最強種族のケモ耳族は実はポンコツでした!

ninjin

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ビスケットちゃん

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 少女はビスケットを食べ終えて至福の笑みを浮かべながら、味の余韻にふけっている。


 「なんて美味しい食べ物なのかしら、でも・・・これだけじゃ物足りないわ!もっともっとこの美味しい食べ物を食べさせてよぉ~」

 
 少女は大声を出して叫び出す。


 「ごめんなさい。もう、ビスケットは持っていないのです」

 「もっと、もぉ~~~~と!この甘い食べ物が食べたいのぉ~」


 少女はジタバタしてビスケットの催促をする。


 「本当に、もうないのです」

 「嘘よ!嘘よ!そんなの嘘に決まっているわ。私はもぉ~~~とこの甘い食べ物を食べたいの!」

 「本当にないのです!」

 「やだ、やだ、やだ!この甘い食べ物が食べたいの!」


 子供のように泣きじゃくる少女に私は困惑していた。


 「あ!そうだわ。町に行けばビスケットを作れるかもしれない」


 町に行ってビスケットの材料を揃えれば作れるのではないかと私は思った。


 「食べたいの!食べたいの!食べたいの!」

 「わかりました。ビスケットを用意してあげます」

 「さっきの食べ物をくれるの?」

 「はい。でも今すぐには無理です。近くの町に行って材料を揃えればビスケットを作って差し上げることができます」

 「町に行けば、さっきの美味しい食べ物が食べれるのね」

 「そうです」

 「わ~い!わ~い!甘い食べ物がたくさん食べれるぅ~」


 少女はウサギのようにピョンピョンと嬉しそうに飛び跳ねる。


 「あ!そうだわ。あなたの名前を教えてくれるかしら?」

 「名前?」

 「そうです。一緒に町まで行くのですから名前くらいは知っておきたいのです」

 「名前・・・名前・・・さっき食べた甘い食べ物の名前を教えてよ」

 「食べ物の名前?」

 「そうよ。さっき食べた甘くて美味しい食べ物の名前が知りたいの!」

 「何度も言ってますけど、あれはビスケットです」

 「ビスケット!」

 「そうです。ビスケットです」

 「それなら私は今日からビスケットよ」

 「え!ビスケットはさっき食べたお菓子の名前です」

 「私はビスケットよ。大好きな食べ物の名前を自分の名前にするのが常識なの」

 「そ・・・そうなの?」

 「そうなのよ!私はビスケット。あなたは?」


 この世界では自分の好きな食べ物の名前を自分の名前にするらしい。郷に入っては郷に従えという言葉がある。なので、私もこの世界の風習に従うことにした。


 「私はマカロンです」

 「マカロン・・・とても美味しそうな名前ね」

 「そうです。マカロンは甘くてとっても美味しいお菓子です」

 「マカロン食べたい」

 「いつか食べさせてあげます。でも、まずは近くの町に行くことが先決です」

 「マカロンちゃん、近くに町なんてないわよ。ここは魔獣が跋扈する魔樹海、そんな危険な場所に人間は近づかないのよ」

 「そ・・・そうだったのですね。私は生きてこの魔樹海から抜け出す事ができるのかしら」


 私は不安で目の前が真っ暗になる。


 「マカロンちゃん、大丈夫よ。ビスケット様に会うまでは、絶対にあなたを死なせるような事はしないわ」

 「ビスケット様に会うまでは・・・」


 ビスケットちゃんは、ビスケットを食べるために仕方なく私を守るつもりである。


 「あぁ~愛しのビスケット様、私が町に着くまでさぞかしさみしい思いをしているでしょう。お荷物など放っておいて今すぐにでも会いに行きたいわ」


 ビスケットちゃんの心の声は駄々洩れで、私の繊細な心を深く傷つける。しかし、そんなことはお構いなしにビスケットちゃんは、ビスケット様への気持ちを叫び続ける。

 
 「ビスケットちゃん、町にはどのくらいで着くの?」


 最初は丁寧な口調でビスケットちゃんに声を掛けていたが、私に対する扱いが食べ物以下である事をしったので、私は丁寧な口調で話すのを辞めた。


 「三日も歩けば着くはずよ」

 「三日もかかるの!」

 「そうよ。魔樹海を抜けるには時間がかかるの。まっ、私1人ならあっという間に町まで辿り着くことができるけどね」


 ビスケットちゃんの走る速さは、私の肉眼ではとらえられないほど速く、しかも、跳躍力も尋常でない。ビスケットちゃんがジャンプをすれば簡単に一山を越えることができる・・・らしい。


 「ごめんね。私の足が遅いばっかりに・・・」

 「マカロンちゃん気にしないで!あなたはドジでのろまで役にたたないどうしようもない人間と思いがちだけど、実際はそんなことはないわ!あなたは私とビスケット様をめぐり合わせてくれた愛のキューピットなのよ。そんな大事な人を見捨てて先に行くことなんてしないわ」


 あまりにもひどい言い方だが、私は怒りをおさえて聞き流すことにした。


 「このままだと日が暮れてしまうわね。こんなところで野宿をするなんて怖いわ」

 「大丈夫よ。近くに穴を掘って寝床にするから、マカロンちゃんも安心して眠る事ができるわ」

 「え!穴を掘るの?大変じゃない?」

 「簡単よ」
 「えい」


 ビスケットちゃんは、近くにあった岩山を軽くパンチした。すると大きな洞穴が出来上がった。


 「今日はここで寝るわよ」

 
 突如異世界に転移した私だが、心強い仲間?と出会ったことにより、快適とは言えないが、最低限の寝床を確保する事が出来て、安全に眠りに就くことが出来たのであった・・・というわけにはいかなかった!


 「だれだぁ~!俺のお腹に穴を開けたヤツわぁ~」


 頭上から大きなが声が響いた・・・
 
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