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ボルの人界征服編 パート17

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 「ルシスお姉様どうしましょうか?神人ごときが調子に乗った態度をとっているのは気に食わないです。いっそ私がぶち殺してあげましょうか?」


 小ルシス2号は、私に余裕で勝てるような口ぶりのボルに怒りを抱いている。


 「2号ちゃん。落ち着くのよ!『ホワイトホール』が使えるのなら、あなたを簡単に消滅することができるはずよ。万が一に備えて、おとなしく気配を殺して様子を伺うのよ」

 
 どうも、小ルシス2号は私の悪い分が出過ぎてかなりの短気でせっかちである。


 「大丈夫です。あんな小物の『ホワイトホール』で消滅するようなやわな体はしてません。私の逆エビ固めで胴体をぶち抜いてやりますわ」

 「何を無茶なことを言ってるのよ。ちゃんと私の指示に従ってください」

 「ちぇっ!ルシスお姉様のわからずや」


 小ルシス2号は悪態をつくが私の指示に渋々従うのであった。私は小ルシス2号から得た情報をすぐにロキさんに報告した。


 「ルシスちゃんどうするつもりなの」

 「問題はありません。返り討ちにしてやるつもりです」


 私は自信たっぷりに言った。


 「光魔法の究極魔法である『ホワイトホール』の対策はあるのかしら」

 「もちろんです。光魔法は神人しか使うことができないとされていますが、私はとある特訓を受けて光魔法は全て使うことができます。しかも、魔法の融合も得意としているので、やっと私の開発した融合魔法が使えると思うとワクワクしています」

 「ルシスちゃん・・・あなたは一体どんな人生を歩んできたの?光魔法ですらお伽話で聞いた伝説の魔法なのに、その究極魔法『ホワイトホール』を超える魔法を使えるなんて、信じることができないわ」


 私は何気によく使っいたライトシールドを、ロキさんたちはただのシールド魔法だと思っていた。しかし、天使様から魔石を浄化されたことにより、光魔法も使えるようになった私は、最強のシールド魔法のライトシールドを愛用していた。ライトシールドは、普通の魔法のシールド魔法と見た目が似ているので多用しても問題なかったが、他の光魔法は目立つのでできるだけ使用していなかった。

 そして、魔族である私は魔族しか使えないとされる闇魔法も使える。その闇魔法と光魔法を融合させることに私は成功している。それを私は終極魔法と名付けている。まさかこんなに早く終極魔法を使う日が来るとは思ってもいなかった。

 しかし、それはやっと手応えたのある相手が現れてということでもあった。今まで私は小指一つで倒せる相手にしか遭遇していない。神人のアトラース、オーシャンでさえ、殺さないように『ディメンション』で異空間に閉じ込めたが、もし殺しても良かったのなら、私の小指デコピンで葬ることも簡単にできたのであった。


 「ロキお姉ちゃん。安心してください。今まで私が嘘をついてことがありましたか?」


 ロキさんは全てを無の状態に戻す『ホワイトホール』の存在をお伽話で聞いたことある。悪いことをすると『ホワイトホール』によって、跡形なく無の存在になってしまうと、子供のころに読んだ御伽噺に恐怖して眠れなくなったことがあるらしい。ロキさんが、真面目で努力家なのは、そのお伽話の影響なのかもしれない。


 「そうね。ルシスちゃんがそう言うのならルシスちゃんに任せるわ。でも、本当に1人で大丈夫なの?」

 「はい。神人のボル以外にもう1人仲間がいます。しかし、その人物はクソ雑魚なのですが、転移魔法を得意としているのでロキお姉ちゃんたちを巻き込む恐れがあるます。なので、私と小ルシス2号で対応しようと思っています。ロキお姉ちゃんはサラちゃんたちと一緒に美味しいパンでも食べてのんびりしていてください」


 今回はボルと一緒にナレッジも来るだろう。なぜ魔人のナレッジが神人のボルと一緒に行動しているのかわからないが、私が魔族であることを知っている人物なので、余計なこと喋られると面倒なので、今回は私1人で対応することにした。しかし、小ルシス2号が私も一緒に戦うと言って聞かなかったので、小ルシス2号も一緒に戦うことにした。


 「わかったわ。気をつけるのよ」

 「はーーい」


 私は無邪気な笑顔で返事をした。

 

 そして、決戦を迎えた日、私は早朝から起きて小ルシス2号と一緒にボルとナレッジが転移してくるのを待っていた。


 「やっとあの生意気なボルを痛めつけることができますね」


 小ルシス2号は、準備運動をしながら悪態をつく。


 「無茶はしないでね。私の許可が出てから攻撃するのよ」

 「ルシスお姉様は心配し過ぎです。あんな小物にルシスお姉様が手を下す必要もありません」


 小ルシス2号は軽快なフットワークでシャドーボクシングをしながら悪態をつく。


 「ちゃんと言うことは聞くのよ!私の作戦通りに動くのよ」

 「フン。ルシスお姉様の意地悪!」


 小ルシス2号は頬を風船のように膨らませて拗ねている。

 少し小ルシス2号がおとなしくなったので、私は魔力を拡散させどこにボルが転移するか探っている。転移先には魔力層ができてそこから姿を現すので、事前に場所を特定することができるのである。


 1時間が経過しただろうか・・・日が登りあたり一面が日の光を浴びて空が眩しくなった時、私は異変を感じたのである。


 「1km先に魔力層ができたわ。行くわよ2号ちゃん」

 「やってやるわよ」


 勢いよく小ルシス2号は飛び出して行った。
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