみろ」
 「ローゼから聞いたのですが、最近メテオール副団長は姿を見せていないそうです。本当にエンデデアヴェルトは制圧できたのでしょうか?」


 ドナーからエンデデアヴェルトは制圧したと聞いているが、現場検証のために未だにエンデデアヴェルトの立ち入りは禁止されている。私はそのことが気がかりであった。


 「何を言っているのだリーリエ。ドナーが嘘を言っていると言いたいのか」


 兄は少し語尾を荒げて不快感を出す。


 「そういう意味ではありません。でも、何かがおかしいのです」


 ゲームの調整力を考えるとこの場所でメテオール副団長と出会うはずである。出会えなかったということはメテオール副団長の身に何かあったと考えるのが妥当であった。
 

 
 

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