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ホロスコープ星国 ルシス編 パート37

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 「俺たちをどうするつもりだ!」


 ジェミニが大声で叫ぶ。


 「ネテア王の元へ連れて行きます。そして、あなた方の処遇を判断してもらいます」

 「俺たちは殺されるのか?」


 ライブラがか弱い声で言った。


 「ネテア王はそんなことはしません」

 「死にたくない・・・」

 「あなた方は今まで、国民を苦しめてきました。その罪はきちんと償うべきです。大きな力を失ったライブラさんは、弱者の気持ちが1番理解できると思います。しかし、ジェミニさんは時期に『ゾディアックサイン』の力を取り戻した時、どのような態度に出るか不安はあります」


 ジェミニは、今は能力を使えないから比較的おとなしくしているが、『神剣』の能力を取り戻した時どのように態度が変わるか不安である。


 「・・・」


 ジェミニは下を向いて何も言わない。


 「殺さないでくれ。俺はもう抵抗はしない」


 カプリコーンが涙目で訴える。


 「先ほども言いましたが、殺すことはしないと思います」

 「信じてもいいのですね」

 「はい。ネテア王はそんなことはしませんので」


 カプリコーンは安堵の笑みを浮かべる。


 「今日はあなた方を王都ジンジャーへ輸送します。暴れると困るので、小ルシスちゃんに魔法をかけてもらって、大人しくしてもらいます」

 「好きにするがいい」

 
 ジェミニは吐き捨てるように言った。


 「小ルシスちゃんお願いするわね」

 「はーーい」


 『メンタルクラッシュ』


 小ルシスの『メンタルクラッシュ』をかけられて、ジェミニから戦意は消えていった。ライブラとカプリコーンは初めから戦意は失っているので、あまり変化は感じられなかった。

 私は、一旦ディーバの屋敷に戻ることにした。



 「起きそうありませんね」


 ソールが呆れた顔で言った。


 「ポロンさんも起きる気配はありませんわ」


 マーニは落胆した表情で言った。


 「ジェミニさん達を大人しくしてきました」

 「ロキさん、小ルシスちゃん、ありがとう」

 「いえいえ」


 小ルシスちゃんはにっこりと笑う。


 「ディーバ様が数名の護衛を用意してくれるみたいなので、今から王都へ出発することするわ」

 「ソール、私もやっぱり着いて行くわ」


 マーニが笑顔で言った。


 「ありがとうマーニ。でも、『キュンキュン教団』の施設の建設はどうするの?」

 「ロキさんに任せるわ。小ルシスちゃんも手伝ってくれるみたいなので問題ないわ」

 「私が、魔法で簡単に作ってあげます。ルシスお姉ちゃんのある程度素材をもらっているので、今日中に作ることが可能だと思います」

 「それは助かるわ。小ルシスちゃんはなんでもできるのね」

 「はい。私に何でも任せてください」

 
 嬉しそうに小ルシスは言った。

 そして、ソールとマーニはジェミニ達を馬車に乗せて王都ジンジャーへ向かって行った。

 私は小ルシスちゃんと一緒に、『キュンキュン教団』の施設建設予定地に向かった。

 町の一角に大きな空き地がある。そこが『キュンキュン教団』の施設予定地である。『キュンキュン教団』は恋に悩める全ての種族の心の声を親身になって聞いてくれる施設である。そして、恋をしたい男女の憩いの場でもある。

 教祖ハデスは、『キュンキュン教団』をオリュンポス中に広める活動をしている。元神守教会の跡地を改装して、『キュンキュン教団』の施設を作っているが、ラデッシュの町には、神守教会の跡地がないために、新たに作ることになったのである。


 「ロキお姉ちゃん、どのような施設を作ればいいのですか?」

 「ピンク色の可愛いチャペルみたいな建物を作って欲しいわ。内装も白と水色とピンクを基調としたデザインでお願いするわ。そして・・・」


 私はマーニに渡された建設予定図をもとに、私なりにアレンジを付け加えて、小ルシスちゃんに説明した。


 「わかりました。少し時間がかかりますので、ロキお姉ちゃんはゆっくりと休んでいてください。5時間くらいで完成させます」

 「小ルシスちゃんばかりに押し付けるわけにはいかないわ。私にもできることがあったら言ってね」

 「はーーい。でも、私1人で問題ありません」

 「そうなのね。それなら、ここで見学をしておくわ」


 私は小ルシスに全てを任せてゆっくりするのは申し訳ないと思い、側で見守ってあげることにした。



 数時間後・・・


 「素敵だわ」


 私は小ルシスの作った新しい『キュンキュン教団』の建物を見てウットリとしている。

 ピンクを基調とした小さなチャペルのような建物は、見る者の心をキュンキュンさせること間違いなしである。中に入ると大きな広間になっていた、壁紙は空のように真っ青な青と雲のような白のストライプになっている。この広間は恋を求める男女の出会いの場所になる予定である。

 大きな広間を先には告発室が三つあり、ここで、恋に悩める男女の思いを親身になって聞いてあげるのである。敷居があるので相談者には素性がバレないように配慮されている。


 「なんて素敵な仕上がりなのでしょう」


 私は、完璧な仕上がりにとても満足している。


 「ロキお姉ちゃん!!!緊急事態です。ルシスお姉様からお知らせがあります!」



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