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ボルの人界征服編 パート23

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 「あらポセイドンさん。何か楽しそうですね?」


 綺麗な白髪を左右に束ねてツインテールにしている美しい女性が、ポセイドンに声をかけた。


 「クラーケン・・・様。別になんでもありません」


 ポセイドンは全ての海を支配する神である。神は人族よりも背は高いが巨人族よりかは背が低いので、ポセイドンの身長は3mほどであり、筋骨隆々のボディービルダーのような体付きをしている。そして、筋肉を見せつけるようにポセイドンはいつも上半身は裸である。また、上半身の筋肉だけではなく、下半身の筋肉も競輪選手のような丸太のような太さがあり、それを自慢するようにビキニパンツだけで生活をしている少し変わった神である。


 「相変わらず寒そうな格好をしているのね」


 ポセイドンは寒さより筋肉を自慢をしたいので、どんなことがあっても服を着ることはない。


 「筋肉の厚みがすごいので寒さなど感じません」

 「そうなのね。それは頼もしいですね」

 「はい。私は裏天界一の筋肉を持つ神です」


 ポセイドンが彫刻美のように美しい筋肉の体を持っているのは、筋トレを頑張ったわけではなく生まれつきそのような体をしているのである。神は生まれながらに最強の体、最強の能力を持っているので練習・努力・訓練などはしない。


 「そうね。でも、少しは鍛えないと私には勝てないわよ」

 「私は神です。鍛えなくても最強の力を持っていますので問題はありません。あの時負けたのは私の調子が悪かっただけです」

 「そうなのね。それなら再戦しましょうか?」

 「それは出来ません。裏天界での戦いはウーラノス様の承諾が必要です」


 ポセイドンは、後退りしながら言った。あきらかにクラちゃんにビビっている様子だ。裏天界での序列では、神←天使←神獣となっているが、2人の会話からはクラちゃんの方が序列が上に感じられる。それにはある理由がある。

 それは、クラちゃんは私との修行に付き合わされたことにより、クラちゃん自身も強くなったのである。ある日、ポセイドンは頻繁に人界へ足を運ぶクラちゃんを注意をしたところ、クラちゃんにコテンパにやられて力関係が逆転していた。


 「そうね。今から私が許可をもらってくるわ」


 クラちゃんは意地悪そうにニヤつきながらポセイドンを煽るように言った。


 「待ってくださいクラーケン様。実は面白い話があるのです」


 顔面蒼白になったポセイドンが、必死になってクラちゃんが興味を持ちそうな話題をふろうとする。


 「何かしら?美味しい食べ物の話からしら!!」


 クラちゃんの青く澄んだ綺麗な瞳が輝きをました。


 「いえ・・・食べ物の話ではありませんが、人界に神人を葬った者がいるのです。クラーケン様もご存知のボルが人界人の手によって葬り去られた可能性があるのです」


 「ボル・・・あの最強の主夫のボルね!力はないけど家事スキルなら天界最強と言える神人だったわね。最近姿を見せないと思ったら人界へ行っていたのね」

 「はい。ボルは人界を征服するために『一天四神』を率いて、人界へ攻め込みましたが、ビバレッジ以外は消息不明となったのです。クラーケン様は強い相手と手合わせしたいと以前から言われていましたので、ちょうど良いかと思いました」


 クラちゃんは、私との特訓の末、神をも倒す力を手に入れた。なので、その力が鈍らないように特訓をしたいのである。


 「人界には興味はないわ。私は神を相手に特訓をしたいのよ」


 クラちゃんはすぐに察知した。神人4人を簡単に葬ることができるのは私しかいないことを。


 「ポセイドン。いつまでも神獣に偉そうな態度をとられているのだ!神は最強であり敬われる立場でないといけないはずだ。本当にクラーケンごときに負けたのか?」


 ポセイドンの側でクラちゃんとのやりとりを聞いていたへファイストスが、痺れを切らして発言した。


 「ヘファイストス。口を挟むな!巻き添いを喰らっても知らないぞ」


 怯えた表情でポセイドンはへファイストスの方を見た。

 ヘファイストスは火山の神である。火山が噴火したような赤いアフロヘアーの姿に、身長は3m50cmで体重は400kgとまるで山のような体をしている。ヘファイストスが動けば地面が揺れ地震が起きたと錯覚するのである。


 「何を怯えているのだ。俺は神獣にビビるほど弱くはないぞ。神獣など神の下僕に過ぎないはずだ。お前もその偉そうな態度を改めろ」


 今にも噴火しそうな勢いでクラちゃんに怒鳴りつけた。


 「そうね・・・以前までは神獣は神の下僕として、いいように扱われてきたわ。しかし、私はそのような扱いに意義を唱えて、神獣のあり方を改善したいのよ。だから、あなたのような神獣を見下した態度は気に入らないわ」


 クラちゃんの綺麗な青い瞳が赤く染まった。


 「ほほう・・・俺とやるのか!下僕ごときが神に反抗した報いを受けるがいい」


 ヘファイストスは両手を天に仰いで魔力を込めた。


 『ビッグ・イラプション』


 燃え上がる炎と一緒に大きな無数の噴石がクラちゃん目掛けて飛んできた。

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