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妖精王パート25

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  食欲の3魔王は、あっという間に雑炊を食べてしまったのであった。


 「おかわりよ」

 「おかわりだぜ」

 「おかわりですわ」


 客人なのに、あつかましい3人である。

 村長の家族は、もう一つの鍋を渋々渡すのであった。


 「わーい、わーい。追加の雑炊なのよ」

 「ありがたいぜ」

 「感謝しますわ」


 食欲の3魔王は、追加の雑炊に大喜びをする。

 ロキさんは、村長の家族に深くお詫びをするが、村長の家族は、ヒュドラ、八岐大蛇を倒してくれたお礼なので、気にすることはないと言ってくれた。

 しかし、食欲の3魔王の胃袋は、これだけで満足するはずがない。


 「おかわりよ」

 「おかわりを頼むぜ」

 「おかわりをお願いするわ」


 村長の家族は、もう雑炊はできないので、困り果てている。


 「ゴツン」

 「ゴツン」

 「ゴツン」


 ロキさんが、食欲の3魔王の頭に、ゲンコツをくらわす。

 
 「いい加減にしなさい。もう十分食べたでしょ。これくらいにしときなさい」


 食欲の3魔王は、ロキさんに怒られて、シュンとするのであった。

 私は、あることに気づいた。ポロンさんの手元に、金色に輝く剣があることに。


 「ポロンお姉ちゃん、その金色の剣は、どうしたのですか?」

 「これは、虹蛇の体内で拾ったのですわ」

 「その剣は、草薙の剣では、ないのですか!」


 剣に気づいた、ミコトさんが、教えてくれた。


 「確か、あの大蛇も、そんなことを言ってたかしら」


 ポロンさんは、草薙の剣の話しを、もちろん忘れていたのであった。


 「これで、試練は達成でわ!封印したオロチに聞いても、草薙の剣のありかを、言わないから困っていたのよ」

 
 ロキさんだけは、ちゃんと、今回の試練の内容を把握していたのであった。


 「トール、オーベロン王の元へ戻るわよ」

 「えーーー!今日は、ここでゆっくりとしていこうぜ」

 「そうですわ。まだ雑炊が食べたいですわ」

 「雑炊・・・まだあるのかしら?あるのなら、食べさしてよ」


 トールさん達の意見は、もっともであった。もう時間も遅いので、村長には悪いが、今日はここに泊めてもらうが妥当だと私も思った。

 それに、お米の話しを村長に確認したいと、私は考えていたのであった。


 「ロキさん、今日はオロチ祭りです。ヒュドラの脅威もさり、虹蛇も退治されました。祭りの本番は夜なので、皆さんで、楽しんでください。雑炊の追加は難しいですが、祭りでは、いろんな出店で食事が楽しめます」


 村長が、私たちを引き止めてくれた。


 「祭りを楽しもうぜ」

 「そうですわ」

 「出店の食事?気になりますわ」

 「ロキお姉ちゃん、今日はゆっくりと、この村で過ごしましょう」

 「わかったわよ」


 ロキさんも了承して、村に滞在することになったのであった。

 トールさん達は、出店の食事を堪能して、私は、村長に、米の入手先を確認したのであった。




 次の日、私たちは、オーベロンの元へ向かった。

 ダンドーク山に着くと、そこには、金色の長い髪をした美しい女性が、立っていた。


 「サラマンダー、適当なことを言ってくれましたね」


 サラちゃんの、額から、大粒の汗が流れ落ちていく。


 「なんのことかしら。オホホホ・・」


 明らかにサラちゃんが、とぼけていることは、すぐにわかった。


 「オーベロン王のことよ。私が、オーベロン王と浮気したと、ティターニアに言ったでしょ」

 「記憶にございませんわ」


 私は覚えている。サラちゃんは確かに、そう言っていた。それなら、この女性が、水の精霊神のウンディーネなのであろう。


 「とぼけないでよ。そのせいで、昨日はずっと、ティターニアに説教をくらったのよ。私は、オーベロン王に、言い寄られていただけで、あんなクソジジイなんて、全く興味がないのよ」

 「ティターニアが、勘違いしただけよ。私が、ウンチャンのことを悪く言うと思うの」

 「だから、その呼び方は、やめて欲しいと、何度も言ったわよね」

 「ウンディーネだから、ウンチャンと呼んで、何がいけないのよ」

 「ウンチャンは、なんかイメージが良くないから、ディーチャンにしてと何度も言ったわよね」

 「ディーチャンより、ウンチャンのが可愛いと思ったのよ」

 「全然可愛くないわ」


 サラちゃんとウンディーネの話しの論点が、どんどんずれていくのであった。


 「ウンディーネ、サラマンダー、その辺にしときなさい。悪いのは、オーべロンなのよ」


 ティターニアが妖精の扉から出てきた。


 「オーベロンの今回の浮気相手は、わかったわ。リャナンシーだったのよ」


 リャナンシーとは、若くて美しい女性の姿をした妖精である。リャナンシーには、妖精の恋人、妖精の愛人と言う意味も持つのである。


 「私の思った通りだわ」


 根拠もなく、サラちゃんが自慢げに言う。


 「リャナンシーにも困ったものだわ」


 ウンディーネが愚痴りながら言う。


 「オーベロンは、罰として、当分は外出禁止にしたわ。ウンチャン、疑ってごめんね」

 「だから、その呼び方はやめてよ」


 ウンディーネは、頬を膨らませて、怒り出す。


 「ウンチャン、怒ると美容に悪いわよ」


 サラちゃんが、かぶせるように、ウンチャンと呼ぶ。


 「もう、本当にやめてよ」

 「あのーーー、話しをしているところ、悪いのですが、オーベロン王に会いたいのですが?」


 ロキさんが、話しが進まないので、話しを、遮るように、ティターニアに声をかける。


 「覚醒の件ね。それなら、試練の成果を見せてくれるかしら」


 私たちは、封印した八岐大蛇と草薙の剣を渡した。


 「完璧ね。2度と八岐大蛇が悪さをしないように、八岐大蛇は、私が管理しとくわ」

 「これで覚醒してもらえるのですか」

 「もちろんよ。今から、オーベロンのいる妖精の神殿に、行きましょう」


  私たちは、妖精の扉を通って、妖精の神殿へ向かった。しかし、サラちゃんが妖精の扉に入ろうとした時!


 『ゴツン』


 「痛いわよ。なんで私だけ、入れないのよーー」


 サラちゃんとオーベロン王の和解は、まだ成立していないのであった。
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